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人形怪奇  作者: 詞記ノ鬼士
第三章 再会の春、告げる桜
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002 仲良し3人組?

 校舎の入り口で校長先生らしき知らない男の人が迎えてくれた。

 昔とは違い、先生も変わってしまっている。

 もしかすると花子先生ももういないのかなと少しだけ寂しいと雪野は思った。

「どうも、よく起こしに来られました。さあさあ、どうぞ中へ」

 案内されるまま、雪野たちは中へと入る。

「雪野くん、蓮くん、紀菜さん、あなた達はなつかしい校舎でも見てきなさい。つもる話もあるでしょう。私は花月と共に挨拶を済ませてきますので、お気になさらず」

「はあ……」

 勝手にそんな事していいのかと思ったが、校長先生は特に何も言わなかったので大丈夫だろう。

「君たちも、今日はよろしくお願いしますね」

 その言葉に頷き雪野たちは、校長先生に案内され歩き去っていく季流と花月を見送った。

「雪野いろいろ話そうかぁ~」

「もう一度言うけど、聞きたい事がたくさんあるわよ」

「はいはい。つきあいますよー。付き合えばいいんでしょー」

その後、三人組は、玄関を出てすぐの階段を上り二階へと向かった。

なんとなく気まずさがあった。

 そんな雪野に対して蓮はわくわくした様子でいた。

「さて、雪野と何を話そうかな~」

「六年前の事は無理だとして、今まで何してきたの?」

「え~っと……夏川家にいったり木崎家に戻ったり。で、たまにちょくちょくお兄さんと怪奇任務に行ったりとしたよ。後は家でのんびり。そんな感じ……」

「へー、そんな感じか~」

「ずいぶんざっくりしてるわね。もっと何かないわけ? あなた大切なこと言わないつもりでしょ。私達がどれだけ心配してたと思っているの!」

「まあまあ、紀菜ちゃん。雪野はまだ話したくないんだよ。ただでさえ雪野は神経質で臆病なんだから、待ってあげようよ」

「親切で言っているつもりでも、蓮、お前の物言いはチョー無神経だよ」

「えー、本当の事じゃん」

「そうね。蓮くんのいう事はまったく持って間違いないわ」

「二人の中で俺はどんだけ弱弱しい存在なんだよ……」

「仕方ないよ。雪野は弱弱しいんだから」

「そうね。弱弱しかったわね」

「お願いだからそこは否定して!」

 けなされている。

 けれど、それは昔にもあったなつかしい感覚で雪野は会話が弾んだ。

「あはは。で、人形は相変わらず持っているの?」

「ああ、ここに……」

 雪野は腰に掛けてある黒い袋を見せた。

 その中には呪いの和人形が入っている。

「相変わらず、俺は呪われているよ……」

「そして、相変わらず弱弱しくヘタレってわけね」

 蓮は何食わぬ顔で言ってくる。

「そうそう相変わらずヘタレ、って! なんでヘタレ?」

「さて、次は何聞こうかな~」

「話しをはぐらかすなー」

「雪野。花月ちゃんって、かわいいね」

「え、いきなりなんだよ」

「雪野とはどういう関係なの?」

 何を聞いてくるかと思いきや、蓮は突然とそんなことを言ってきた。

 婚約者とは言えない。

 特に蓮、こいつには知られたくない!

「もしかして、恋人とかそういう感じ? 二人は付き合っているの?」

「な、わけないじゃん。あんな奴……」

「あんな奴? ずいぶん親しそうだね。雪野がそんな言葉づかいしているとか珍しい。俺にくらいだと思っていた」

「それはまあ、長い間一緒に任務していると嫌でも親しくなるよ」

「えー、昔から? いつから?」

「もう、騒ぎ立てるな。今授業中!」

「二人ともうるさい」

 紀菜は小声でそう言い、雪野と蓮は彼女に耳を引っ張られる。

『はい、はい』

 雪野と蓮は同時に言葉を返したのであった。

 二階にある四年生から六年生までの教室まで雪野たちは来ていた。

 黒い人影、【残像】はもちろん、あらゆる【変物】が学校内にはいた。

「なにあれ……」

 そこにはクモのように、天井の角に糸を張る【化け物】がいた。

 目玉がたくさんついていて、ひどく気持ち悪い。

「ああ、まだいたのね。そのクモみたいなやつ」

 紀菜は不快そうに眉を寄せていた。

「何度も祓っても、すぐ同じところに住み着くのよね、あれ」

「そういう事もあるんだ」

「というか、雪野見えるの?」

「まあ、いろいろあって……」

 また、過去に触れる事柄が出てきた。

〈あの日〉から雪野の見る世界も変わった。

 雪野が話さずにいると、蓮がそっと呟いてくる。

「また、離せないパターンかー」

「うん……」

「見えるなんてうらやましいな。俺は相変わらず見えないやー」

「見えなくていいわよ。あんなの……」

 蓮と紀菜の意見は違うようだ。

「二人は本当に変わらないね」

「ふふふ、本当にそうかなー」

「まったく変わらない者なんてないと思うわよ」

「え、なになに? 二人何か変わったの?」

「私たち、昔よりは強くなったわよ。少なくとも雪野くんよりは役に立つわね」

「うん。昔と比べるとはるかに戦術は上がったよね。これも季流さんとの任務のおかげだ」

「本当あの人、適当よね……」

「それは、それは……季流お兄さんがお世話になっています。もし【変物】に襲われる事があれば二人ともよろしく。俺は何もできないんで」

「なんだ、そこは相変わらずなんだ。任務の時も?」

「まあ……何とかやってるよ……」

 雪野が普段の任務を思い出して嘆息した時、

キーンコーンカーンコーン――

と、チャイムが鳴りだした。

 すると教室からはこんな声が聞こえてくる。

「気をつけ、礼」

『ありがとうございました』

 甲高い子供たちの声が廊下まで響きわたる。

 その後、授業を終えた彼らは廊下へと出てでてきて、雪野達の方を伺うように見ていた。

「誰かいるよ」

「着物をきたお兄ちゃんだ」

「先生、誰かいるよ」

 一人の男の子がこちらに指をさして先生を呼びだしていた。

 そして、教室から出てきたある女性に雪野たちは見覚えがあり雪野はぽつりと言葉を漏らした。

「花子先生……」

「あら、懐かしい顔ぶれね」

 そこへ、ちょうど挨拶を済ませたのか季流がやってきた。

「雪野くんたちここにいたんですか。挨拶はもう早々済ませてきましたよ」

 後ろには花月もついてきている。

「季流お兄さん、早々って……失礼がないように……」

「はいはい……あれ、そちらは、知っている先生なんですか? 雪野くん」

「はい。名前は花子(はなこ)先生……」

 雪野は確かめるように先生に目を向ける。

「じゃないでしょ、雪野くん。ハナコとかいてカコです。花子(かこ)先生と呼んでください」

「って、おきまりでしたね。昔」

「そうね~。本当にみなさん、なつかしいわねー」

 その後、花子先生は一人ずつ、名を呼んでいく。

「雪野くん、それに昔と違ってメガネかけているけど蓮くん、そして紀菜さん。みんな元気にしていた?」

「はい。元気でしたよ」

「私もそれなりに元気でやっていましたよ」

蓮と紀菜が答えた。

「実はこのメガネはだてなんですよー」

「え、そうなの?」

 蓮のその言葉に雪野は驚いて、まじまじと蓮のメガネを確認した。

 どうやら本当のようだった。

「うん、学校の方で真面目に見える様にしているんだよ。普段は使わないんだけどね」

 そう言って、蓮はズボンのポケットにだてメガネを入れた。

「へー、そうなんだ」

 なんで今日かけてきたんだろう?

「そんな事しなくたって、蓮くんは昔から成績優秀だから別にいいのに」

「紀菜ちゃんだってなかなかの成績じゃないか」

「あのー、二人は今まで同じ学校に通っているの?」

「うん、そうだよ。今まで中学校、高校と同じだよ」

「そうじゃなきゃ、私は生きていけないわ」

「そうか、それはそうだね……って事は付き合っているの? 二人は……」

 何気なく冗談交じりで雪野は聞いてみた。のだが……

「……」

 黙り込む蓮。

 一方の紀菜は慌てた様子でこう言う。

「そんなわけないでしょ。付き合っているなんて、私と蓮くんがありえないわよ!」

「そ、そうですか……」

「だよね。俺と紀菜ちゃんはいつまでも仲良しで大事なバートナーだよ」

「そ、そういう事だから……」

 紀菜はその言葉にがっかりしたような表情をしている様に見えなくもない……

「うん……」

 二人だけの世界がそこにはあるような気がして、雪野はこれ以上聞くには気が引けた。

 そんな時、花子先生は言ってくる。

「どうやら、雪野くんと会うのは蓮くん、紀菜さんも久しぶりのようね」

「あ、はい。そうなんです。小学校以来で」

「そうなんだ。それはよかったねー」

「はい……」

「それで雪野くんの方は、元気にしてた?」

「まあ、元気でしたよ」

 雪野はあいまいに答える。 

「そうね。雪野くんは体が弱かったけど、今では大丈夫なのかしら」

「あはは。これでもだいぶ強くはなりましたよ。走れるようにはなったし」

「そうなの。走れるようにね。なんだか思い出してきたわ」

「何をですか、花子先生?」

 雪野がそう聞くと花子先生はこんな思いでを話す。

「ほら昔、廊下を走っていて、いつものように私が三人を注意していたでしょ」

「そういえば、そうでしたね……」

 雪野は回想する――


「こら、そこの三人組! 学校の中では走ってはいけませんよ!」

「すみません、すみません! でも、今はちょっと待ってください! 追われているんです」

 雪野の後ろには見えない【化け物】の塊が連なっている。

 彼が走る中、蓮と紀菜があらかじめ立ち位置を決めていたかのように出てきて、そして蓮が言う。

「雪野、大丈夫だよ、今やっつけるから」

 紀菜も言う。

「蓮くん、雪野くんに向かって少し右側にうつのよ。さあ」

「うん、紀菜ちゃんありがとう。それ!」

 そんな三人の緊迫した様子に花子先生は唖然としていた。

「はあ、終わった……」

「雪野お疲れさま」

「今日は吐かないでよね。みっともない」

「はいはい、今日は大丈夫。たぶん……」

 息が上がりながら、そう答える雪野。

 三人が安堵の表情を見せたところで、花子先生は言う。

「三人とも、何か知らないけど終わったかしら?」

「あー、はい。終わりました」

 雪野がそう答えた後、花子先生はこう言葉を漏らす。

「最近、君たちよく一緒にいるわね。どうしたの?」

「先生、俺たちとても仲がいいんですよ」

 蓮が言った。

「仕方がないから付き合っているだけです」

 紀菜が言った。

「いや、なんか、勝手に仲間にされた感じで……よく分かりません」

 そして雪野が最後に答えた。

 花子先生はこの時こう思っていた。

(見事に三人バラバラね……)

「そう。でも走って遊ぶんだったら外で遊びなさい。いいわね!」

 三人はお互いに顔を見合わせた。

「どうするのよ……」

「雪野くんが走るからこそ早く終わるし、雪野くんにも怪奇団の活動ができているし、俺としてはこのまま続けたいよ」

「いや、僕としては安全第一で二人の活動を見守っていたいよ」

「そんな雪野の意見はおいといて」

「おい、なぜおいとくんだよ! ちゃんと聞いてよね!」

 雪野がそう言ったところで、

「はいはい、三人とも言いたい事があるんだったら、聞くから話してみてくれない。できる限り相談に乗りから」

 それに三人は黙り込んでから蓮が先生に伝えた。

「先生、これは遊びではないんです」

「遊びじゃない? だとしたら、何をしているの?」

「俺たちは〈怪奇団〉というグループを作ったんです。それで毎日自分たちの身の回りのいる【化け物】を払う活動を休み時間や放課後にしているんです」

「へーそうなんだー。って、先生をからかっているんですか?」

「違いますよ。俺たちは本気です。俺たちはお互いに【化け物】の存在を認知しています」

「【化け物】?」

「紀菜ちゃんはその【化け物】が見えていつも怯えて暮らさなければいけない。雪野は呪いの人形を持っているため、みんなから距離を置かれています。俺はそんな二人と同じ側の人間で【化け物】を見えてはいないけれど感じる事ができ、それらを払う力がある。俺たちはお互いに似ているんです」

「すみません……とてもじゃないけど、私には信じられません」

 それを聞いた三人はがっかりした表情を見せる。

「先生……」

 やっぱり、見えない者には信じがたい話なんだ。

 先生だって同じで、一般の人に話す内容ではないと、雪野はそう思った。

「でも、本気だという事は伝わってきます。このままその怪奇団というクラブを続けるかどうかですが……」

「どうか、お願いです。俺たちの活動を許可してください」

 蓮が頭を下げる。それに合わせて雪野も紀菜も頭を下げた。

「お願いです。先生」

「私たちの居場所を奪わないで」

 そういって必死に頼む三人に花子先生は戸惑いながらもこう告げた。

「もう、分かったわ。その代わり人の邪魔にならない程度に走りなさいね。それに事故が起こったら即やめさせますからね」

「花子先生、ありがとうございます」

『ありがとうございます』

 雪野と紀菜も返した。

 そんな出来事があった――


「あなたたち、祓い屋になっていたのね。あの時は信じてあげられなくてごめんね」

「いえ、いいんですよ」

 雪野は言った後、蓮と紀菜も続けて言う。

「先生は何だかんだで黙認してくました。そのおかげで怪奇団を続ける事が出きたんです」

「そうです。私は感謝しています」

「みんなありがとう」

 蓮はそこで続けて口を開いた。

「それで、本題に入ろうと思っているんですが、今学校では何が起こっているのですか? それで俺たちは呼ばれたんですよね」

「実は学校で不可解な事件が起こっているのよ。今の時間は安定しているんだけど……この後が大変奇妙なのよ」

「どういう事です?」

「突然棚ががたがたし出したり、それで物が落ちたりしてね。それと、具合を悪く生徒続出して授業にならなかったりして、大変なのよ」

 そこで季流が言葉を漏らす。

「おそらくそれはポルターガイストですね」

「ポルターガイストって、【霊】が起こすとされているあれですよね。お兄さん」

「そうですね。一概に【霊】だけ仕業だけとは言い切れませんが、何らかの【変物】のしわざなのは間違いないでしょう」

「はあ……」

 そこで、よく分からないというような顔をしている先生に向けて蓮は説明した。

「あ、【変物】っていうのはね、先生。【霊】や【化け物】など全てをひっくるめての総称ですよ」

「へー、そうなんだ」

 そこで季流は花子先生へと顔を向けた。

「そういえば、校長先生から聞いた話によると、桜の木を切った頃からその現象が起こるようになったようですね」

「はい」

「よかったら、その桜の木の所まで案内してくれますか?」

「分かりました。案内しましょう」

 こうして、玄関で靴を履き替えた後、校舎裏にある桜の切り株の場所まで足を運ぶ。

 いつものように季流が任務を進行している様子を雪野たちは眺めていた。

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