24. 次男、事故死フラグをへし折る?
「ギィッ!」
「っ!?」
「わぅ!?」
突然、地上から一筋の閃光が突き抜けていった。
こちらに当てる意思はないのだろう。
だが、こちらの気を引こうとする明確な意図を感じる。
そう、例えば……『早く戻れ、バカ』——とか?
「……あ、ヤバイ」
「うん? どうしたのルナちゃん?」
「キュイ?」
血の気が引くって、こういう事。
変な汗が身体に滲む。
「シュロ。屋敷に戻って——今すぐ」
「キュイ」
「絶対に目立たないように、こっそりね!」
「ルナちゃん。なんかみんな、屋敷の方に走ってるよ? こっそりはもう無理じゃないかな?」
「無理でもやるの! 白竜でしょっ!?」
「キュィッ!!?」
「アハハ、無茶ぶりだ〜」
急降下するシュロに、お腹の底が浮き上がるような独特の浮遊感。
無邪気な悲鳴を上げるヴェルクをしっかり抱きしめ、振り落とされないようにシュロに掴まる。
「頼むよ、シュロ」
「キュイッ!」
「——一緒に兄さんに怒られようねっ!」
「……キュ、キュイィイィッ!!?」
◇◇◇
もはや落下の勢いで屋敷の庭園に着地する。
俺とヴェルクが地面に降り立つなり、シュロは肩乗りサイズにまで縮み……俺の服の中に隠れた。
……おい。
「空の散歩は楽しかったか?」
待ち構えていた兄さんの笑顔が美しい。
——故に、怖い。
「キュゥキュゥキュイ〜ン」
誰が聞いても媚びているのだと分かる声音でシュロが鳴く。
磨き上げられた革靴をペロペロと舐めながらスリスリと身体を寄せ始めた。
……それでいいのか白竜っ!!
「ソルくん、ただいまー!」
無邪気に飛びついて行くヴェルクが羨ましい。
「に、兄さん、これには訳が……」
「二人とも、怪我はないな?」
「え? あ、うん……」
「大丈夫だよ!」
俺とヴェルクを交互に見た兄さんは、微かに目元を緩めた。
バルコニーの柵は庭園に落下したまま。
またしても心配をかけてしまったのだと、流石に凹む。
「そうか……なら、いい。——シュロ」
「キュ、キュイッ!?」
「よくやった。俺の弟たちを助けてくれてありがとう」
靴を舐め続けるシュロを抱き上げると、その美しい顔に穏やかな笑みを浮かべる。
白い手が労わるように小さな身体を撫でた。
「キュ……キュィイィイィィィイィイィ——!!」
あ、惚れたな。
兄さんは人たらしなところがあるんだよね。本人無自覚だけど。
まさかドラゴンまで堕とすとは……
兄さんの腕の中ですっかり猫化して喉をゴロゴロし始めるシュロ。
その変わり身の早さにムッとはするけれど、まぁ今回は本当に助けられたわけだし……
どんな加護持ちであっても、所詮は人間。
高所から落下すれば怪我を負うし、打ち所によっては死に至る。
光の魔法をもってしても、死者を生き返らせることはできない。
この理は——絶対。
砕けたバルコニーの柵に、無傷であることを改めて感謝する。
歴史ある屋敷……つまりは古い屋敷だし、留め具でも緩んでいたのだろうか?
それにしたって、毎日掃除をしてくれている使用人たちが気づきそうなものだけど……
……あれ?
ひょっとして……ルナリアが、ここで事故死してたって可能性は——?
つまり……事故死のフラグが、折れた——!?
だとしたら、最高なんだけど!
.




