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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
5章 悪党は仇なす者に容赦はしない
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第14話

今晩もツバキは酒場で酒を浴びるように飲んでいた。


連日飲んでいるにも関わらず一切潰れる事が無く、下心を持った男どもは毎晩のように撃沈していった。


でも諦め切れない程の色気が男どもを誘惑する。

それにツバキの酒の席はいつも楽しい雰囲気に包まれていた。


「お姉ちゃん。

迎えに来たよ」


結局断り切れずに毎晩付き合わされているアンヌを、シンシアが迎えに来るまでがルーティンとなりつつあった。


「シンシアちゃ〜ん。

ありがちょう。

だいつゅき〜」


「はいはい。

わかったから帰るよ」


「うん、きゃえりゅ〜」


この愛くるしいアンヌの姿も男どもを毎日酒場に向かわせる要因になっている。


「師匠。

あんまりお姉ちゃんにあんまり飲まさないでもくださいよ」


アンヌをおぶりながらシンシアが言ってもツバキはどこ吹く風だ。


「なーに。

いいじゃないか。

アンヌも楽しいだろ?」


「うん、たのちぃ〜」


「そう言って今日の朝だってお姉ちゃん後悔してましたよ」


「それも醍醐味だよ。

愛弟子もあと2年したら分かるよ。

一緒に飲むのが楽しみにしてるよ」


「はいはい、二年後ね」


「約束だよ」


「わかりました。

それで師匠はまだ飲むのですか?」


ツバキは酒場を見渡した。

周りには酔い潰れた村人しかいない。


「相手もいないし私も帰るかな」



アンヌを寝かしつけたシンシアは自分の部屋へと向かう。

その途中部屋から出て来たツバキに呼び止められた。


ツバキの手には酒の入った瓢箪があった。


「師匠。

結局まだ飲んでたんですか」


「いいじゃないか。

部屋で一人で飲むのもいいものだよ」


「はいはい。

それでなんのようですか?

お酒には付き合いませんよ」


「そんな事言わないさ。

それより、君のお友達は放浪癖でもあるのかな?」


「え?

……まさか!」


シンシアは慌ててツバキの部屋に飛び込んで窓の外を見る。

そこには何も無かった。


「師匠!

ヒナタをいつ見たんですか?」


「今さっきだよ。

窓の外にいたんだ」


「どっちに行ったかわかりますか?」


「林の方だね」


林の方をみるが暗すぎてシンシアには何も見えない。


「ほら、あそこだよ」


横でツバキが指を刺す。


「師匠見えるんですか?」


「まあね。

これぐらいの暗さなら余裕だね」


「師匠、お願いがあります」


「なにかな?

愛弟子のお願いなら聞いちゃうよ」


「ヒナタを追いかけたいんです」


「わかった。

では見失わない様にすぐに行こう。

剣も私の予備を貸してあげるよ」


二人はヒナタを追いかけて林を駆けていく。

虫のさざめきだけが聞こる静かな夜だ。


「それでお友達は何処に行くんだ?」


「わからないんです。

昔からああやって急に何処かに行くんです」


「それは病気じゃないのかい?」


「でも、行き先には決まって――」


「何か事件が待っている」


ツバキがシンシアの言葉を先回りした。


「え?なんでわかったんですか?」


「お友達はそれを自覚は?」


「記憶はあるみたいです」


「そうか、あの子もそうなのか……」


ツバキは何か思い詰めた表情で先にいるヒナタの背中を見る。


「師匠、何か知ってるんですか?」


「知ってるって程じゃないけどね。

とにかく追いつこうか」


シンシア自身もヒナタを視界で捉える。

一気にスピードを上げたシンシアがようやくヒナタに追いつく。


「ヒナタ!」


シンシアの呼び声に反応して振り返ったヒナタの目に光は映っていない。


「ヒナタ、何処に行くの?」


その問いにヒナタの目に光が戻る。


「あれ?

シンシアどうしたの?」


「どうしたの?ってそれはこっちの台詞」


「えーとね、行かなきゃいけないんだ」


「だから何処に?」


「あっち」


ヒナタが林の更に奥を指差す。

シンシアにはただ木が生い茂っているようにしか見えない。


「何があるの?」


「うーん……わかんない」


いつもの事ながらシンシアはため息を吐く。


「でもね、聞こえるんだ」


「何が聞こえるんだい?」


シンシアの前にツバキがヒナタに問う。

ヒナタは少し考えてから答えた。


「馬の足音。

それも飛び切り急いでる」


ツバキとシンシアはヒナタの指差した方に視線を移す。


「師匠、聞こえますか?」


「いや、私には聞こえない。

でも君には聞こえているんだね」


「うん」


「なら行こうか。

行かなきゃいけないんだろ」


「うん」


3人は月明かりだけの林を駆け抜けて行った。

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