幕間 王の間
「そろそろ、あれが着いたころであろうな」
王は、入り口に立つ報告を終えた側近のフォルクマルを見た。
「は。その時分でございますな」
「この任務には適任だ……しかも宮廷から体よく遠ざけておける」
フォルクマルは王弟の私物の入った布袋を持ってきていた。
「ご所望どおりにいきますかな?」
そう言いながら、それをテーブルに置く。
「可愛いじゃないか。余の目を逸らそうと無能のフリをしているのも」
王はその布袋に歩みよる。
「無能の方がよろしいかもしれませんぞ」
「余が使いこなせないというのかね?」
「いえ、そのような……」
フォルクマルはゆっくりと否定し、頭を垂れた。
急ぐことはない。ゆっくり飼いならせばいい。
必要になる時までには……
心の中でつぶやきながら、布袋に指を這わす。
「あの力は余が使うべき力だ。世界すら支配できる力だ。誰にも渡さん。あやつ、本人にさえな」
布袋を開けると、その中のひときわ目立つ木の塊に目が留まった。
ぴったりと隙間なく閉まった函。
王は函を手にとり、裏返してみた。
引いてみても、押してみても開かない。
無理やりにねじって開けようとしたが、その手からするりと滑り落ちた。
ころりと床を転がり、フォルクマルの足元で止まった。
王は函を見やり、片づけるように手で促す。
「余がすべてを支配する。悪魔であろうと――――」
王はそれ以上話さなかった。
ただ、甘く、冷たく、ねっとりと絡みつく声の記憶だけが、フォルクマルに残った。




