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推しに夢中  作者: 虚月 悠奈


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35/41

35.推しよりも強い人

華たちの元に杏が到着し、すぐに呪文を唱え始めた。

これで男の子を助けられると、華は色んな感情が込み上げてきて涙を零した。

杏は口で呪文を唱えるのを継続しながら、華に向かって頷き、目で安心してと伝えてきた。

それに華も頷く。


「もう大丈夫だよ。このお姉さんはボロボロだった私の体も治してくれた、ほんとにすごい人なんだ。お兄さんのことも、絶対に治してくれる。」


華はそう言って、服で丁寧に血を拭ったあと、右手で女の子の頭を撫でた。

女の子が泣きながら頷く。

両手で男の子の手を握りしめていた。


華たちの近くで、ソフィアはサミュエルに攻撃を仕掛けていた。

その攻撃に一切迷いはなく、サミュエルは焦っていた。


「お前、まさか本当に僕を殺す気じゃないだろうな。僕は」

「ああ、そのまさかだ。私の子供たちに手を出して、生きて帰れると思っているのか。」


サミュエルは心の中で舌打ちした。

この子供たちに、ソフィアがこんなにも肩入れしているなんて思ってもいなかった。

ソフィアは元々ヴォイドと同じ側のやつだ。

こんな人間みたいなおままごとを、本気でしているなんてと嘲笑う。

頭をフル回転して、打開策を思いついた。


「いや勘違いだ。僕は保護しようとしていただけだよ。」

「何を……」

「あの捕虜に今にも殺されそうだったから!助けただけだ!なぁ、ほら見てみなよ!彼女!今も凶器を手に持ってるよ!!」

「戯れ言を……」

「いいのかほら!彼女の近くに大切な子供を残したままでさ。ほら今にも殺されちゃうよぅ。」


はなからサミュエルのことを信用していないソフィアは、その発言が虚偽のものであることをわかっていた。

にも関わらず、子供たちのこととなるとやはり少し気になってしまう。

思わず一瞬だけ後ろを振り返ってしまった。


その一瞬のすきに、サミュエルはニヤリと笑う。

タブレットを不思議な力で引き寄せ、ものすごい勢いでタップした。


ソフィアの視界に子供たち、それを治療する杏、そして華の姿が入る。

華が右手で女の子の腕を拘束して、左手に持っているナイフを振り上げる。


「くそっ、なにをしている!」


ソフィアはサミュエルに背を向けて、その場から飛躍した。

華が持っていたナイフを剣で弾く。

その衝撃が華の腕へと伝わり、華は自身の腕を抱えて蹲った。

杏がびっくりした顔でその一部始終を見ていた。


女の子がソフィアの服の裾を掴む。

泣きながら、母へと訴えた。


「……お姉さんが、このお姉さんがお兄ちゃんを殺したの。」


その言葉にソフィアが狼狽える。


「何を言って……」


ソフィアの剣の切っ先が思わず華の方向へと向いた。


「だから()()()()()()の言ってることが正しいの。()()()()、悪いやつをやっつけて!」


その言葉の違和感にすぐに気が付き、女の子の頭を撫でて、サミュエルに向き合った。


「私の娘に何をした。」

「だから僕は助けただけだって。」

「嘘をつくな。この子は今正常ではない。」


蹲っていた華が痛みを我慢しながら、顔をあげる。

ソフィアに聞こえるよう、自信が今出せる精一杯の声量で叫んだ。


「……タブレット!」


ソフィアはもちろんその言葉を聞き逃さなかった。

サミュエルが動くよりも前に、その手のタブレットを奪い取る。

そして宙へと放り、剣で真っ二つにしようとした。

それをみた華の脳裏に、先程データを消去しようとして倒れた時のことが浮かぶ。


「だめっっつつ!」


ソフィアの剣が、タブレットに触れる直前でギリギリ止まる。

床にダイブする直前で、タブレットを掴んだ。


「ちっ。そのまま壊していれば子供を自分の手で殺す、哀れな女の姿が見れたのに。」


サミュエルの言葉にソフィアが静かにキレた。

ソフィアの頭の中でプツンと確かに糸が切れたのだ。

それでも表には出さない。

感情任せに剣を振るって、相手のドツボにハマることだけはしない。


───やっぱり、ナンバーワンの風格は違う。


華はソフィアに感心した。

ソフィアは幹部の中でもナンバーワンの実力者で、戦えば、魔王の次に強い。

華の推しであるヴォイドですら、力ではソフィアに勝てないのだ。

強くてかっこよくて、女性の気持ちをわかってくれている。

そんな彼女の魅力が、華の世界では何千人もの女性を虜にしたのである。


ソフィアが叫ぶ。


「すまないが!皆10秒だけ目を閉じていてくれ。杏!目を閉じていても治療できるか?」


その言葉に杏がOKサインを出す。

ソフィアが頷いた。


「では今からだ!1!……2!……」


ソフィアがカウントダウンを初めて、すぐに華たちは目を瞑った。

暗闇の中で、音と匂い、肌の感触のみが研ぎ澄まされていく。

鋭い金属の音に何度も目を開けそうになったが、必死に目を開けないよう務めた。

9秒あたりで肌に圧を感じる。

とても重くて冷たいけれど、何故か優しさも感じる。

ソフィアの技だろうか。


「ありがとうみんな。もう目を開けてもいいぞ。」


ソフィアの言葉で目をあけると、急な光に目が眩んだ。

華達の目の前には、息一つ乱れていないソフィア。

そして、頭から血を流して床に倒れているサミュエルの姿が見えた。

腕や足も縛られている。

目の前に立つ女性の圧倒的強さに、華は釘付けになった。

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