↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/66

14. 双子の兄はご都合主義に期待する



 ルーチェの領地は小規模でシンプル。

 屋敷から城下町に向かって30分も歩けば、そこにはギルドや商店が立ち並ぶ、領地唯一のショッピングモールが広がっている。

 王都の流行りのものが流通するには数ヶ月のラグがあるけれど、俺は王都の街より人間味があって好きだな。

 領民の住まいもこの辺りに集中しているよ。


 そこを抜けてしまえば、我がルーチェ領が誇る果樹園地帯。

 ただの果樹じゃないよ、HP回復効果のあるライフチェリーっていう木の実なの。

 需要のわりに、ルーチェの領地でしか育たない謎の多い果樹なんだよね。


 え? そんな貴重な果樹を魔物の頻発する地域で育てて大丈夫かって?

 うん、そこは対策済み。

 領地一帯に結界を張ってるんだよ、ルーチェならではだよね。

 低級種の魔物であれば殺傷できちゃう優れものでね、この間もサラマンダーの群れが触れた瞬間蒸発してた。

 ……あれ? サラマンダーって中級種だったような……まぁ、いっか。


「あールナだ! おかえりなさい!」

「ねぇ、いつ帰って来たの!?」

「ルナだ! みんなー、ルナがいるよー!」

「なぁ、ソル兄は!? ソル兄も帰ってきてるよな!?」

「ルナ、遊ぼうよー!」

「ヴェルクは今日は一緒じゃないの?」


 街のメイン通りに入るなり、その場にいた子供たちに囲まれる。

 傭兵や商店の子供たち。

 ……どうでもいいんだけどさ、兄さんには“兄”がつくのに、俺は呼び捨てなんだよね。

 みんなこの領地で生まれ育った、ルーチェのかけがえのない財産。


「久しぶりだね、みんな。春季休暇の間だけだけど、俺も兄さんも、もう少しこっちにいられるよ」


 俺の言葉に、子供たちが無邪気な歓声をあげる。

 みんな、年代的には俺よりもヴェルクに近いんだけどね。

 大きいお兄ちゃんに構ってもらいたいお年頃ってやつ?

 あーいいよね、癒される……


「こら! アンタたち、ルナリア様のお邪魔をしないの!」

「えー!」

「だってー!」


 店から出てきた大人たちにたしなめられ、露骨にぶすくれるのも可愛い。

 俺に抱き着いて離れない子供たちの、柔らかな砂色の髪を撫でる。


「王都に戻るまでに絶対に遊ぼう。兄さんとヴェルクにも伝えておくよ」

「うー……約束?」

「うん、約束」


 差し出された小指に指を絡める。

 それだけでパッと表情が明るくなるんだから、なんて可愛いの。

 ポケットに入れてある、菫の砂糖漬けの包み。

 ……え? お出かけの必需品じゃない?

 長旅でも日持ちするし潰れないし最高だよ、旅のお供にも優秀なんだから。

 みんなで分けてって渡したら、また歓声。

 後ろ髪は引かれるけれど、手を振って別れる。



 俺の死に繋がりそうな、何かがほしいんだよね。

 転生小説あるあるみたいに、歩いていたら思い出せるとか、ないかなって。

 ご都合主義に、ちょっと期待。

 え? だって、乙女ゲームにご都合主義はつきものでしょ?




.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。