06. 双子の兄は公式設定2行のみ
実のところ、“ののの”の作中に、「ルナリア」は登場しない。
ヒロインが学園に入学する時点で、既に故人だからね。
ゲーム冒頭にあるヒロインのモノローグで、
『王立学園への入学を目前に、王太子付従者を務めていた双子の兄が亡くなった。そして——私が代わりに、王太子付従者を務めることになった』
……という台詞で、存在を明かされるだけ。
件のセピアカラーのスチルは、その時のものだ。
美しい涙を流すヒロインを中心に、泣きじゃくる幼い少年と、唇を引き結び感情を殺す麗人のスチル。
ちなみに、ゲーム内ではこの二人について語られることはなかった。
登場もここだけだしね。
——けど、恐らく問い合わせが殺到したんだろうな。
後に発売された公式ファンブックで、この二人はヒロインの兄と弟であることが判明した。
ちなみにだけど、ルナリアの公式設定も、この時に初めて公開された。
【ルナリア・ルーチェ】
・カルミアの双子の兄で、体型と髪型が異なるのみ
・王太子付従者を務めていたが、王立学園入学を目前に事故死
たった2行。
当然、キャラ画なんてなかった。
だけどたった一人、その存在に言及する人物がいる。
それが、難攻不落と称された、王太子だ。
『……彼は、ルナリアは』
『お兄様……ですか?』
『私の——良き、理解者だった』
無表情な上に口調まで平坦で、典型的な、何を考えているのか分からないキャラクター。
しかもこの王太子だけは、決まった選択肢が存在しないんだよ!
プレイする度に好感度上昇選択肢が変化する攻略対象なんて、乙女ゲーム的にアリなの!?
『王太子エグすぎw』——トレンド入りしたからね!
しかも、口を開けばルナリアルナリア、ルナリア。
ヒロインは事あるごとに、元従者である兄と比較されまくる。
それはもう、息をするかの如く。
ヒロインがちょっとマカロン食べるだけで、『彼も好きだったな……』的な。
ぶっちゃけ——ウザい。
元カノと比べてくる彼氏かよ!? 的なウザさ。
だけど、誰にも心を開かない表情筋の死んだ男の口から出る言葉となれば——プレイヤーの感じ方もちょっとばかし違うわけでして。
彼の言葉を字面そのまま受け入れたピュアプレイヤーもいれば、穿ちひっくり返し深読みする熟成プレイヤーもいたりして。
かく言う俺も、その一人だったわけでして……
……でも、まさか。
それが——当たらずも遠からずだった、なんて。
ナカーマに向かって拡散できないのが無念だ……
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