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彼女が死ぬ3日前  作者: leemero
第②章「約束の場所」

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第十八話 「倉庫街」

眠れなかった。


時計の針が進む音だけが部屋に響いている。


六月十四日。


午後六時。


約束の場所。


工業地帯の倉庫街。


その住所を調べてから、胸騒ぎが止まらなかった。


そして何より。


記憶。


雨の交差点。


サイレン。


赤色灯。


倒れている蒼井萌。


あの場所は倉庫街の近くだった。


偶然とは思えない。


絶対に何かがある。


翌日。


学校へ向かう足取りは重かった。


教室へ入る。


蒼井萌は既に席についていた。


窓際。


いつもの場所。


いつもの横顔。


だが。


最近のあなたには分かる。


無理をしている。


笑顔も。


平気そうな態度も。


全部。


「おはよう」


声を掛ける。


萌が振り返る。


少しだけ驚いた顔。


「おはよう」


笑う。


いつもの笑顔。


けれど目は笑っていない。


あなたは胸が痛くなった。


授業中。


あなたはノートを取るふりをしながら考えていた。


六月十四日まで残り六日。


長いようで短い。


何もしなければ間に合わない。


そんな気がしていた。


放課後。


萌はすぐ帰った。


最近はいつもそうだ。


窓際で雨を見ることもなくなった。


誰かに追われるように。


何かから逃げるように。


急いで帰っていく。


あなたは追わなかった。


今日は別の目的がある。


駅へ向かう。


電車へ乗る。


三十分ほど揺られる。


窓の外の景色が変わる。


住宅街。


商店街。


そして工場地帯。


やがて目的の駅へ着いた。


人が少ない。


空気が違う。


鉄の匂いがする。


地図アプリを頼りに歩く。


十分。


十五分。


景色がさらに寂しくなる。


古びた工場。


閉鎖された倉庫。


人気のない道路。


夕方だというのに妙に暗かった。


そして。


見つけた。


住所と一致する建物。


大きな倉庫。


シャッターは閉まっている。


周囲に人影はない。


静かだった。


あまりにも。


あなたは周囲を見回す。


何もない。


ただの古い倉庫。


そう思った時だった。


足元に何かが落ちている。


白い紙。


拾い上げる。


折り畳まれている。


開く。


中には文字。


震える手書きだった。


『たすけて』


短い一言。


それだけ。


だが。


あなたの背筋に冷たいものが走った。


誰が書いた。


いつ書いた。


なぜここにある。


その時だった。


ガシャン。


金属音。


倉庫の裏側から聞こえた。


あなたは顔を上げる。


誰かいる。


直感だった。


静かな倉庫街。


風の音。


遠くの工場音。


そして。


誰かの気配。


ゆっくり歩き出す。


倉庫の角を曲がる。


そこには――


誰もいなかった。


ただ。


地面に新しい足跡が残っている。


雨は降っていない。


なのに濡れた足跡。


まるで。


さっきまで誰かがいたみたいに。


その足跡の先。


倉庫の壁に文字が書かれていた。


赤いペンキ。


乱暴な文字。


『また間に合ったんだね』


あなたの呼吸が止まる。


知っている。


この言葉を。


黒板。


メッセージ。


知らない番号。


全部と同じだ。


誰かが見ている。


ずっと。


最初から。


風が吹く。


その瞬間。


背後で足音がした。


あなたは振り返る。


だが。


そこには誰もいなかった。



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