42. 魔法オタクは魔術に活路を見出す
自衛魔法、かぁ……
俺の使える魔法の中で守備系といったら、≪光盾≫と≪光域≫。
どちらも手印で発動することはできるけれど……言い換えれば、手印がなければ発動できないわけで。
戦闘中の気の張り詰めた時であれば、対応できる自信はある。
でも、この間のような日常の中では駄目だ。
四六時中気を張って生活するのは心身ともに消耗するし、何より現実的ではない。
……かと言って、そのせいで誰かを巻き込むのは嫌だ。
——そんな事を考えてウジウジ悩むのは、もっと嫌だ。
「こう、自動で攻撃を弾けるような方法ってないのかな……」
……魔道具とか?
魔道具なら、魔道具師が詳しいかな……いや、魔道具を扱うことに長ける魔術師をあたった方がいい? ——あれ?
「……そういや、魔術師ってこういう時はどう対処してんだろ?」
降って湧いた疑問に、俺の中の好奇心が疼くのを感じる。
この世界には、魔法師の他に、魔術師が存在する。
あ、違った。現在の主流呼称は魔術師だっけ?
……いや、俺は魔術師の方がしっくりくるから、そっちで。家ではみんなそっちを使ってるしね。
どっちも間違いではないから、表立って揚げ足を取られることもないでしょ。俺、ルーチェだし。
その大きな違いは実に単純で、加護を持つか否か——それだけ。
だから、“ののの”には魔術師のキャラクターはいなかった。
魔術師の纏う砂色は、ゲームの趣旨にそぐわなかったからだと推察する。
加護持ち、つまり魔力を持つ人間であれば、魔法が扱える魔法師。
翻って、加護無し——つまり魔力を持たない人間はどうしたのか。
足りない魔力に代わる魔法陣と杖状の魔道具を生み出し、魔術という新たな力を生み出した、ってわけ。
すごいよね、まさに努力と英知の結晶! ロマンの塊!
無から有を生み出すんだよ? 魔法とはまた違った、その楽しさが堪らない。
魔術は魔法陣と杖を用いなければ術を発動できないという制約があったはず。
実戦の場では先に魔法陣を用意し、その場で待機して敵を撃つ戦闘スタイルだ。
あんな複雑な魔法陣、ドンパチしている中で描いてられないもんね。
ただ、不測の事態はどうしたってある。……それに対処する手段は何なのか。
——これ、現状打破に一役買いそうじゃない?
王城に通うようになって、王城魔法師団とは早々に交流することができた。
王城魔法師団長がウェルカム体制で助かったよ——俺が王太子付従者だからだろうけどね。
ま、役得だから大いに活用させてもらったんだけどね。
禁書庫まで二つ返事で見せてくれたのには驚いたけど……
今の魔法師団長は、魔法を追求するよりも権力を好むタイプなんだよね。
王城魔法師団長は、実力よりも家柄で選出されるところがあるから——お貴族サマの性質上、仕方がないのかな。
あ、良いか悪いかを言うつもりはないよ。ルーチェである俺には、関係のない話だからね。
問題は、王城魔術師団の方。
長い年月をかけて、打ち解けられたのはほんの数名。
その中に王城魔術師団長がいたから、魔術塔の書庫を見せてもらえたんだよね……
魔法にも明るい気さくな方で、話していてとても楽しかった。
だけど、数年前にお年を理由に勇退されてしまって。
「実は、次の御方は私の縁の者でしてね。……貴方様なら、彼ともきっと良き縁を紡げるでしょう。どうかそのままの、分け隔てなく好奇心豊かな貴方様でいてください」
——別れの挨拶に伺った際の、あの言葉の意味は何だったのか。
お会いすることを楽しみにしていた新しい王城魔術師団長は、閉鎖的な方のご様子。
交代されてから一度もお会いできないまま、今日に至っている。
王城魔術師団長は魔法師団長と異なり、選定基準はその実力のみ。
やっぱ、シンプルイズベストだよね。
平民だからこそできることかもしれないけど。
だから、魔術以外は極端に不得手な人物が就任する代もあったり。
……今代も、そういう方なのかな?
お陰で、ここ数年の王城魔法師団と王城魔術師団の関係は最悪みたい。
トップの色に染まるのは、どこも一緒なんだね。
……まぁ、仕方がないことではあるんだよね。
魔法師と魔術師は、基本的に相容れない存在だから。
魔力の有無というその性質上、どうしても魔法師は貴族に偏り、魔術師は平民になる。
一昔前は魔法師の優越だなんていって、魔術師を軽視する風潮があったくらいだしね。
あ、さっき言った“アルカニスト”もそのうちの一つ。
自らを『魔術師』と名乗った魔術師に対し、魔法師は自分たちと同じ『メイジ』を名乗ることを認めなかった、とか何とか。
俺からすれば、すごく馬鹿らしい話。
魔法だって魔術だって、一長一短がある。
比べる意味を見出せない。
できることなら魔術だって使いたかったけど、残念ながら魔力と魔術の相性はイマイチ。
親和性っていうのかな? 俺の魔力は弾いてしまう性質みたい。
悔しくて魔術書をいっぱい読んだよ。
だから、扱えなくても知識はそれなりにある。
今はもう、魔法と魔術は対等であるとされてるんだけどね。
——貴族と平民の壁は、越えられなかったんだよねぇ。
まぁ、こればっかりはね。
王国に革命を起こさなきゃいけない、別の話になってくる。
——ってなわけで、魔術師の大半は、魔法師にいい印象を持っていない。
つまり、王太子付従者である俺だって例外なく、よくは思われていない——ってこと。
「んー……今の王城魔術師団じゃ、話を聞くのも無理だろうなぁ。——王城図書館に、何か新しい魔術書でも入ってないかな」
適当な本を手に取ったら、そこにヒントが! ってやつ。
ご都合主義には、引き続き期待しちゃうよ。
だって、乙女ゲームだしね。
大事なことだから、2回言っちゃうよ!
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