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推しに夢中  作者: 虚月 悠奈


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32/41

32.推しとポルックス

がちゃり。


扉の向こうから人が入ってくる。

それが誰なのか気づいた瞬間、兄は怒りから手のひらの力を大きくする。

対して妹は怯え、力の放出を止めてしまう。

そのままその場にしゃがみこんでしまった。

均衡していた力が、バランスを崩し、すごい勢いで辺りを揺らして霧散する。

暴発した風のせいで目をつぶっていた華。

目を開けた時、そこに映っていたのは。


「サミュエル。僕はお前を許さない。」


男の子が先程までとは全く違う唸り声で、サミュエルへと言葉をぶつける。

対するサミュエルはいつもと同じように、とても嬉しそうに笑った。


「おやおや、モルモットが勝手に動き回ったらダメじゃないか。」

「死ね。」


男の子は左右それぞれの手から、野球ボールぐらいの光の玉を生み出し、サミュエルに向けて投げつけていく。

サミュエルは涼しい顔で、それらの力の奔流を避けていく。

華も見ているだけではなく、何か力になりたいと思ったのだが、生憎魔人たちのような力はない。

女の子の元へ駆け寄ることしか出来なかった。

近寄ってきた華に短く悲鳴をあげた女の子だったが、直ぐにそれが華だと思い出し、落ち着きを取り戻した。


「大丈夫?怪我は無い?どこか痛いところは?」

「大丈夫。だけど、お兄ちゃんが……」


女の子の目を向ける方向に、華も顔を向ける。

戦いはヒートアップしており、先程の何倍ものスピードで、男の子が技を繰り出していた。

サミュエルはまるで空を飛んでいるかのように、ヒラヒラと攻撃を避けている。

完全に押されていた。

参戦できない悔しさで、華は拳を強く握りしめた。


「私も、行かなきゃ。お兄ちゃんを」


助けなきゃと言葉を続ける女の子。

華は危ないからと女の子を止めようとした。

サミュエルは男の子と戯れながらも、横目で華と女の子を監視し続けていた。

これから自分がすることと、その先を想像して、思わず笑みが漏れてしまう。


「おにいちゃ……」

「来るな!僕がやる。エヴァはお姉さんを守ってて。」

「でも……!」

「いいから。お兄ちゃんを信じて。」


うんと頷く女の子。

華はその子を庇うようにして、サミュエルと男の子の元から距離を取ろうとした。


「なんて美しい兄弟愛なんだ!思わず涙が止まらないよー!」


サミュエルが攻撃を避けながらも、腕で顔を覆い泣いているふりをする。


「でもさぁ、いいお兄ちゃんなら、妹ちゃんの一緒に戦いたいって願いは、叶えてあげないとね。」


先程まで小回りで攻撃を避けていたサミュエルだったが、急に大振りな動きをし始める。

男の子がサミュエルの頭を正確に撃ち抜こうとした時、サミュエルがぐいんと大きく回転しながら、机の上に置いてあったタブレット端末を指先でピックアップする。

男の子の技は、綺麗にサミュエルの真横をすり抜けて行った。

サミュエルは右手でタブレットに何かしらを打ち込む。


「君たち二人に新しいお姉さんだよ。」


突然訳の分からないことを言うサミュエルに、男の子の攻撃の手が止まる。

華も言葉の意味を理解できずにいた。

だが、女の子は違った。

彼女はサミュエルの言葉を完璧に理解していた。


「華、危ないから下がってて。」


女の子から突然呼び捨てで呼ばれ、華の反応が遅れる。


「え……?あ、はい。……?」


思わず敬語で返しつつも、言葉に従って数歩後ろに下がる。

華は女の子をよく観察した。

先程まで怯えていたのにも関わらず、急に頼もしい顔つきになっている。

まるで華を敵から守るように、華に背を向けて堂々と立っていた。


「エヴァ、君も危険だから下がるんだ。2人だけでも逃げて。お兄ちゃんに任せて。」


男の子はそう言うと、サミュエルへの攻撃を再開した。

サミュエルはやはり難なく攻撃を躱す。

そして意味ありげな視線を、女の子の方へと向けた。

その視線を受けた女の子が、手の中に力を込める。

周囲の空気を巻き込みながら、小さな渦が球体の形になる。

そうして出来上がった物を、()()()()()()投げた。


「え、」


衝撃を受けた華の口から、短く音が漏れる。

男の子は目を見開きながら、自身の力でその玉を相殺する。


「エヴァ、一体何を」

「いい加減にしなさい!」


男の子の言葉を、女の子の言葉が遮る。

かなり怒気を込めた声で叫んでいる。


「ウィル、もう子供じゃないんだから。自分の思い通りにいかないからって、癇癪を起こさないで。サミュエル様を、大切な妹を傷つけることは許さない。ふたりは私が守る。」

「何を言っているんだ、エヴァ。」

「気に入らないのはわかってる。私を姉だって認めてくれないことを。けど、ちゃんとお姉ちゃんって、呼びなさいよっ!」


女の子が地面を蹴る。

ものすごいスピードで男の子の前へと跳躍し、右腕を思い切り振り下ろす。

男の子はそれを躱す余裕がなく、左腕でガードした。

普段の妹からは想像できない腕力に、男の子は驚愕する。


それを皮切りに、先程までの男の子とサミュエルの戦いが、兄妹(姉弟)の戦いへと変わってしまう。

華は2人のことを止めようと1歩踏み出した。


「ふふっ。彼女、君よりも拒絶反応がなくて操りやすいね。」


華の耳元で悪魔が囁いた。

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