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人形怪奇  作者: 詞記ノ鬼士
第四章 闇からの手招き
61/141

008 悪夢の後には

 雪野は泣き声になりながら言葉を漏らした。

「みんな……来てくれたの?」

「当たり前でしょ」

「何? 俺たちが来ないとでも思った?」

「いや、あんなこと言ったから……友達じゃないって……」

「そうだね。あれはショックだったよ。雪野。後でそれに関しちゃ説教だからね。覚悟しておいて」

「そうよ。雪野くん。あなたには言いたい事がたくさんあるの」

「雪野くんはこんな素敵な友達を持っておいて、突っぱねるなんて、本当に臆病物で、小心者で、バカで、軟弱で役立たずの愚か者ですね」

「お兄さん、ひどい……」

 雪野はしょんぼりと落ち込む。

 すると、季流は自らが持っていた人形を持ち主である雪野に渡す。

「はい、雪野くん。人形です」

「うん……ありがとうございます、お兄さん」

 雪野が返事するその間に、季流は白い腕に向かって動き出していた。

「これが白い腕ですね。見つけましたよ。ハ!」

 季流は《破気》を放ち、すると雪野にもその衝撃がもろに伝わる。

「ちょっと、お兄さん! それはやめてお願い。俺が……俺がヤバイ……俺がヤバイ!」

 雪野は項垂れながらも必死に訴える。

 普段から季流の《破気》をくらってばかりいた雪野は人よりも《破気》によりダメージを受ける様になっていた。と、分かりきったその状態について季流は他人事の様にあっさりこう言うのだ。

「あ、そうでしたね。では雪野くんがいると《破気》は打てませんので、後は蓮くんに任せます」

「はい、季流さん。任せておいてください」

 蓮は言葉と同時に手を前に掲げるが見えていないためか、若干のずれがある。

 それを紀菜が指示を出す。

「蓮くん、少し左よ。そのままうって!」

「うん。分かった。それ、それ、それ、それ! ハ!」

 蓮は連発して、白い腕に攻撃を加えた。

 すると白い腕はその後、絵の方に戻っていく様に消えていった。

 その場は静まり返り、季流たちはその絵に注目した。

「これで終わったのでしょうか……雪野くん、腕を見せてくれますか?」

 雪野は季流に見えるように手を高くあげて見せた。

「ふむ、痣は消えていますね」

 花月はそこでやっと、バリアを解き雪野を離した。

「これで、雪野さんの死は回避されたんでしょうか?」

「はい。おそらく」

 雪野はそこで花月から出た言葉に反応する。

「え、それはどういう事ですが? 死を回避って……」

「雪野さんは、あと少しで死んでしまうはずだったんですよ」

「え……」

「でも助かりました。助かってよかったです。雪野さん」

 花月はそう言って、いつもの能面のような整った顔が満面の笑みでくしゃくしゃになる。

 彼女は泣きだしていた。

 自分が死ぬと思って、それで花月は必死だったのかと雪野は理解する。

 雪野は確かに、夢の中で殺されかけていた。

 その時、自分は叫んでいた。

殺せるものなら殺してくれ、と。

 それを思い出すように雪野は、無意識に呟いた。

「そうか。また死ねなかったんだ、俺……」

 その言葉から、周りの雰囲気がどよむ。

「あ……」

 言わない方がいい言葉を言ってしまったと、後悔した時には遅かった。

「この死にたがりが!」

 季流は雪野を叩いた。

「うぐっ!」

 その後にも続く。手が振り下ろされる。

「違う! お兄さん! 今のはちょっと口が滑った、だ……け……」

 雪野の言葉の途中でも何度も季流の手は雪野へと向かう。

「あなたまだ分かっていないんですか?」

右頬にあたる衝撃。

「あなたは皆に愛されているんですよ」

 左頬に伝う鈍痛。

「それなのにあなたはほんとにバカです!」

 そしてまた右頬に来る痛み。

「そんなんだと、そんなあなたを見て周りが辛いんですよ。今回だって花月や皆に迷惑かけて!」

 そして、また左、右、左、右と連打されていく。

「それを自覚なさい!」

 最後の一発は強烈だった。

「いったぁあああ‼」

 バシーンと大きな音が鳴り響く。

 自分のこんな姿を見て周りが辛い、そんな事もう何度も言われ慣れていた。

 しかし、自分でもどうする事もできなかった。悪夢がそうさせてくれない。

 足掻けば足掻く程に、自分の心は蝕まれてしまう、そんな気がしてならない。

「自分はこれでも自覚はしているんですよ……でも……」

「でも、なんです?」

「自分でも、止められないんです。これからも今日のようにお兄さんや花月、蓮や紀菜ちゃんにもっと酷いこと言ってしまう気がするんです。俺はそういうのがもう嫌で、嫌われるんじゃないかとか、また不安になってもうわけ分からなくなるんですよ。どうしたらいいですかね? こんな俺じゃだめじゃないですか……」

 雪野は震えるようにしてそう言った。

「大丈夫です、雪野さん。みんなをしっかり見てください」

 雪野は花月に言われるがまま、前を見た。

 そこには、笑いかける花月、怒ったような顔をみせる季流、困ったような顔を見せる蓮、うんざりしたような顔で雪野を見る紀菜がいた。

「なんだよ……みんな……」

それぞれ違う顔で、だが雪野を責める表情には決して見えなかった。

嫌う顔にも見えなかった。

その時、蓮が口にした。

「それでもいいんだよ。雪野。雪野がまた何度も何度も今日の出来事みたいにバカになっても、バカで、バカで仕方なくても、俺たちはそれでもかまわない」

「そうよ。いくらバカでも許してあげるわ。それにあなた元々バカじゃないの? バカが真剣に悩んでるんじゃないわよ」

「バカって……」

 聞いていてそれは辛くなる。いろんな意味で辛くなる。

 でも彼らの訴えてくる言葉はとても懐かしくて自分を元気にさせる様な力があった。

「君が何度も自分や周りのいう事を否定しても、俺たちは肯定してやる」

「あなたが私たちの事を友達じゃないっていうんだったら、何度でも気恥ずかしいけど仲間だって言ってあげるわ。だってバカなんだからそう言わないと分かんないんでしょ」

「雪野、俺たちはどんな君も受け入れるよ。例え、人形という驚異が近くにあっても恐れない。たとえ恐れたとしても雪野の悲しむ結果にはさせない。雪野は俺たちが守ってやる。だから、雪野にこれからも友達として関わらせてほしい」

 そう言って、蓮は雪野に手を伸ばした。

 それは、雪野の意思を示す道しるべだ。

 その手を握った瞬間、雪野は蓮たちを受け入れた事になる。

「お前ら……」

雪野はそっと、手を伸ばした。

ためらいがちになるも、その手は蓮の腕によって強制的につかまれた。

一気に雪野は起き上がらせられる。

「立ち上がって、雪野! そして俺たちは、またこれからも友達なるんだ」

 雪野は泣いた。泣きながら、笑った。

「ああ、そうだな。ありがとう、蓮。紀菜ちゃん。本当に迷惑かけた」

 彼は二人を見てそう言葉を漏らした。

「これで一件落着ですね。お兄さま」

「そうですね、花月。後は……」

 季流は白い女性が書かれた絵を見る。

「絵など、形ある物には魂がやどり事もありますが結局、さっきの白い腕は何がしたかったんでしょうね?」

 季流の言葉に雪野は思い出すように答えた。

「あ、お兄さん、俺夢を見ていたんです。みんなが俺を恨んでいたり、いらなかったり、嫌われていたりして殺されそうになっていました。すんでのところで花月に起こされて無事だったけど、あのままだとどうなっていた事やら」

「ああ、それなら、死んでいたでしょね。夢で」

「えっ……本当ですか、それ……?」

「はい。旅館の人の話によりとその様です。白い腕に触られた者は半日以内に夢の中で自分の死を見せられるらしいんです」

 それを聞いた瞬間、雪野たちは顔を見合わせた。

「あれ……本当に死ぬんじゃなかったの? なあ、花月……」

「私はお兄さまから、確かに雪野さんが死ぬと聞いていたんですが……」

 花月は季流の方に顔を向ける。

 そして蓮も紀菜も顔を見合わせた後、季流の方を向く。

すると季流は、その後こんな発言をした。

「私は最初から雪野くんが本当に死ぬなんて一言も言っていませんよ」

 花月たちは過去の季流が言った言葉を思い出してみた。

 ――このままだと雪野くんは、一度死にます。

「確かに、言っていない気がするね」

「それにしたって、もっと言い方があったでしょう」

「一度死にますって言っていたじゃないですか、お兄さま」

 雪野は蓮たち様子を見て、大体は理解した。

 そして、季流に向かって言う。

「お兄さん、また大事な所いい忘れていたんでしょ、その言い方だと勘違いしますって!」

「あはは、そうですか? それはすみませんね」

「つまり、白い腕の呪いは〈死〉ではなく、〈死を見せる〉だったって事ですね。季流さん」

「はい。そういう事です」

「ほんと、しっかりしてよね。私たちがどれほど焦った事だか……」

 雪野はまじまじと紀菜ちゃんを見る。

「なによ。雪野くん」

「いや、心配してくれたんだなぁて思って……」

「はあ? 当たり前でしょ!」

「当たり前だろ!」

 紀菜と蓮はほぼ同時にそう言った。

 そして蓮は、雪野の季流に叩かれて腫れた頬をつねる。

「いたたたたたた、やめろーい!」

 雪野が蓮の腕を払いのけた後、花月はこんなことを言ってくる。

「あはは、皆さんは本当に仲良しですね」

「だから、どこを見たらそう思うの?」

 雪野は花月にそう返した。

 いつもの調子が出てきた雪野は内心ほっとする事ができた。

 と、その時だった。

「あの、悪霊を退治しに来てくださった夏川様一行でございますか?」

 そう話しかけてきたのは旅館の係りの者で、彼女は困惑した面持ちで季流を見ている。

「はい、そうですが、どうかされましたか?」

 雪野たちは、また白い腕が出たのかと一瞬警戒をした。

 しかし……

「あのお部屋の方でお連れのお子様が、あなた方がいないと泣いております。子供を一人きりにさせるのはどうかと思いますよ。今すぐ戻ってあげてください」

 そんな事を言われてしまった。

「はい……分かりました」

「それでは私は失礼します」

 季流はそう答えた後、旅館の係りの者はそう言って去っていった。

 それを見送ってから季流は言葉を漏らした。

「みんな、春夢を忘れていましたね。それでは急いで春夢の元に戻りましょうか……」

「そうしましょう」

 その後、春夢の元へ向かった雪野たちは泣いている春夢の姿を捉え、彼女は雪野たちが現れると花月の元へと駆け寄った。そして泣きながらこう訴えてくる。

「お兄ちゃん達、春夢を置いてどこに行っていたの? せっかく食べ終えて、それ伝えようと隣の部屋によったのに……誰もいないし、春夢一人になっておいてかれたと思ったよ!」

「季流季流、春夢が泣き止まないニャ!」

「どうすればいいんですかニャン。助けてくださいニャン!」

 春夢についていた今も変化中の二匹の困った様子を見て、季流は彼女に向かって伝えた。

「そんな事ないですよ、春夢。すみません、ちょっとの間また【変物】が出たので、祓いにいっていたんですよ」

「そうなの?」

「そうですよ、春夢ちゃん。ほら泣かないでください。きれいな顔が台無しですよ。ほら笑ってください」

 花月は春夢の目線に合わせてしゃがみ、彼女の涙をふいてあげた。

「うん、花月お姉ちゃん。ありがとう」

 雪野はその様子を見て、春夢に言葉をかけた。

「春夢、全部俺のせいなんだ。すまん……」

「雪野お兄ちゃんのせいなの? なんで?」

「えっと……」

 それは答えられなかった。何から説明したらいいんだろうと考えて、自分が原因で皆に迷惑をかけてしまった事を全部を話さないといけなくなるので雪野はやめた。

 自分が泣きはらした事実、人生の汚点を春夢にまで知られたくはなかった。

「何はともかく俺のせいだから……これだけは聞かないで。お願い、春夢!」

 雪野は手を前に合わせてお願いする。

 それを見て、春夢は……

「うん、分かったよ。お兄ちゃん。これ以上は聞かないでおくよ」

「ありがとう春夢! 本当に一人にさせて、ごめんな」

「うん。春夢、雪野お兄ちゃんを許してあげるよ」

「よかったですね。雪野くん。妹に自分の失態を話さずにすんで」

「お兄さんは余計な事を言わないでください!」

 雪野は言葉の後、視線を奥にある長机に向けた。

「というか、なんか先に夕飯、みんな終えてる感じですか? これ!」

「はい。雪野くんはぐっすり眠っていたものですから、起こすのも悪いと思いそのままにしておきました」

「お兄さん、夢の事知っていたんですよね。それで俺そのまま眠らせておいて夢の中で死んじゃったらどうするんですか」

「確証はなかったんですよ。まさか、意識を強制的になくさせるものだとは思いませんでした。あの部屋では結界石が置かれているため雪野くんに何も起こらないと思ってもいましたし、それに正直、夢で死ぬくらい人形の呪いで悪夢を見慣れている雪野くんなら大丈夫と高をくくっていましたよ、アハハ」

「笑い事じゃないですよ、お兄さん、俺にとって悪夢は地獄のようなのもなんですよ。本当に切実に無くなってほしい……」

 すると春夢が反応する。

「ん? 悪夢? 地獄?」

「あー、春夢何でもないぞー」

 雪野は慌てて、春夢にそう言ってごまかす。

「とにかく、今回の事はお兄さんのせいだから! お兄さんが全部悪いんですからね!」

 雪野がそう言った瞬間、季流は笑みを浮かべてとんでもない事を言いふらす。

「そうですね。雪野くんが悪夢を見たことも。そのせいでみんなの前で泣いた事も全て私のせいですね。本当にすみません、雪野くん」

「ちょっと、お兄さん、なに言って……」

 焦る雪野の言葉をさえぎって春夢は言った。

「え、雪野お兄ちゃん泣いていたの?」

「そうなんです。一人は嫌だって泣いていたんですよ。雪野くんはー」

「あわわわわわ!」

「そうなの? 雪野お兄ちゃん?」

「えっと、その……間違ってはいない……」

沈み込む雪野を見て春夢は彼に近づいてきた。そして……

「私と同じだね、お兄ちゃん。よしよし」

 彼の手を掴んで、なでなでする。

 本当は頭をなでたかったのだと思うが、背が小さい春夢はそれができなかったのだろう。

 こんな小さい妹に慰められる兄の図、そんな状況にされ、恥ずかしく虚しくなる雪野。

 そこで彼はじろっと季流を睨み、叫んだ!

「ちょっと……季流お兄さんのバカ!」

 すると季流は真顔でこう言ってくる。

「私はバカじゃないですよ。バカなのは何でも一人で抱え込もうとする、バカ雪野くんの方でしょ。なに言っているんですか? バカですか?」

「お兄さん……」

 さっきバカって言った事、根に持っているのか……バカって言い過ぎ!

 雪野は季流の子供じみた態度に呆れ、なんかイラついた。

「雪野お兄ちゃん、一人でも怖くないよ。だって、みんなが傍にいるからね。一人じゃないよ。ポッカポカだよ」

春夢が手をぎゅっと握り、伝えてくる。

「春夢……」

「ん?」

「ありがとう」

 雪野はそっと春夢の頭を撫でると彼女はにこっと笑ってくれた。

 それにほっとしながら、視線をずらすと目が合った季流はこう話しかけてきた。

「さあ雪野くん、残り物でよければ、食べてもいいですよ。お腹すいているでしょ」

「いりませんよ! 季流お兄さんのものなんか……というか、野菜だけしかないんですが嫌いなものおしつけているだけじゃないんですか!」

「嫌いではないですよ。好きでもないですけど……」

 顔を背ける季流の姿があり、嫌いだから残したのだと確信する雪野。

 その様子を見ていた春夢は季流に真剣な顔つきで訴える。

「季流お兄ちゃん、好き嫌いはしちゃいけないんだよね? 一口だけでも食べなきゃダメだよ! 春夢も言われた通り刺身一口食べたから季流お兄ちゃんも頑張ろう?」

「お兄さん! 春夢に最もなこと言っておいて、なに自分は好き嫌いしちゃってんですか!」

「あはは~、言っているじゃないですか。好き嫌いじゃないです。好きな物から食べていったらこうなっただけですよ」

「それ同じだろ!」

 雪野がそう言い放ったところで蓮が呟いた。

「季流さん……」

 周りを見ると、みんな呆れた顔をしていた。

 雪野はため息をつき、季流の自己中は今に始まった事じゃないと諦めた。

「ああ……もういいや。今は余計な気力も体力使わない方がいいし、厄介者な季流お兄さんには近づきません!」

その時、花月は残っていた料理を見つめながら雪野に話かけた。

「それじゃあ、雪野さん。私の分の料理は……」

 その時、彼女のお腹からぐうーという音がした。

「あ、これはその……」

「お前は自分の分は自分で食え」

「でも……あー、えーっと、いいんですか? では自分の分は自分で食べますね!」

「うん」

 料理と雪野を交互に見返し、彼女の葛藤の様子を見た後、季流はちゃっかり自分の料理を花月の方へと渡した。

「花月、私の分もあげますよ。もうお腹いっぱいなので、どうぞ」

「お兄さま、ありがとうございます!」

 先ほどのやり取りを忘れたのか食い意地があるのか、簡単に流される花月がいた。

 その様子にやはり季流を無視できない雪野がいた。

「お兄さん、ちゃんと好き嫌いせず食べなさい!」

「季流お兄ちゃん……」

 しゅんとする彼女に同情し、春夢はこんな大人にならないでと祈る雪野であった。

 この後、雪野の分の夕食はちゃんと運ばれ、雪野はお腹を空かせずに一日を過ごす事はなかった。


 そしてその後の事、雪野は紀菜を部屋に呼んだ。

 三人で大切な話しをするために呼んだ。

 その話しとは……

「蓮くん紀菜ちゃん、今から〈あの日〉の約束について話すよ」

「うん、話してくれるんだね」

「あなたが話せる分だけでいいから話して」

「うん……」

 雪野は口を開き言葉を発した。自分の事を話していった。

「〈あの日〉伝えたい事があったんだ。それは家での事、木崎家には男子は決して生きられないっていう、呪いがあった。俺は生まれつき体が弱くて八歳の頃に一度死んだ。けれど当時人形の持ち主だった姉が人形に願い俺を生き返らせた。それから俺は人形に選ばれた。家族からは風習により、いない者として扱われる様になって、無視され続ける生活が始まった」

落ち着いて事を伝える事ができたのは、先ほどまでの出来事があったからだろうか? 

それとも彼らがいれば自分がどうなろうと心配いないとただ安心できたからだろうか?

「そうだったんだね、雪野は辛い思いをしてきたんだね」

「気づいてあげられなくてごめんね」

 雪野は首を横に振って続けた。

「その後の事だけど、学校に行くようになって、蓮。それに紀菜ちゃんに出会って、俺は心救われたんだ。毎日、走らされて本当に何だこいつらって思ったけれど、本当に楽しかった。それを伝えようと思って〈あの日〉行こうとしたんだ。二人がいてくれたから今まで頑張れたんだって言おうと思ったんだ……」

雪野は言葉を止めてから……再び次の言葉を話し出した。

「あんな事がなければ、今頃、伝えてられていたんだ。悪夢さえなければ今頃、友達のままでいられたんだ。別れずいすんだのに……」

 辛そうな顔を見せる雪野に蓮はそっと言葉をかけた。

「雪野、俺たちは離れたって友達だったんだよ。ずっと雪野の事を忘れなかった」

「だから、今、私たちはあなたのそばにいるの」

「俺たちも雪野に秘密にできないから言うね。〈あの日〉の翌日、俺たちは雪野の家にいったんだ。そこで季流さんにあった。俺は雪野の居場所を聞いた。けれど季流さんは何も教えてくれなかった。でも……」

 蓮は言葉に間をおいてから話し出した。

「その時、紀菜ちゃんが黒い影が俺の近くいるって教えてくれて、俺はその黒い影を祓った。すると季流さんは俺たちが【変物】の存在を知っている人間だと気付いて、その黒い影が残像である事を教えてくれた。そしてそれ以来、雪野の事が知りたいのならば一緒に任務をする様に言われて、それ以来のたまに電話などでやり取りしていたんだ」

「お兄さんは何で、蓮たちにまでそんな事させたんだろう?」

「季流さんの考えている事は分からないよ。でも結果、雪野に会えた。雪野たちと対等に立っていられる。それで俺たちのやってきたことは意味があった事なんだって思えるよ」

「任務によって、私たちはより【変物】に関しての知識や経験を得られ強くなった。悔しいけどあの変人のせいである事には変わりないわ」

 紀菜ちゃん、変人って……自分も同意見です。

「季流さんはこの日のために俺たちを強くさせたんだ。雪野を守ってあげるために。きっとそうだよ」

「それはどうだろう……」

 お兄さんは、それほど考えているようには見えない。

蓮たちと合わせた理由にしても、お金目当てだったし。

 それにお兄さんはおおざっぱ過ぎだし、それほど考えずにそう決めた事だろう。

 そうだ、きっとそうだ!

「でも俺も蓮と紀菜ちゃんに会えてよかったよ。本当によかった」

 笑い合う二人の姿を見て雪野は、今度こそこれでいいんだと思った。

 昔のように無理しなくていいんだと、雪野は思えたのであった。

 こうしてその後、雪野たちは二泊の旅行を楽しんだ……のだが白い腕はたびたび、現れ雪野たちはこれをどうしらいいのかと、頭を悩ました。

そして後日、元凶である絵は燃やされる事になり、それ以来奇妙な物を見た人はいなくなったそうだ。

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