006 任務帰りの雪野たち、ショッピングセンターへ
「あー、終ったー」
車の中に乗り込んだ雪野はそう言葉を漏らした。
「雪野、今日は簡単に終わってよかったね」
「ほとんどが、季流さんが先頭切ってやってくれたおかげで早く追われたわね」
「ああ」
雪野たちの任務は簡単なもので、ほとんど季流が《霊繰畏》で蓮が破力で【変物】を祓って終わりの仕事だった。
「皆さん、急ぎますよ。春夢へのプレゼントを買いに行きます。それぞれどんなプレゼントにするか今のうちに考えておいてくださいね」
そう言って、季流はエンジンをつけ、車を走らせた。
「プレゼントか。どうする雪野?」
「え、えっと……お花とかはどう、かな?」
「お花かぁ。定番だよねぇ……」
蓮はつまらなさそうな顔をとちらつかせていた。
「なんだよ。その反応……」
「雪野くん、春夢ちゃんにあげるんだからもっと、いろいろ考えてみたらいいんじゃないかしら。実際にショッピングセンターにある物を見たりしてから決めなさいよ」
「うん。それがいいね」
「分かったよ。二人とも」
雪野は続けて二人に聞いた。
「それで、二人は何にするつもりなの?」
雪野はまず蓮と目があった。
「俺は、今は秘密だよ。言っておくと雪野も喜ぶようなプレゼントにしようと思ってるよ」
「なんで、俺が喜ぶんだよ」
「それは、だから秘密ね。楽しみにしていてよ」
そして、目線を紀菜へと向けると彼女は次に答えた。
「私はまだ決めていないけど季流さんが言った様に、かわいい物で考えてみようと思うわ」
「そうか」
雪野は顔を元に戻し横にいる花月へと目を向けた。
「花月、お前はどうするんだ?」
そう聞くと花月は悩ましげにこう言った。
「う~ん、まだ何にするかは決まってはいないんですが、なるべくすごいのにしたいです」
「すごいって、どんなのだよ」
「質よりも量で勝負でいきたいです」
「ちなみに皆さん、私が皆さんにそれぞれ出せる予算は二千円ですから、そのつもりで」
すると蓮は言った。
「え、季流さんがお金出してくれるんですか? 別に自腹で構わないんですけど……」
「なになに春夢の事で祝ってくれるんですから、それくらいは自分で出しますよ。雪野くんも私に借金をしている身であればその方がいいですよね?」
「あー、はい。それがいいですね~」
「なに、借金って?」
「えっとそれは……」
蓮の問いに答えたのは季流だった。
「実は木崎家の修復を行うにしたがって、費用はすべて私が払いました。本来、その家はやがて、その主となる雪野くんの物になります。だから、彼には私に返済をする義務があるんですよ」
「お兄さん、そんな話は二人にしなくていいですって……」
「別にいいじゃないですか。秘密にするほどの話じゃないでしょ」
「う~ん、いいのか……?」
そこで蓮が言ってくる。
「雪野大変だね。それでやがて借金返済しなきゃいけない訳だけど、これからどうするの?」
それに答えたのは季流だった。
「それは心配ありませんよ。雪野くんが任務に出る事で、その借金は少しずつ返済されています。後、数年したら払い終わりますよ」
「でもそれとは別に、生活費も借金のうちに入って来るんですよね」
「はい。もちろん」
「お兄さんは厳しい……」
雪野は呻いた時、彼はこう言葉を漏らした。
「皆さん、そろそろつきそうですね」
外を見てみると、ショッピングセンター桜と書かれた建物が見えてくる。
「そうですね」
雪野は家に届けられる広告を見ては買い物にいく場所を変えている。
一番よく行くのは今日来た桜ではなく、木崎家からすぐ近くにある町の商店街だった。
今日、コスモでは野菜が安い。
その事をしっかり雪野は頭に入れていた。
こうして雪野たちはプレゼントを買うべく桜へと足を踏み入れた。
時刻は一時前というだけあって、人の数はそれなりに多かった。
まず入り口に目につくのはパン屋さんだった。
「いい匂いがするね」
蓮が呟く。
確かにいい匂いがする。
雪野はパンを眺めて、こう考えた。
春夢が喜びそうな物、春夢が喜びそうな物……
「パンをプレゼントにするのは……だめそうか」
「そうですか? 私なら喜んでもらいますけど。できればいっぱいだと嬉しいです」
「お前はな。春夢はお前みたく食い意地は張ってないし、大食いじゃない」
「もう、それは分かっていますよ。ただの私の意見です。私は物よりも食べ物をプレゼントされた方がうれしいって事です」
「そうか。お前っぽいプレゼントとしてはいいかもな」
「そうですか? 少し考えてみます」
と、そこで季流は言う。
「さて、ここから別行動にしましょうか。待ち合わせはこのパン屋さんの前って事でいいですかね」
「はい」
「そうしましょう、お兄さま」
蓮と紀菜は季流をみて頷いた。
雪野たちはそれぞれ分かれてプレゼントを探す事になった。
「それじゃあ、いろいろ見てくるね」
「私は二階の方に行ってみるわ」
「おう」
蓮と紀菜が先に動きだした様で雪野は後方からその姿を伺い、蓮がぼそりと紀菜に話しかけている光景が目に入っていた。
「紀菜ちゃん、今日は別行動とかでも大丈夫かな?」
「え、どうしてそんなこと言い出すの?」
「プレゼントはみんなにも秘密にしておきたいから、それが紀菜ちゃんでもね。後での楽しみってことにしておきたいんだ」
「はあ、あなたはまた何を企んでいるのかしらね。見張っておきたい気分だけど、私もプレゼントを選ぶのに時間がかかると思うから今日の所は別行動で行きましょうか。ちょっと、そこらへんに漂う【変物】が気になるけど問題ないわ……」
「紀菜ちゃん、ありがとう。もし、危険な【変物】と遭遇した時は逃げて俺を探してね」
「広すぎて、簡単には見つけられないと思うけど……まあ、そうする事にするわ」
「では、別行動開始だね」
「ええ。それじゃあ、お互いに気を付けて」
「うん」
そんな会話が聞こえその後、止めていた足を動き出す二人の姿を捉える。
パン屋さんのすぐ近くには、二階へと上るためのエスカレーターと階段があった。
一階にはパン屋さんでてからすぐに道が二列あって、中央には細々とした店が連なり、右側には飲食店や美容院、ペットショップなどがあることを知っている。
そして左には大規模にいろんな日用品を扱っている所があった。
蓮はそこへとまず進んでいったのが見える。
「雪野さん、一緒についていってもいいですか?」
「いいけど、まず先にスーパー寄っていいか?」
「はい」
スーパーは左側の奥の方にある。
雪野たちはそこに向かっていった。
途中、日用品売り場の道を挟んで右側には花屋さんを見かける。
一人残された季流も後ろで静かに動き出した。
「さて、私も探しますか……花以外でかわいい物、花以外でかわいい物……」




