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彼女が死ぬ3日前  作者: leemero
第①章「六月の雨」

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第十三話 「約束」

午後五時四十三分。

その数字だけが頭の中に残っていた。

雨は止まない。

蒼井萌は校門の屋根の下で俯いている。

スマートフォンを握る手は小さく震えていた。

『約束、忘れてないよね?』

たった一文。

それだけなのに。

まるで首元へ刃を突き付けられているような重さがあった。

あなたは萌の横顔を見る。

聞きたいことは山ほどある。

誰なのか。

何の約束なのか。

なぜ怯えているのか。

だが今は聞けない。

聞いたところで答えてくれない気がした。

「帰ろう」

萌が小さく言った。

「送る」

「いいよ」

「よくない」

萌は苦笑した。

「頑固」

「知ってる」

その返事に、萌は少しだけ笑った。

ほんの少しだけ。

二人は駅へ向かう。

雨の中を歩く。

傘を叩く音だけが続く。

やがて駅前へ着いた。

人通りは多い。

だが萌は落ち着かない様子だった。

何度も後ろを振り返る。

何かを警戒しているように。

「蒼井」

「なに?」

「最近、誰かに付きまとわれてるのか?」

萌の足が止まった。

一瞬だった。

本当に一瞬。

けれど確かに止まった。

「……なんで?」

「なんとなく」

あなたは誤魔化す。

通知を見たなんて言えない。

萌はしばらく黙っていた。

そして。

「違うよ」

そう答えた。

だが。

その声に自信はなかった。

電車が来る。

ホームへ人が集まる。

萌は乗車口の前で立ち止まった。

「じゃあね」

「また明日」

言った瞬間。

自分で違和感を覚えた。

また明日。

その言葉は本来なら当たり前の挨拶だ。

けれど今のあなたには違う。

明日が来る保証なんてどこにもない。

萌は少しだけ目を細めた。

「うん」

そして電車へ乗り込む。

扉が閉まる。

ゆっくり動き出す車両。

窓越しに見える萌の姿。

その時だった。

萌がスマートフォンを取り出す。

画面を見る。

そして。

明らかに顔色が変わる。

電車はそのまま走り去っていった。

帰宅しても落ち着かなかった。

食事の味もしない。

テレビの音も頭に入らない。

部屋へ戻り、ベッドへ座る。

時計を見る。

午後八時二十三分。

何かがおかしい。

六月七日。

最初のループでは。

この時間にはもう事故が起きていた。

交差点で。

雨の中で。

蒼井萌は死んでいた。

なのに今は違う。

まだ生きている。

つまり。

未来が変わった。

あなたは息を飲む。

初めてだ。

初めて運命が変わった。

ならば。

救えるかもしれない。

本当に。

蒼井萌を。

その時だった。

スマートフォンが震える。

画面が光る。

知らない番号。

あなたは眉をひそめる。

こんな時間に誰だ。

恐る恐る開く。

すると。

メッセージが一件だけ届いていた。

差出人不明。

本文は短い。

『余計なことをするな』

あなたの背筋を冷たいものが走った。

部屋の空気が急に重くなる。

心臓が大きく脈打つ。

なぜ。

どうして。

誰が。

スマートフォンを握る手に力が入る。

そして。

二通目が届いた。

『次は君も巻き込まれる』

窓の外で雷が鳴った。

白い光が部屋を照らす。

雨はまだ降り続いている。

そしてあなたは初めて知る。

この六月は。

蒼井萌だけの問題ではない。

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