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人形怪奇  作者: 詞記ノ鬼士
第二章 呪いの人形
35/141

013 〈怪奇団〉結成

 時間が移り放課後の事だった。

「雪野。ちょっといい?」

いつも通りすぐ帰宅しようとしていた雪野は蓮に誘われた。

彼の隣には紀菜ちゃんの姿もあり、どうやら自分と同じように彼に誘われたのだろう。

「で、何?」

 一応聞いておく。

「話があるんだ」

 たぶん昼休みにおあずけをくらった、蓮の秘密についての話をしてくれるのだろう。

 蓮は何の為に自分たちを仲間にしようとしているのか、雪野はそれが聞けると思い期待しないようにして蓮についていった。のだが……

「で、なんで、学校で話さないんだよ!」

「いいじゃん。途中まで帰り道一緒なんだから」

「えっ……」

 知らなかった……

「そんないやそうにしないでよ」

 雪野たちは今、田んぼ道が連なる車や人通りの少ない、下校道を歩いていた。

 いつもは一緒に帰る事のないこのメンバーで固まって歩いている理由はもちろん蓮の話を聞くためだ。

なのに……一向に口を開こうとしない蓮に、もう一生話さないつもりなのではと、雪野は思ってしまう。どうせはなすきなんてないんだろう、どんなんだという様に、疑いの目で蓮を見ていると彼はもっともな返答をしてきた。

「それにね。学校で今言う事を話さないのはその方が説明もしやすくなるからだよ」

「そうなの?」

 信用できない……

だが、蓮の一件の行動には必ず意味があった。

 全て自分や紀菜ちゃんを友達にしようとしてやった事だが……

僕はまんまと蓮の策略にはまってしまった。だからこそ今ここにいる。

彼女も同様に……そう言えば彼女は……

 振り返ってみると、紀菜が何やら怯えた様子で周りをきょろきょろと見回していた。

「で、さっきからおとなしい紀菜ちゃんは、そんな険しい顔でいったい何を思っているのかな? 何が見えているのかな?」

「うるさいわね。早く本題を言ってよね。じゃないとさっさと帰るわよ!」

「わかったよ。じゃあまずは君が怖がるモノを俺が……それ!」

 その瞬間、蓮が何をしたのか僕には分からなかったが、蓮は何かを祓うかの様に今、手のひらを前に広げていた。

それから紀菜の驚きや安堵の表情を確認できる。

「消えた……」

「そのようだと、うまくいったようだね」

 紀菜からこぼれた声を拾い蓮はそう呟いていたが……一体、いま何かが起きたんだろうか?

「あなたにも見えてるの? その力は……?」

「見えてないよ。そこに何かいるなぁ~って、感じはするけど」

「あなた何者? 私たちに近づく理由はなに?」

「それを今から話そうと思うんだ」

 蓮は紀菜から顔を移すと自分へと向き直った。

「では雪野。雪野は見えないだろうから今、俺がした事は分からないと思うけど、これだけは理解して。俺は君たち二人と同類でこの誰にも分かってもらえない状況を変えようとは思わないけど、せめて一人で寂しく生きていく状況をなくしたい。二人に毎日楽しい日々を送ってほしいと思うんだ」

 蓮は雪野の方、それから紀菜の方を真剣な面持ちで見つめていた。

「その為に、俺がやりたい事は〈怪奇団〉というグループをこのメンバーで作る事なんだ」

「は~?」

「〈怪奇団〉……なにそれ?」

 蓮の口から出たその突拍子のない言葉に雪野と紀菜は唖然とする。

「蓮くん、ふざけているの? それとも本気? そんな子供じみた遊びに私は混ざる気はないんだけど」

「いや、ちょっと待ってよ、紀菜ちゃん。紀菜ちゃんはいつも【変な物】から怯えて必死に生きているよね」

「それが?」

「俺の傍にいるならいつでもその【変な物】は祓ってあげるよ。そのためには常に一緒じゃないといけないから、その口実にみんなも納得するんじゃないかって思ったんだ」

「別に……いいわよ。これからも一人で……」

 紀菜ちゃんは断ったようだ。

「言っとくけど俺は紀菜ちゃんを救いたいとは思ってるよ。同情もしてる。でも、無理に仲良くしようとは思わない。俺は紀菜ちゃんを利用するつもりなんだから」

 蓮は自分にも言った事を紀菜に話した。

「それはどういう事?」

 紀菜が眉を寄せて聞くと、蓮はしっかりとした顔つきで告げた。

「助けてほしいんだ。雪野にも助けてもらいたい。これは俺の勝手なお願いだから断ってもらっても構わない」

「断るかは、話の内容で決めるわ。だから話してみて」

 紀菜の言葉に蓮は頷いた。

「さっき言ったけど紀菜ちゃんが見える【変な物】は俺には見えない。それでもその【変な物】は俺にも襲いかかってくる。そして不意を突かれるといつ死ぬか分からない」

 蓮は物騒な言葉を吐いた。

 死ぬ……

 それはかなりやばいという事ではないか?

「それは私も同じよ。見えても不意を突かれたら終わり」

 えっ……?

「そうだよね。俺も人とは距離を置いておかなくてはいけないんだ。なるべく自由に行動できる様にね。そのために二人を利用する」

「それで友達作らないようにしていたのか」

「そう。なるべく人と関わらない様にわざわざ日直の仕事を手伝ったり、それがなければ花を変えに行ったりと無理にでも一人になりやすい口実を作ったし」

「まあ……そのせいで余計、優しくて気が利く何でもできる完ぺきイケメン人間として皆からの注目の的にされているようだけどね……本当はこんな感じなのに」

「そうなんだよ。俺は雪野と違って嫌われにくいようで」

「きっと蓮くんの腹黒い本性を知ったら、嫌われる事ができると思うよ」

「そうかな~」

 と、ここまでの会話が繰り広げられたところで紀菜が急かして言う。

「で、結局私たちを使ってどうしたいわけ? さっさと答えなさい」

「あ、うん。あえてもっと孤立するような事をする。それが〈怪奇団〉を作るという事……」

「もっと詳しく聞かせてちょうだい、蓮くん」

「俺は徹底的に学校や地域にいる【変な物】を除去していきたいと思っている。そうすれば、

しばらくは授業中でも【化け物】に襲われる心配は少なくなるよね」

「そうね……」

「同時に周りからは異様な光景に見える事かもしれない。でもそれにより自分たちにとっても相手にとっても、危険に巻き込まれたり巻き込んだりしないからいい事だ。〈怪奇団〉の活動はこんな感じ。どうか二人ともこの話にのってくれないか? 俺を助けてくれないか?」

 紀菜と雪野に視線を向けた蓮は、どうやら本気の様で、雪野はその返答に迷っていた。

「蓮くん、僕は……」

 どうすればいいか分からない。

 自分には紀菜ちゃんの様に、【変な物】を見る事ができないし、蓮くんの様に退治する事ももちろん出来ない。

つまり僕は二人にとって全くいなくたっていい存在だ……

むしろ人形に呪われているただの邪魔者でしかない。

何もできないこんな自分は二人の役になんて立たてないのだ。だから……

「……」

雪野は自分を卑下することがもう癖になっていた。生まれた時から彼は呪いに振り回されてきたのだ。心のそこから自分の運命に落胆して、自分の存在自体もいらないものだと彼は思っていた――

 ふと彼が今思い出した光景は、家での光景で……

 自分はいない者、そうこれからも……僕という人間はいらない存在なんだ。

「どうしたものかしら……?」

 横にいる紀菜ちゃんを見てみると彼女は少しの間、難しい顔をしていた。

 彼女はどうなんだろう。紀菜ちゃんはどんな返事をするのだろうか?

 やがて傾けていた顔を正面に戻すと、しっかりと蓮の方に目を向け紀菜はそっと呟いた。

「……私は、いいわよ」

 蓮はその意味を確かめる。

「その〈いい〉は、否定? それとも肯定?」

 蓮の問いに紀菜ちゃんは言いづらそうに声を荒げてもう一度、告げた。

「な、仲間になってあげるって言っているの。〈怪奇団〉でも〈仲良し団〉でも、何でも……私を守ってくれるなら別に入ってあげてもいいわ」

〈仲良し団〉?

 とっさに出たその言葉は彼女のイメージか願望なのだろうか。

「ありがとう、紀菜ちゃん。本当にいいんだね」

「別にあなたのためじゃないわよ! 自分の為なんだから……私もあなたを利用するってことで交渉成立よ!」

 そんな強気な紀菜に蓮は笑顔で一言返す。

「うん」

 そして次に雪野の方に目を向けてくる。

「雪野は仲間になってくれないの?」

「……分からない。僕、二人と違って何もできないし、別にいなくていいんじゃ……」

「そんな事ないよ。同じ境遇の者が集まるだけで俺はいいと思うよ。より一人じゃないって実感できると思うし」

「でも、人形の呪いとかも……紀菜ちゃんは大丈夫かなぁとか思っているんだけど……」

 雪野はチラッと紀菜の様子を伺った。

 彼女にはもう人形の事は話してある。

 いや、話してあるというよりは聞かれていたというのが正しいのだが……

 そんな彼女は人形の事についてどう思っているのだろうか?

「人形の事は別に構わないわよ。保健室での話と昼休みの二人の会話でその人形が危険なものとかは分かったわ。ようは人形に触らなければ問題ないわよね」

「でも……」

 雪野が深刻な表情で声を漏らすと、蓮は呆れたようにこう伝えた。

「もう雪野は本当に……いろいろ気にし過ぎだって。紀菜ちゃんがいいって言っているんだから、いいんだよ。俺も雪野が仲間になることは反対じゃない。すると後は何が必要かというと雪野の気持ち次第なんだ」

 そんなこと言ったって自分の気持ちも分からない……

僕は一体どうしたいのだろう……

「俺たちの心配はいいから、自分がどうしたいのか言ってみて。一人は嫌じゃないの? それとも俺らと仲良くするのがいや? 嫌い?」

「それは絶対違う! 一人は嫌だけど僕は何もできなくて役立たずだし、仲間になる資格ないし……」

「バカじゃないの……」

 紀菜は、ぽそりと呟いた。

 少しこちらの態度にうんざりというかイライラしている様子でいるのが見て分かる。

 雪野はもうどうしたらいいか分からなかった。

 そして、しばらくの沈黙の後、蓮は思いっきり言い放った。

「雪野! その心配はない!」

「えっ?」

「雪野には雪野にしか出来ない事をやってもらうつもりだから。というか、友達って何か見返り求めてなるもんじゃないんだよ。仲良くしたいから自分がそう思ったからなるんだ」

 確かにそうかもしれないけど……

「俺は雪野を友達だと思っている。難しいことは考えなくていいから俺と友達になってくれるか、くれないかだけ決めて。もしなってくれたら、〈怪奇団〉の仲間入り決定だよ。分かった?」

 蓮は僕に笑いかける。自信に満ちた笑みを見せる。

 その言葉はやはりずうずうしいのだが……自分の心に響くものがあった。

 答えはさっきから蓮の言葉の中にあった。

 自分がどうしたいか? 一人は嫌だった。

 なら一人じゃなくなるには……こんな自分でも友達を作るには……

「僕は……」

 だから、言ってしまったのだ。

 蓮の言葉に引き付けられ言ってしまったのだ。その一言を……

 いや、自分はもう最初の頃から……

「蓮!」

 雪野は蓮の名前を強く叫んだ。

「はい……!?」

 彼は突然の事でよく分からないという様子を見せた。

友達認めたら呼び捨てで呼ぶ、という事で……

「そういう事だから……」

 雪野がそっけなくそう返すと、蓮はその意味が分かったのか、口をぽかーんと開けて言葉を漏らす。

「あは、あはは……ほんと雪野くんは素直じゃないね」

「うるさい!」

 もう、一人でいるって決めていたのに……まるで蓮に負けてしまった気分だ……

「でもそんな君も俺は本当に気に入って……」

「それやめてって! いつまで続けるつもりなの? このやりとり!」

「それは、紀菜ちゃん次第かな~?」

 蓮は紀菜ちゃんの方へと目を向けた。すると……

「本当に仲がいいわね。お二人さん」

 雪野が蓮を友達だと認める一連の会話を聞いていた紀菜ちゃんはそう言った後、こんなことを口にした。

「もういちゃつくならよそでやってよね。見ているこっちが気まずくなるんだけど……」

「えっ……?」

雪野は足を止めた。

 すると二人も足を止めて、雪野の方へと振り返る。

「どうしたのよ?」

 あれ? もしかしてだけど……

「あの紀菜ちゃんは、俺たちの関係をどう見ているの?」

 聞いてみた。やばい勘違いをされている気がしてならなかった。

 すると紀菜は怪訝そうに雪野の質問に答えた。

「なに? まだ付き合っていなかったりするの?」

 やっぱりとんでもない勘違いをされていらっしゃる!

「いやいや、そんなわけないじゃん! 紀菜ちゃんは何か勘違いしているみたいだけど、僕は……」

 男だ、と言おうとした。

 紀菜ちゃんはどうやら、あの保健室のいっけん以来僕を女だと勘違いしたままの様だ。

 だが、彼女は雪野の主張をせいして言う。

「あ~、言わなくていい、言わなくていい。言わなくても分かっているから。私の事は気にしないで。私もなるべく気にしないようにするから」

「だからそれ、全然分かってないから! 僕は男! 女じゃなくて男だから!」

 やっと言えた……

 解放感と若干の不安が入り混じる。

果たして僕を男だと知った紀菜ちゃんは僕を受け入れてくれるのだろうか?

「雪野くん……あなたそれでも女の子なんだから、どうか自分を受け入れて」

 憐れんだ目で諭すように言われた……

「……」

 あれ? 僕は女だっけ? 男と勘違いしているだけで本当は女だったのか? 

いやいいやありえないよ! それは! 

 雪野はもうこれ以上自分の事についてどう説明すればいいのか分からなかった。

 そんな時でも蓮はまたあのネタを冗談めかして言ってきた。

「雪野……それでも俺は君の事を……」

「アア! だからそれやめろって!」

「別にいいじゃん、楽しいしー」

「よくない、楽しくもない! そもそも蓮くんのせいでこんな変な誤解されているんだけど、どうしてくれるんだよ」

「あ、雪野、またくん付けで呼んで」

「一度読んだからいいだろ! 蓮くんは蓮くんで!」

「まあ、いいけどね。本当は呼び方で友達かどうかなんて決まっていないから……一応言っておくけど。雪野の呼びたい様に呼べばいいから」

「ああ……ここ一週間ほどで大体わかってきた。蓮くんは嘘とかさらりと何気なく言う、かなりめんどくさいイジワル人間だって事が!」

「あれ腹黒天使じゃなかったんだ。というか、イジワル人間だなんて心外だな~。せめて、日常を楽しい物へと導く、そう、それは神、俺を神様として見てくれていいよ」

「何で逆に位上がっているんだよ! それも神とかずうずうしすぎ! 楽しいのは蓮くん一人だけであって僕は全然楽しくないんだけど! それに神は神でも蓮くんは邪神だよ」

「うまい事いうね。俺だってわざとだけで雪野くんを振り回しているわけじゃないよ」

「その言い方だとわざとでもあるってことだよね」

「そういう事になるね……雪野くん、結構世間知らずぽいからつい、アハハ」

 笑ってごまかす蓮。

「アハハ、じゃないよ。ていうか、早く紀菜ちゃんに僕が男だという事説明して」

 紀菜はまじまじと、雪野と蓮の様子を伺っている。

「え~、もうばらしちゃうの? おもしろかったのに?」

「だから僕がおもしろくないよ!」

「はいはい。そういうことで紀菜ちゃん、雪野は男だよ。ごめんね。誤解させてしまって」

「嘘でしょ……」

「ほんと、ほんと」

 紀菜ちゃんはこちらをきょろきょろと疑わし気に見つめてくる。

 自分はそんなにも男らしくないのだろうかと、思わず雪野はため息をつきたくなった。

「でも、どう見ても女の子じゃ……色白できれいな肌、透き通るさらりとした長い髪なのにこれで男のはずがないわ!」

 力強く言われてしまった。

 なんか褒められているのだけど……それはとても悲しいというか、複雑な気持ちになるんだけど!

「蓮くんの冗談でしょ、どうせ」

「違うよ。だってほら……」

 蓮は雪野の正面にくると、そのまま手を彼の上着の下にもっていくと勢いよく上げた。

 ほんとに手際よくさらりと……

「ギャアア‼ 何してんだよ、お前!」

 雪野はすぐ蓮の手を払いよけた。

 すると蓮は気にもせず、紀菜へと説明するように述べた。

「胸はないから、男だよ。分かった?」

 彼女から返事はなかった。

 そんな唖然としている紀菜に蓮はさらに余計な事を言う。

「まだ信じられないなら、雪野の下も……」

 その瞬間、周りの空気がざわめいた。

「もういいから! そういうのやめて! そういうのやめて! お願い!」

「アハハ、冗談、冗談!」

「しゃれにならないよ!」

 雪野がそう言ったところで、紀菜は真顔でこう聞いてきた。

「雪野くん、聞くけど、あなたは本当に男の子なの?」

「そうだよ。さっきから言っているんですけど……」

 紀菜は次に眉間にしわを寄せた様子で蓮の方を見る。

「蓮くん、だましたの?」

 徐々に紀菜ちゃんの目元はきつくなっていく。

「えっと……俺は一応嘘は言ってなかったよ。ちょっと、紀菜ちゃんの言動に合わせてふざけはしたけど、それだけで俺が直接、雪野が女だって言ってなかったよね?」

 確かにそうだった……

「紀菜ちゃんがうまいこと勘違いしただけで……」

「さいてい!」

 鋭く、蓮を恨みがましく睨む紀菜。

「あぁ……ごめん」

 さすがの蓮もひるんで、言葉を落とす。

「私は雪野くんが女の子だと思ったから仲間になるのも問題ないかなって思ったのに……女は私一人じゃないの!」

「まあまあ落ち着いて。紀菜ちゃん」

 雪野が紀菜に話しかけると、

「近づかないでくれる、雪野くん」

「えっ!?」

「人形の呪いとかあうか分からないんでしょ。だから近づかないで!」

「あ、うん……」

 初めて会った時のような目を向けられる始末。

 あからさまに自分が男だと分かった時から、紀菜ちゃんの僕に対する態度が変わった。

「あなたが男と分かった以上、必用以上になれ合うつもりはないわよ。私は男が嫌いなの!」

 それを聞いて蓮は彼女に聞いた。

「それって、仲間にはなってくれないってこと? 〈怪奇団〉は?」

「それとはまた別よ。私は一度決めた事は曲げないわ。もう自分にしか見えない何かに一人怯えながら暮らすのも、変人扱いされるのもごめんよ。さっきも言ったように私は蓮くんあなたの事を利用する。それでいいわよね」

 潔い彼女は自分なんかより、よっぽどしっかり者のような気がする……

「うん、それならよかった……」

 蓮は安堵した様子で息を吐く。

「男嫌いって、前に二人で話し合った時言っていたから、雪野をこのまま女だと思わせておけば安心できるかなって考えたんだけど、さすがに無理があったよね」

「蓮くん、それで僕が男だって事いつまでも紀菜ちゃんに言わなかったの?」

「うん。そうだよ……ってことで、結果的によかったから今回の俺のおふざけは許してくれるよね? 二人とも」

 蓮のニヤついた笑顔が妙に腹立たしい。

「ずうずうしいわよ!」

「何か、いまいち納得できないんだけど……」

 二人でそう返すと、蓮はひょうひょうとした態度でこう宣言した。

「うん。二人が許してくれたってことで、これからこのメンバーで頑張ろう! よろしくね。雪野、紀菜ちゃん」

「はいはい」

「あーはい、よろしく……」

 そう二人で呆れた様子でもう仕方ないと流すように答えた。

 その後一人で先頭を切って歩き出す紀菜は、自分の事を嫌っているのか、そうでないのかよく分からない……

 雪野が紀菜の後を追って、歩き出した時に蓮は彼に語りかけた。

「あはは、紀菜ちゃんは男嫌いだからああいう態度とるけど、素直じゃないだけで仲間ができたこと自体は嬉しがっていると思うよ。だから雪野は嫌われているとかは気にしなくていいからね」

 まるでこちらの考えている事が分かるかの様にそう言われ、そんなに自分は分かりやすいのかと今までの何度からある経験から思った。

「お前、エスパーか何か?」

「あ、当たった? 雪野くんはそんなしょうもないこと考えそうだなーって思って」

「しょうもないって……」

「別にね。相手に嫌われようが、嫌われまいが自分がそうしたい様にすればいいじゃん。当たって砕けろ的な感じで」

「……だから蓮くんは、そんなにしつこいのか」

「それは、褒められているって事でいいよね?」

と、蓮が言ったところで、先に前をグングン進んでいた紀菜が急かした。

「何ゆっくり歩いているの? さっさときなさいよ、二人とも」

 それを聞いて、何だか一緒にいろと言われている気がしてうれしくなった。

「はーい。紀菜ちゃん」

「うん」

 蓮と雪野は返事をして、紀菜の所まで速足で向かう。

「ほらね。紀菜ちゃんも俺たちといたいと思っているんだよ」

 そこで紀菜から声がかかる。

「何話しているのよ!」

「なんでもないよ~」

 と三人がそろったところで帰りは蓮から提案された今後の〈怪奇団〉の活動について話し合った。

 そして田んぼ道が終わる端まで来て、雪野は二人と分かれた。

「さようなら、二人とも」

「うん、雪野また明日ね」

「さようなら」

 こうして、〈怪奇団〉の仲間になった雪野の日常は変化を見せた。

 毎日のように、あの二人と登下校を共にし学校でもなるべく一緒にいるようになった。

 だが……それによって休み時間や放課後、雪野にとって、とっても厄介な時間がその時から訪れ、彼は自分で固く決めたはずの一人ライフを貫けなかった事を後悔したのだった。

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