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人形怪奇  作者: 詞記ノ鬼士
第三章 再会の春、告げる桜
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007 学校に出現した【化け物】たち

雪野たちは季流の後についていく。

最初は玄関を出てからすぐの一年の教室から回った。

入学式までまだ日数があり、一年生の教室には誰もいなかった。

「一年生の教室だ。机こんなに小さかったんだね」

 蓮が紀菜に向けて言った。

「そうね。懐かしいわ。このミニチュアの【化け物】も」

 紀菜はそう言いながら、雪野にも見える棚の上に乗っかっている手のひらサイズの【化け物】を眺めていた。

白くてジャガイモのような歪な丸い顔があり、笑っている顔や悲しんでいる顔などいろいろあった。

「これ、どの教室にもいるのよね」

「そうなんだ。知らなかったよ」

「なになに? また二人だけが分かーる、秘密の話? ヒューヒュー」

「その言い方だと語弊を生むわよ、蓮くん」

「えーじゃあ、何ていえばいいのさ~」

「知らないわよ。自分で考えなさい!」

「昔にもあったね。こういう言葉の返しが……」

 雪野たちとは距離をおいて、その光景を眺めていた季流は横にいる花月に話しかけた。

「三人とも思い出に浸っているようですね」

「そうですね、お兄さま」

「このままあの三人の邪魔をしないように、別行動を取りましょうか、花月」

「はい。それがいいと思います。私も本当は雪野さんの傍にいたいですが、今日は我慢します!」

「はい、お願いします。花月……」

 そこで季流が雪野たちに言葉をかけた。

「さて、ここにはいない様ですので……雪野くん、蓮くん、紀菜さん、あなたたちは一階をまわってください。今から別行動です」

「え、お兄さんたちは?」

「私と花月は、上の階を見てきます」

「そうですか。じゃあ、いってらっしゃーい」

「はい。行ってきます」

「雪野さん、気を付けて」

「はいはい、分かっているよー」

 こうして、雪野たち〈怪奇団〉メンバーは季流と花月と別行動を取る事になった。

 二年の教室へと向かい、先生の授業をする声が聞こえており、雪野たちを窓越しから見て、頭を下げて挨拶をされる。

 それに雪野たちも軽くお辞儀を返したのだった。

 見たところ、それほど凶悪な【変物】は確認されなかった。

「あの白いのしかいないみたいだね」

「そうね」

 雪野と紀菜に続いて、蓮は言う。

「次の教室、行ってみようか」

何事もないように思われた。

 だが、雪野たちが隣のクラスへと向かおうとしている時だった。

 教室や校内に突如として黒い霧が発生しだした。

 瞬く間にそれは広がっていく。

「なんだ、これは……」

 雪野は声を漏らす中、二人は警戒して周りの状況を伺っていた。

 教室の方を見てみると、ガタガタガタガタと、棚が揺れ、他にもガラスが振動していて今にも割れそうな勢いだった。

「なに?」

「まただ」

「先生、これなに?」

 それに子供たちは騒ぎ出し、それを先生がなだめる。

「皆さん、落ち着いてください。すぐ収まりますからね」

一部の子は具合が悪いのか、だるそうに頭を伏せていた。

「先生、気分が悪いです。保健室に行ってもいいですか」

「先生私も」

「僕も」

 次々に生徒はそう申しでる。

 紀菜はちらりと外の方を見た。

 すると、

「【変物】が外から押し寄せてきているわ」

 紀菜が言うように外には点々として地面を這う【変物】、空に浮き飛んでくる【変物】たちが迫ってきていた。

 その見た目はとても歪なもので、それぞれに形は異なっている。

中にはうまく形をなしていない黒い霧のようなものや、沢山の腕や目玉がついた【化け物】もいた。

「ほんとだ。どうすればいいんだ。お兄さんたちは今二階だし。そこまで行く?」

「ゆーきの、季流さんがいなくたって、俺らで何とかしようよ。俺らは〈怪奇団〉だろ。昔のようにやろ?」

「え、でも……」

 雪野は青い顔をして、蓮を見る。

 昔のようにと言われると……

「雪野が囮、紀菜ちゃんが見て、俺がやっつける! な、やろう?」

 蓮は雪野の肩を掴み、説得しようとする。

「いやいやいや、あれには無理があったって。今さらだけどさ、あれはやめない。囮なんてほんと勘弁してほしいです」

「なに今さら、怖気づいているのよ」

「雪野はほんとに弱虫だな~」

「じゃあ、蓮くんが代わりに囮やってみなよ」

「俺には無理だよ、二人と違って見えないから不意を突かれて死んじゃうかも。あ、その時は雪野のせいだからね」

「なんでだよ!」

「と言っている間に、【変物】が来たわよ!」

【変物】たちは校舎をすり抜けて入ってきた。

 そして子供たちがいる教室に向かって来ていた。

「仕方ないから、俺が一つずつ祓っちゃうよ」

「蓮くん、そこよ、あとすぐ左、右!」

 紀菜ちゃんは一生懸命、押し寄せる沢山の【変物】の存在を言葉で伝え、指をさしながら対応する。

 そんな中、雪野はというと、

 ――なんだ、おいしそうな人間がいるぞ。

 ――本当だ、おいしそうな人間だ。

 ――不思議な人間だ……おいしそう。

 おいしいと食べる前提の声が聞こえてきて、雪野は自分が食べられる光景を想像して、身を強振で震わせた。

「うぅ……」

【変物】は彼の方に近づいてくる。

そのため雪野はそれをよけようとするが、離れてくれず、袋にしまっていた人形を出し、その帯目に差し込んであった小刀を取り出す。

それを【変物】へと振り下ろす。

すると小刀が【変物】の体に突き刺さり、その瞬間、その【変物】は跡形もなく消滅する。

それの繰り返しで雪野は【変物】に向かっていった。ただがむしゃらに……

「おりゃ! そりゃ! や! おっと……」

 しかし、無数の【変物】を前に雪野はきりがなく、危うく横から来た【変物】に接触するところだった。

「やっぱり、これだけではヤバいな……」

だから雪野は小刀を持ちながら人形を前にかかげた。

「人形よ。【変物】を退治せよ!」

すると、そこに吸い込まれるように【変物】の姿は次第に小さくなり、最後には跡形もなくなった。

「あー、助かった」

 一部始終を見ていた二人は驚いたような顔で雪野の方を向く。

「なんだ、一人で何とかできるんじゃない」

「そうか、雪野は昔と違って見える様になったから、そういうやり方もできるようになったんだね。人形とか操れるの?」

「いや、振り回されている気がしてならない。今も昔も……」

「そうか、それは大変だね」

「まあね。あと、この人形使っても結構時間かかって、逃げながらじゃないとさすがにこの量はヤバいよ! という事で俺も十分、危険で余裕がないからね。言っとくけど」

「何言っているの、あなた【変物】が見え人形があるうえに、妖刀とか持っているなんて私たちより余裕ありそうじゃない。私も出来る事なら護身用に持っておきたいところよ。うらやましいわ」

「という事で、やっぱり余裕ある雪野が今……囮やりますかぁ~」

「いや、やらない! 絶対やらない! 今思うとよく昔の俺死ななかったなって思うよ。てか、この量、異常だろ! 考えろよ! 俺が死んでもいいのかよ!」

「あはは、確かにこれだけの【変物】どこから来ているんだろうね……」

 蓮がそう言葉を漏らしたところで、先に顔を前を向き直した紀菜は言った。

「蓮くん、すぐ右危ない! 次は左ね」

「うん! それ! は!」

 その後、二人の掛け合いは集中して行われた。

「本当に異常だわ。気持ち悪い……」

 雪野たちはこの後も【変物】退治をしていった。

雪野が人形と小刀、紀菜が《霊視》、蓮が《破力》の力で【変物】をやっつけていくのであった。

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