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人形怪奇  作者: 詞記ノ鬼士
第一章 夜ノ月琥珀のその虫は
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022 こうして彼らは

[JHSA]の迎えのワゴン車には、今回の任務で一役かった落ち着いた雰囲気の女性が乗っていた。彼女に運転を頼み季流は助手席で楽にしていた。雪野達も後部席に座りぐったりと疲れた顔を見せており道中、彼らは眠りに落ちた様で静かに吐息だけ聞こえてくる。

「二人とも二度寝はできないとか人前では寝られないと言っていたのにもう熟睡の様です」

「お疲れのようですね」

「まあ、家族旅行と言って、連れてきたものの三日間の怪奇任務していたものですからね。さすがになれない場所で何日もいて、あまり家を出ない二人には堪えたでしょう」

「そうなんですか……ところで季流さんは、この後[JHSA]へと寄るんですか?」

「まあ、はい。一度その子達を家に送ってから私は[JHSA]に向かおうと思います」

「別にこのまま家にいかれてもいいのですが……あなたも疲れている様です。【精霊】を通して見ていてレポートは私が仕上げておきましたから、大丈夫ですよ?」

「そうなんですか。私が書くものは大体、日本語が下手とかいい加減だと言う理由で書き直される事が多いので、ありがたいです」

その後、彼女はどこか言いにくそうというか悩ましい顔をしてこう告げた。

「いえ……ただ……あなたが支部へと戻れば明慎さんからお咎めがあるでしょう」

「えっ?」

「私が【精霊】を通している間、支部にも情報がいき全ての行動を把握していました。あなたが発言した問題行動も全てです」

 問題行動とは[JHSA]の情報をむやみに他者に漏らした事を言っているのだろう。

「あはは、それはそれは……困りましたね。さすが〈精霊使いの少女〉です」

「アハハ……一応、忠告しておきました」

季流は面倒くさい後始末があった事にうんざりし、ため息をついた。

「はい、ありがとうございます……」

 この後、彼女は不意にこう呟いていた。

「彼女、本当に私とよく似ていました。やがて私達の組織に来てくれたらいいと思います」

「まあ、確かにそうですね。まだまだ人手が足りませんからね祓い屋もサポーターも」

そんな仕事上の話をしつつ季流は明慎へとどんな言い訳をしようか考えたが、めんどくさくなって適当でいいやと開き直っていた。


[JHSA]中部支部に到着し、組織の規則に反する問題について季流は思った通り既にその場にはいなかった彼に叱られたのだった。

「ちょっと、季流くん。お前、俺に何か言う事はないか?」

「いいえ、特に……ありませんが……」

「ないわけないよな~」

「ありませんよー、たぶん……」

 微笑を浮かべ彼は真剣にしっかりと嘘を答えた。モニター上の明慎は彼を見据え発した。

「そんなわけあるかぁ! 嘘つくな。思い当たる節があるって顔しているからな」

「アハハ……そうですか」

 季流は真顔で画面から顔を背けた。そんな彼に呆れた様子で明慎は言葉を並べていった。

「秘密情報流出および一般人への能力使用。展示物である銅像の破壊の苦情。それから車の破損……」

「あ、最後のは仕方ない事ですよ」

「じゃあ、それ以外は……」

「ああ~それも仕方がない事ですよ」

「全部を仕方がないですませるつもりか、お前は?」

「もう、すいませんって。ほんとめんどくさい人ですね」

「お前なぁ……まあ、無事任務はうまく解決したみたいだからよかったな……」

「ええ。三日間、有意義な家族旅行でしたよ。おかげさまで」

「それは何より」

「あーそれで、妹との買い物はどうだったんでしょうか?」

「ああそれな。結局妹の体調がよくなくて富山じゃなく東京で合流する事になったんだけど、もう半日も一緒にいられたから大満足だよ。季流お前のおかげだ、本当にありがとう」

「うわ、何か……色々気になるというか、あなた一人で最初からここに来ていたんですね」

「まあな、気にするな。昨日ようやく体調よくなったみたいだし。お前が起こした問題を片づけるため急に仕事入って、妹と別れる事になった事とか気にしなくていいからな……」

「……」

「本当に、本当に今回はありがとな! 気にするなよ?」

「ウザいですよ、気にしてほしいんですか? 私のせいだと明らかに訴えていますよね?」

「あはは。そんな事はない訳ではないが、さておきこの後はどうするんだ? 元々休みだったろ? 家に帰って休暇とるか?」

「いえ、またしばらく任務といきましょうかと……」

 そこには、ニコリと微笑む仕事狂の顔が浮かび上がっていた。



夜ノ月村の任務から一瞬間程たち雪野達はいつも通りのんびりと平和に過ごしていた。そしてまた彼らは季流によって次の怪奇任務へと連れていかれるのだ。

「今日も諦めて、楽しい楽しい任務へ行きましょうね、雪野くん」

「いや、全然楽しくないんですけど!」

「諦めましょう、雪野さん」

「またそれかぁあああああああ!」

「こんな春真っ盛りのいい季節に家の中で、ぐうたらしているなんてもったいないですよ。もう庭の桜の花びらも少し開いています。それに……二人に手紙が届いています」

 家から出る前、車の中で季流からある手紙を渡される。また依頼者からの手紙かと思った雪野だったが、手紙の住所に夜ノ月村と書かれている事から花月も自分もハッと、お互いに顔を見合わせその手紙を開いたのだ。そこにはこう書かれていた。


拝啓、桜が満開に咲き誇るこの季節。皆さんはどうしている事でしょう。あなた方がもし助けに来てくれなければ私はどうしていたのだろうと、ふと思うこの頃です。

 あの事件が嘘であったかの様に私は今、幸せです。みんなが私を受け入れてくれるわけではないかもしれない。でもそれは当たり前の事で前よりはずっと私への理解はしてくれている事で、皆さんと別れた後も村の人達ともうまくやれています。

父とは前よりも話すようになり、母や姉達の愚痴を私は聞いています。母とはまだうまく話せていませんが姉達と混じって一緒に料理を手伝ったりしています。裕子姉さんですが家を出ていくと言い出し、父とやはり言い争いになったのですが、ちゃんとやりたい事があるそうで父を説得し村を出ていく事になりました。

 私は今、皆さんのおかげで普通の生活をおくれる様になりました。感謝しています。あなた方がいたからこそ私は色んな事に気づき、彼らと自分と向き合う事ができました。本当にありがとうございます。季流さん、雪野さん、花月さん、お元気で。

                               夜ノ月 小羽より



「小羽さん……」

「元気でやっていそうだな。よかったな、花月?」

「はい、よかったです!」

 花月が喜ぶ中、季流はさらりと呟いた。

「そういえば、雪野くん今回は人形を落とさない様に。それとちゃんと持ってきましたか?」

「当たり前じゃないですか。早々これがなくなったら困りますよ。いろんな意味で……」

 雪野は腰に掛けていた和人形を袋から取り出して確認させた。

「ほら、ちゃんとありますよ。だってこれは、絶対に俺の傍から消えはしないんだから」

 苦笑を浮かべる彼の言葉通りこれからも、その呪いの和人形は彼の傍にあり続ける――

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