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世界を生き抜く悪党の美学  作者: 横切カラス
5章 悪党は仇なす者に容赦はしない
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第13話

西都から少し離れた所にある廃村。

そこに入った所で僕の耳にケルベロスの下品な話し声が聞こえてくる。


「そろそろ来る頃かもな」


「そうですね。

楽しみですね」


「しかし昨日は最高だったな。

最初は『やめろ!』とか偉そうに言ってだのに、いつの間にか涙を浮かべて『やめて』とか言い出すし」


「最後には泣きながら、『お願いですやめてください』ですからね」


「あのリリーナがこの俺に懇願してくるなんてな」


「やめる訳無いですけどね」


品の無い三人の笑い声が廃村に響く。

僕はゆっくりと地面を踏み締めながら近づいていく。


「あの完全したお腹の傷を無理矢理見せた時の絶望に満ちた顔も最高だったな」


「俺たちが両手を自由にしたのに、抵抗する所か顔を覆って大泣きでしたね」


「それでも最後のプライドか泣き声だけは必死に抑えてやがるし。

あれは興奮したな。

思わずあの場で犯しそうになったぜ」


「良く我慢できましたね」


「そりゃそうさ。

どうせ犯すなら最高の状態で犯してやらないとな」


「なるほど。

だからその傷を消して欲しかったら今日犯されに来いって言ったんですね」


「そう言う事だ。

あのリリーナが自ら犯されに来て、俺達に自ら股を開く。

こんな興奮する事は無い。

今晩、あのプライドがズタボロになるまでありとあらゆる恥辱を与えてやるよ」


「もし来なかったらどうしますか?」


「その時は来たくなるまで新しい傷を刻みに行くだけさ」


「それで傷の消し方知っているんですか?」


「そんなのある訳無いだろ?

魔道具だぜ。

それを最後に教えてやるのさ。

それで背中に大きく使用済みって刻んでやるよ」


本当に久しぶりの感情だ。

沸々と湧き上がってくるこの感覚。

だけど頭は妙にすっきりしている。


僕の美学には一つだけこの感情と一緒に置いて来た物がある。

それを思い出したよ。


「そんな事にはならない。

君達がリリーナの前に現れる事は二度と無い。

いや、リリーナと同じ世界にいる事さえ認めない」


僕はもう扉の無い入り口から入っていく。

三人は僕の声に反応して鉄仮面を向けた。


「おう、ポンコツじゃねぇか?

一日牢屋体験は楽しかったか?」


僕は廃家の中にある薄汚れたマットを見つけた。


「まさかこの上でリリーナを犯すつもりだったのか?」


「そうだぜ。

あの女はこんな汚らしい所で処女を奪われる。

最高の屈辱だろ」


ふざけている。

リリーナにそんな想いをさせようと考えただけでも許さない。


「それでお前は何しに来た?

謝りにでも来たか?」


「謝る?僕が?

なんで?」


「おいおい。

元はと言えばお前達のせいで俺達はここを追いやられたんだぜ」


「確かに僕が悪いね」


あの時殺しておくべきだった。

そうすればこんな事にはならなかった。


この世界に来て少し甘くなってたのかもしれない。

僕の美学を理解してくれる身内が出来て、こんな欠陥品の僕の近くにいる身内が増えて、舞い上がっていたのかもしれない。


手に入れてはいけない物を手に入れてしまった。

本来、僕は誰にも理解されるはずの無い孤高の大悪党だというのに。


「素直に謝ったら一緒にリリーナを犯させてやるぞ」


3人のゲラゲラと言う笑い声が僕の耳を通過する。


「リリーナは来ないよ」


「そうか。

なら新しい傷を付けに行かないと行けないな」


「傷?

なんのこと?」


「まさか見せてもらって無いのか?

あのお腹に刻まれた俺達の物だという証を」


三人は再び大声で笑いだす。

その笑い声を冷静に聞き流す。


なんか頭の中が何の雑念も無いぐらいクリアだ。


「リリーナが君達の物?

そんな訳無いだろ?

君達が付けたって言う証なんて物は君達の夢物語だ。

そんな夢は僕が消した」


「消した?

そんなのハッタリにもならないぞ。

あの傷は絶対に消えない。

何故ならこの魔道具で付けたからな」


魔道具の短剣を見せびらかすように見せつけてくる。

僕はナイフを投げてそれを弾く。


宙に浮いた短剣を超能力で引き寄せた。

そして、そのまま自分の頬を思い切り切り裂く。

だけどその傷はすぐに消える。


「なっ!

そんなバカな!」


これでいい。

こいつらにリリーナの傷があるなんて、間違った認識を持ったまま死なせてはならない。


「言っただろ?

夢物語だって」


僕は短剣を粉々に破壊する。


「君達の言い分はわかるよ。

復讐する気持ちも頷ける。

でも、それがなに?

僕が報復しない理由になるわけ?

僕がこの憎悪を堪えないといけない理由になるわけ?

ならないよね?

だって君達がこの世に存在する限りリリーナは不幸なんだろ?

なら排除するよ」


「何をぶつくさ言っている?」


「でも、そう簡単に地獄に逃しはしない。

君達に教えてあげるよ。

悪党としての格の違いを。

例え何度生まれ変わっても決して消える事の無い程、いやもう地獄から出て来たく無くなる程の恐怖を」


僕は今どんな顔しているのだろう。

何も感情の無いロボットの様な無表情なんだろうか?


いや、違うな。

頬の筋肉の動き的に笑っているんだ。

飛び切り不気味に。

これから殺戮を楽しむ大悪党が如く。


「お前……

本当にあのポンコツか?」


「僕はヒカゲ・アークム。

今宵はポンコツでいるのはやめよう。

君達を地獄をも生温く感じる程の悪夢へ誘う為に」


「訳の分からない事を!」


三人が同時に襲いかかってくる。

連携は凄く取れている。

だけど遅過ぎる。


『誰が動いていいと言った?』


三人ともピタリと止まって動けなくなる。

僕は竜の鉄仮面を被った奴をみる。


「君は確かこけて顔面陥没だったね」


そいつだけを言霊から解放する。

急に動き出してバランスを崩したそいつの両足首をぶった斬る。


短い悲鳴と共に激しく倒れ込んだそいつの頭を踏み付ける。


鉄仮面と共に頭蓋骨を砕いた音と共に痛みの満ちた悲鳴が足元から響く。

僕は死なない程度に治療をしながら足を沈めていく。


さっきから悲鳴を上げているようだけど、耳障りな音が不快に鼓膜を震わせるだけだ。


「うるさいよ」


うるさく叫び続けるそいつの頭から足をどかして、顔面を蹴って仰向けに変える。


「ねえ、ギロチンって知ってる?」


僕は魔力で生成した特製ギロチンで肩から上をきっちり床に固定する。


「ギロチンって処刑道具の中でも良心的な方だと思うんだ。

だって後ろから首をスパーンだよ。

苦しみも、痛みも、恐怖も感じる暇も無い内に首がコロコロだからね。

でも仰向けに固定したらどう?

ギロチンが迫り来る恐怖が最後の最後までくっきり見えるよ」


また何かを言っているが聞き取れない。


「せっかくの僕の自信作だよ。

しっかり堪能してよ」


そいつは壊そうと必死に剣や腕でギロチンを叩く。

でも、そんな物で僕の自信作は傷一つ付くはずが無い。


『死ぬまで刮目しろ』


言霊によって目を見開いてギロチンの刃を見続けさせる。

そしてなんの前触れも無くひとりでにギロチンが落ちる。


断末魔の叫びが上がる。


ギロチンはものすごいスピードで落ちて、首の皮一枚切れた所で止まる。

そして自動的にゆっくりとギロチンが上がっていく。


そいつは恐怖のあまりガタガタ震えて失禁している。


「たった一回だと勿体無いでしょ?

毎回首の皮一枚分づつ落ちる距離が伸びていくからね。

ああ、心配しなくていいよ。

ギロチンで切れたと同時に治るから、首が完全に落ちるまで体験出来るよ」


見にくい表情を晒しながら僕に何か言おうとした。


『喋るな』


そいつは口をパクパクするが声が出せなくなる。


「喋ってる暇なんて無いよ。

次から次へと来るからね。

さてと――」


僕は残りの二人の方へと歩みを進める。

なんか口々にうるさいけど、聞く気が無いから何を言ってるかわからない。


「君は内臓破裂だったかな?」


蛇の仮面をアイアンクローで頭蓋骨ごと砕く。

そのまま腹にパンチをお見舞いする。


内臓破裂と共に口から大量の血が溢れ出る。


こいつには魔力で作った重たい亀の甲羅をプレゼントしよう。


後ろ向きに倒すと起き上がれなくなってジタバタしている。


「亀って本当に起きれないのかなって思ってたんだけど、本当みたいだね」


僕は胸の中心部分にあらかじめ空けておいた穴目掛けてパンチする。

肋骨が折れる感覚が伝わって、こいつの口から再び血が溢れ出る。


「ネジ山って基本は右回しで締まるように出来てるって知ってるよね?」


巨大なボルトを生成して、ネジ山を切ってある穴に当てて、右回しで思いっきり回す。

勢い良く回ったボルトが胸の中心に当たって止まった。


「これ以上締まったら大変だよね?」


ボルトが自動的にジリジリと右に回り始める。


ボルトの頭の部分に持ち易いように丸いハンドルを付けてあげる。


「逆に左に回すと緩くなるんだよ。

言いたい事分かるよね?」


こいつは慌てて剣を捨ててハンドルを両手で掴んで巨大ボルトを左に回そうとする。


「このボルトは君と同等の力で締まっていくよ。

だけど、強くはなるけど弱くはならないからね。

今以上の力で回し続ける限りは締まらないから安心してね。

あとスピードは一定だから、君が死ぬまでジワリジワリと締めていくからね。

死ぬその瞬間まで苦しみ続けてね」


こいつの顔を恐怖と焦りが塗り潰していく。

決して力を抜く事が出来ない両腕はプルプル震えて、全身から汗が吹き出る。


無駄な努力だ。

内臓破裂して力なんて入らない。


だけど目の前の命の危機に本能的に抗わずにいられない。

人間とはそういう生き物だ。


「お待たせ。

随分待たせたね」


僕は未だに動けない犬の鉄仮面のそれの顔面に拳を叩き込む。


鉄仮面が砕けて、鼻の骨までへし折る。

更に蹴りで壁までぶっ飛ばした。


「君は全身骨折と全身打撲だったね」


言霊から解放したそれが何か叫びながら突撃してくる。


鼻の骨が折れて上手く喋れないから、何か言ってるか聞き取りにくい。

だけど、どうでもいい。


それが剣を振りかぶった瞬間、距離を一瞬で詰める。

両手の拳を固めて魔力と気力を込める。


「百烈パンチって普通出来ないと思うんだ。

だって連続で百回も殴る前に両手がイカレるか、殴られた方がイカレると思うんだ」


僕は連続で一発一発が重たいパンチを全身くまなく入れていく。


「でも僕なら拳がイカレる事は無いし、君もイカレ無いように治療してあげるから千回はいけるね」


それは殴られている序盤で剣を落とす。

それは全身の痛みによって気を失った。


『起きろ』


それは無理矢理意識を取り戻す。

それは全身の骨が漏れなく砕かれる。

それは倒れる事すら許されない。


ボロ雑巾のようになったそれに千発目の拳を叩き込んだ。

僕の拳が止むと崩れ落ちる体を左手で首を鷲掴みにして支える。


「まだ倒れるには早いよ。

次に君が床に倒れるのは死んだ後だからね」


右手でそれにブッ刺して心臓を鷲掴みにする。


「カエルって熱いお湯に入れると死んじゃうんだよ。

でも水で泳がしておいて少しづつ温度を上げていくと、それ以上の温度まで生きていけるらしいよ」


なんか凄く気分がいい。

きっと僕は今、最高に楽しそうな顔してるんだろうな。


「人間はどうかな?

血液の温度を少しづつ上げていったらどれくらいまで生きていられるかな?」


僕は魔力でそれの心臓から流れ出る血液の温度を上げていく。

それの体は熱くなっていき赤く染まっていく。

口からブクブクと泡が出てくる。


でも意識だけはしっかり保たせる。


「さあ、誰が最初にこの世からさよならするかな?

人間って案外簡単に死なないんだよ。

適切な治療をすれば生きてられるんだ。

そのかわり苦痛はずっと続く。

それから逃げる事は許さない。

死のその瞬間まで苦しみ続けろ。

その魂に刻み込め。

地獄に行っても苦痛を感じ無い程の苦痛を」


僕は自然と笑いが込み上げてくる。


ダメだ抑えられない。

僕の大きな笑い声が廃村に反響して耳に刺さる。


これが僕だ。

他人の苦しむ姿を見て愉快に笑う。

正に悪党。

一縷の救いすらあってはいけない大悪党。


「もっとだ!

もっと苦しめ!!

もっと!もっと!!もっと!!!」


『美学その12

憎悪の赴くままに、生きてきた事を後悔するほどの報復を!!』


そうだ!

これだ!

これが悪党の美学!

これこそが僕の美学だ!!


「アハハハハハハ!!!

どう?

そろそろ地獄が恋しくなって来たんじゃないか?

でもまだだよ!

まだ行かせない!

だってまだ僕のこの激情は満足していない!!」


ドクン!!


心臓が大きく跳ねる。

これはヒナタのアレが発症した合図。


ヒナタの元に行かなきゃいけない。

その思いで僕の昂っていた感情が一瞬で冷める。


あぁ、やり過ぎちゃたな。

姉さんにも言われたのに。


だから美学その12は置いて来たのに。

置いて来たつもりだったのに……


僕はムースから心臓を抜き取って殺し、ギロチンとボルトも一気に最後までやり切って二人も殺す。

そして三人共魔力で跡形も無く蒸発させた。


やり過ぎた自覚はある。

だけど後悔や罪悪感は全く無い。

むしろ清々しい気持ちだ。


ごめんね姉さん。

やっぱり僕には無理だよ。

姉さんの言う事が正しいのは分かっていても、納得なんて出来ない。


だからこそ僕は悪党なんだ。

間違い無く人の道から外れている。


わかっていても僕はその道しか歩めない。

例えその先が破滅に繋がっているとしても。

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1つでも構いません。


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