謎解き
――冬の神スーレの司るところをもって正しい箱を選び、指示された先にある問いに答えよ
最初のポイントにたどり着くと、そんな問題文が掲示されていた。
問題文の横には、箱が並んでいる。3つ一組の箱が、計5つ。
みな、中を覗き込んで頭を捻っている。
ウルリッヒとベルティルデも首を傾げた。
「どういう意味なのかしら、これは?」
「冬の神スーレは、我が国にはおらぬ神だな」
私も他の人たちに混ざって、箱を覗き込んでみる。
入っていたのは……雪と氷、骨と肉、炎と薪、雪うさぎと白鳥の像、土と花だ。どの箱も、最後の箱に、地図が入っている。すべて違う地図。
氷や炎はちゃんと本物で、こういうのを溶けたり消えたりしないようにしているのは、さすがだ。
「これを作ったの、神話学のヘクター先生だよね」
「うん。今年は二段構えの問題にしたんだね」
私の後ろから覗き込んできたアルに話しかけると、アルが興味深そうに目をキラキラさせながら答えてくれた。リックも箱を覗き込み……「ん?」と呟く。
ひとまず私たちは箱の中身を全部チェックしてから、少し離れたところに移動した。
周りには、同じように箱の中身を見てから、謎を解こうと相談している学生がたくさんいる。
「冬の神だから、答えは雪や氷の入っている箱かしら?」
「それでは、安直すぎるであろう」
ベルティルデとウルリッヒの問答を聞きつつ、アルがリックに尋ねる。
「リックはどう思う?」
「えっ、俺ですか……」
隅の方にいたリックがびくっとする。交流会の間は、目立たないよう小さくなっているつもりだったのだ。
リックは、突然話を振られて困ったように眉をしかめた。
「えーと……スーレ神の神殿の入口には白鳥や雪うさぎが彫られていますけど……神が司っているもので考えるなら、死と再生ですよね。そうすると……」
「死と再生?じゃあ、あの骨の箱?」
ベルティルデが目をぱちぱちとさせる。
その横で、ウルリッヒが笑った。
「なるほど。わかったぞ!……ふふ、この国は面白いな。こんな謎解きを皆で楽しむというのは、うむ、悪くない」
うん、うん、そうだよね。私もそう思う。
ただ、問題によってはそう言えない場合もあるのよ~。
単純に激ムズな数式を解かせるだけだったり、古代語で星は何というか、という問いだったり。そうそう、第七代国王の名は?っていうのもあったなぁ。
この問題に関しては、不正解だった生徒は交流会のあと、学校周りの掃除が罰として科せられた。
不敬だからだって。
アルは、過去の王の名を覚えていないからって罰を科すのはやりすぎだって笑ってたけど。
「えっ、ウルはわかったんですの?やっぱり、骨?」
「違う。土の箱だ」
「土だけの箱と、花だけの箱のやつね。……でも、何故?」
ベルティルデは不思議そうに尋ねる。リックが「あっ」と呟いた。
「なるほど、死と再生……」
その途端、キッとベルティルデがリックを睨む。
「ちょっと、貴方!わかったのなら、ちゃんと説明しなさい」
「えっ、俺が?!」
「わからないの?」
詰め寄られて、リックはタジタジとしながら答えた。
「いや、わかります、わかります。……つまり、スーレ神の司る死と再生は、冬になると植物が枯れ、やがてまた芽吹いてくる自然現象を意味しています。なので、何もない状態である土と、再生を指す花が咲いた箱が正解かと……」
「なる……ほど……納得ですわ」
とっくに正解のわかっていたアルはパチパチと拍手した。
もちろん!
私も解いていたけどね。
こんな調子で謎を解きつつ、森を歩き回る。
お昼近くになり、私たちは小川のそばの木陰で一休みすることにした。
持ってきたカバンの中から、それぞれ昼食を取り出す。
交流会が始まるときに配られたもので、細長いパンに切れ目を入れ、野菜や肉を挟んだものだ。前世のホットドッグみたいな見た目といえばわかるだろうか。
こういうのは普通、貴族は食べないけれど……庶民の間では一般的なもので、こちらの世界ではセレーレという名称らしい。
思い思いに岩の上に腰掛け、これまでの謎の話などで盛り上がる。
交流会効果か……いつもは侃々諤々なアルとウルリッヒも、今のところすごく友好的だ。どうして、こんなメンバーにしたの?!って先生を恨んだけど、二人の間の壁が薄くなるなら、意外と良かったかもねぇ。
そのとき、別のグループが近くを通りかかった。
「まあ!アルフレッド殿下にウルリッヒさま!」
きゃあ!と甲高い声がして、一人がこちらに駆け寄ってくる。
「ちょうど、私たちも昼食をとるところなのです。ご一緒してもよろしいですか?」
うわぁ、パーセル候爵令嬢だぁ……。




