↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/33

第11章(2) 超高級な虫!?

 見覚えがある…… 


 私はそこで言葉を切った。


 拾い物。


 というより、とんだ代物かもしれぬ――――


「預かっておこう」


 ブローチは、そのままベルトに取り付けた革袋にしまった。



◇◆◇



 その後、ヴォルフガングはそそくさと、建物を出て行ってしまった。


 いいのか? とエリアスに聞くと、「あのまましゃべらせると朝まで話すよ」とか。


 ボドキン考、私にはなかなか面白かったのだが。


 ヴォルフガングを見送った後、エリアスは羊皮紙をにらんでいた。


「ひどい悪筆だ……」


 羊皮紙を手にし、エリアスはめくりながら眉間にしわを寄せている。


「何が書いてあるかさっぱりだよ」


 諦めたのか、あきれたように無造作に投げてよこす。


 よこされた羊皮紙に、私も目を通す。


 確かに……。

 

 何か数字が書かれてはいる。


 それ以外は、ミミズの這うような癖がありすぎる字。


 これは判読に手間と時間がかかりそうだ。


「写本師でも読めないか」


 何気なく漏らした言葉だが、どうやら写本師としてのプライドを傷つけたらしい。


 エリアスは私から羊皮紙を取り返す。


 そしてさらに深く眉間にしわを寄せながら、羊皮紙をにらんでいた。


 私は先ほど受け取ったブローチをそっと出してみる。


 葉薊《はあざみ》。


 ラテン名、アカンサス。古代ギリシャの柱の彫刻や、写本の装飾にモチーフとして使われてきた植物。


 ヴォルフガングではないが、このような植物をモチーフにしたブローチは北の方……


 特にライン川あたりで好まれる。


 私は指先でくるくるとそのブローチを回した。


 アカンサス。


 ギリシャ語で『棘』を意味する。


 それは指先に刺さった棘のように、微かに神経を逆なでた。


 その時だ。


「わかった!」


 エリアスが声をあげた。


「これ、エンジ虫だよ! きっと! エンジ虫!」


「エンジ虫?」


 奇妙な単語の出現に疑いの目を向けるが、エリアスはお構いなしに続ける。


「エンジ虫はすり潰すことで、赤色の顔料になるんだ! 横にあるのは数字だね。こっちは読みやすい」


 エンジムシ……


 虫と言われて、私の脳裏にG……のつく黒い虫が思い浮かび、さらなる疑いの目になる。


「信じてないな? たしかずっと前からこの倉庫にも……エンジ虫が置いてあったはず。ほら、あれだよ!」


 エリアスは倉庫の奥へと進み、棚にある『エンジ』と書かれた木箱を取り出す。

 

 蓋を開けると布に包まれた小さな包みが入っていた。


 それを開くと数匹の干しブドウのような虫がころりと転がり出た。


「これをすり潰して、顔料にするんだ。エンジ虫の緋色は最高級の色だからね。高すぎてなかなか使えやしないって、絵師は言ってたよ」


「高すぎてとは、どれくらいなのだ?」


 全く想像がつかない。なにせ、虫だからな。いくら高価とはいえ、種別でいえば、Gの仲間……


「金《ゴールド》くらいかな?」


 のんきなエリアスの声が聞こえた。


 金《ゴールド》くらい……?


 この虫が?


 絵の顔料は宝石や金、貴重な植物を使用するために、高価だとは聞いたことがある。

 

 だが、まさかこの、何かのフンみたいな虫が、金《ゴールド》ほどの価値だとは……


 エリアスは、もういいだろ? というふうに、エンジ虫の包みを木箱にしまって、元の棚に戻そうとしていた。


 軽いショックを受けながら、エリアスの戻す棚を見る。


「待て」


「え? まだエンジ虫見たいの?」


 エンジ虫の箱を再び開けようとするが、それを制した。


「何かある」


 エリアスがしまった木箱の上の段。


「何があるんだよ?」


 見える――――


 あるじゃないか。エリアスには見えないのか?


 私は上段の木箱を取り出す。


 すると


 あった。


 その奥には――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。