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推しに夢中  作者: 虚月 悠奈


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42/47

42.推しを守り隊

杏さんの好きな人は、勇者である。

そう結論づけた華は、次にやるべきことを決めていた。

それは、某漫画雑誌に掲げられている、努力・友情・勝利の「努力」の部分だった。


元来、華は努力することが苦手である。

今の高校は推薦で入学したため、受験勉強をしていない。

資格を取るための勉強が嫌で、専門系の高校ではなく進学校を選んだ。

通学の時間を減らしたかったから、家から1番近い高校を選び、徒歩通学。(15分)

学期末のテストも無理をせず、かといって進級できないことはないように、いい塩梅の成績を保っていた。

部活も特に入らず帰宅部。

頑張ることをあまりしてこなかった人生だった。

そんな華が初めて頑張ろうと思ったのが、今だった。


「お願いします!私に戦い方を教えてください!!」


外出許可を取り、ソフィアの部屋で頭を下げる華。

ソフィアは目を丸くした。

エヴァはソフィアの足にしがみついている。

ウィルは起き上がれるようになるまで回復しており、ソファに体を預けてこちらを見ている。


「また、急だな……。たしかに今まで色々あっただろうから……。」

「はい!自分の身は自分で守りたいです!というのもあるんですが、その、烏滸がましいかもしれないですが、私も、大切な人たちを、他のみんなを守れるようになりたくて。」


最初は乗り気じゃなかったものの、華の誠実な態度に、ソフィアはとうとう折れて華に稽古をつけてくれることとなった。

ソフィアが渋々だったのには理由がある。

人間で、特に能力が無さそうだからというだけではない。

華に戦闘のセンスが無さそうだからであった。


戦闘の才能が少しでもある者は、自然と体が動く。

対して華はこれまでの戦闘で、いつも傍観しているだけだった。

もしくは逃げ回るのみ。

逃げるのも立派な戦術なのだが、咄嗟に立ち向かうことができない体というのは、ソフィアからすると致命的であった。

だが、華がこれまで何度も危険な目にあっているという事実は変わらない。

護身術だけでも身につけられたら御の字だと、ソフィアは前向きに考えることにした。


「腰が引けているぞ。」

「っはい、すみません!」


獲物の代わりに少し柔らかい棒を持ち、華は構える。

しかしどうもその姿が様にならない。

ソフィアという完璧な例を見せてもらっても、ソフィアに手で直してもらって正しい姿勢を取ろうとしても、気がつけばどうしてもへっぴり腰になってしまうのだった。

これでは上手く力を入れることができないし、見た目も不格好で舐められてしまう。


ならばと剣を避ける訓練に切り替えてみる。

ところが、何故かソフィアが剣を振り下ろす方向に華は動いてしまう。

圧倒的に動体視力が悪い。

これが本物の剣だったら、華は何度も切られてしまっているところだ。


「何度も教えて貰ってるのに、上手くできなくてすみません。」

「……謝ることは無い。私も教え方がうまいという訳では無いからな。」


訓練を辞める気は無いものの、何度も落ち込む華をソフィアは元気づけた。


「たまには訓練を見る側に回ってみるのはどうだろう?これからエヴァと戦ってみるから、見ていてくれ。」

「はい!」


エヴァは嬉しそうにソフィアと向かい合った。

そして2人の練習試合が始まる。

ウィル曰くこれはじゃれているだけ、らしいのだが、華は2人のスピードに目が全くついていけず、目の前で何が起こっているのか全く理解できなかった。

気がついた時にはエヴァがお腹空いた!と叫んでいて、では食事にしようかとソフィアが微笑んで、2人の試合は終わっていた。


ソフィアはだいぶ手加減していたようで、エヴァの体には傷一つ付いていなかった。

エヴァが肩で息をしているのを見て、2人は本当に戦っていたのだと理解する。

2人の動きから何か得るどころか、さらに自信を無くしてしまった華。

そのあと4人で食べたハンバーグは、あまり喉を通らなかった。


さらに華を追い込んだのはその数日後。


「華ちゃん、最近ソフィアさんに稽古つけてもらってるんだって?」

「あ!私も聞いた!どう?すごい技とか使えるようになった?」


久しぶりに杏と恵とヴォイドの4人でご飯を食べることになり、そこで2人に興味津々で話を聞かれた。


「いいなー!私もなんか技使えないかな〜。一般人だと難しいかな?」

「私も治癒魔法以外はからっきしだから、少しは戦えるようになってみんなの力になりたいな。」


恵と杏にそう言われて、気がつけば3人でソフィアに特訓をお願いしていた。

それぞれソフィアから別メニューを渡されて、それをこなす。


「お前の治癒魔法はかなり質が高い。それを応用して、戦闘に活かせるのではないだろうか。」

「なるほど。」


「恵、君は未知数だが柔軟性がある。先程教えた構えも完璧だし、次はこの剣さばきに挑戦してみないか?」

「やってみます!」


華とは違って、杏と恵はそれぞれの長所を活かして、みるみると力をつけていった。

焦らなくていい、人それぞれペースがあるのだからとソフィアに慰められた華。

その言葉が、余計に華の焦燥を掻き立てた。


Xデーがだんだんと近づいてくる。

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