第23章 ヴォルフガング、迷える子羊になる
俺は悪魔に魅入られた哀れな子羊。
検死のような罰当たりなことに加担してしまったために、悪魔に目をつけられてしまったんだ。
黒い予言の悪魔を一階に引き摺り下ろしたあと、しばらく俺の魂は口から抜け出てしまっていた。
正気に戻ったのは、ちょうどエリアスと悪魔がルーカスの亡くなった画材倉庫へと入ろうとしていた時だ。
俺は一人になるのが、怖く――――
いや、この悪魔を見張っていないと……と思い、途中まで二人についていった。
だが、やはりルーカスの亡くなっていた現場には足を踏み入れられず、入り口近くで人が来ないか、見張りを……
そう!
見張りという大役をしていたのだ。
二人で部屋で何か話した後、悪魔とエリアスは連れ立って外へ。
俺は少し離れて二人についていく。
外はさらに日が沈み、いわゆる逢魔が時――――――
うろつき始めた魔物と逢うという時間。
人と闇の境界さえ朧げになる。
すると……
回廊に灯された、吊り下げ式の油脂ランプまで来た時。
俺は……
何というものを見てしまったんだろう!!
鬼火が――――
あ、青紫の……
悪魔の周りを青紫の鬼火が――――
ふわふわと。
そして、あろうことか、エリアスはうっとりとその鬼火に見入っている。
まるで鬼火に魂を抜かれた人形のように。
なんてことだ!
なぜ、俺は気付かなかったんだ……!!
エリアスは……
エリアスは……
エリアスは……
とっくに悪魔に魂を売っていたんだ!!!!!
俺は今にも叫びだしそうな口を押さえ、壁にもたれかかった。
ショックで立っているのもやっとだ。
思い返してみると、疑わしいところはあった。
そもそも、ルーカスの検死に誘う悪魔に味方したのもエリアスだし、
胸の大きな巨乳の悪魔、マリアちゃんを食い入るように見ていたのもエリアス。
そして、今。
闇の中で悪魔と共に、生贄の儀式をしている。
見てみろ……悪魔が鬼火を操り、手を掲げると、バタバタと虫たちが落ちていく。
死の生贄だ……
俺は両の手で口を覆う。
俺はなんてところに迷い込んでしまったのか……
その時、俺は気がついた――――
グンターが来たから、そのまま宿坊を出てきてしまった。
俺の結界は完成していない……!
魔除けの鍋を食べ損ねてしまった。
額の汗が滴り落ちた。
息が速くなる。
だめだ! 気配を消さなくては!! 奴らに気づかれてしまう。
だが、俺に勝算はあるのか!?
俺以外、悪魔に魅入られてしまって、味方は誰もいない……
そう、俺は、たった一人でこの難局を切り抜けなければならないのだ。




