14. 双子の兄はご都合主義に期待する
ルーチェの領地は小規模でシンプル。
屋敷から城下町に向かって30分も歩けば、そこにはギルドや商店が立ち並ぶ、領地唯一のショッピングモールが広がっている。
王都の流行りのものが流通するには数ヶ月のラグがあるけれど、俺は王都の街より人間味があって好きだな。
領民の住まいもこの辺りに集中しているよ。
そこを抜けてしまえば、我がルーチェ領が誇る果樹園地帯。
ただの果樹じゃないよ、HP回復効果のあるライフチェリーっていう木の実なの。
需要のわりに、ルーチェの領地でしか育たない謎の多い果樹なんだよね。
え? そんな貴重な果樹を魔物の頻発する地域で育てて大丈夫かって?
うん、そこは対策済み。
領地一帯に結界を張ってるんだよ、ルーチェならではだよね。
低級種の魔物であれば殺傷できちゃう優れものでね、この間もサラマンダーの群れが触れた瞬間蒸発してた。
……あれ? サラマンダーって中級種だったような……まぁ、いっか。
「あールナだ! おかえりなさい!」
「ねぇ、いつ帰って来たの!?」
「ルナだ! みんなー、ルナがいるよー!」
「なぁ、ソル兄は!? ソル兄も帰ってきてるよな!?」
「ルナ、遊ぼうよー!」
「ヴェルクは今日は一緒じゃないの?」
街のメイン通りに入るなり、その場にいた子供たちに囲まれる。
傭兵や商店の子供たち。
……どうでもいいんだけどさ、兄さんには“兄”がつくのに、俺は呼び捨てなんだよね。
みんなこの領地で生まれ育った、ルーチェのかけがえのない財産。
「久しぶりだね、みんな。春季休暇の間だけだけど、俺も兄さんも、もう少しこっちにいられるよ」
俺の言葉に、子供たちが無邪気な歓声をあげる。
みんな、年代的には俺よりもヴェルクに近いんだけどね。
大きいお兄ちゃんに構ってもらいたいお年頃ってやつ?
あーいいよね、癒される……
「こら! アンタたち、ルナリア様のお邪魔をしないの!」
「えー!」
「だってー!」
店から出てきた大人たちにたしなめられ、露骨にぶすくれるのも可愛い。
俺に抱き着いて離れない子供たちの、柔らかな砂色の髪を撫でる。
「王都に戻るまでに絶対に遊ぼう。兄さんとヴェルクにも伝えておくよ」
「うー……約束?」
「うん、約束」
差し出された小指に指を絡める。
それだけでパッと表情が明るくなるんだから、なんて可愛いの。
ポケットに入れてある、菫の砂糖漬けの包み。
……え? お出かけの必需品じゃない?
長旅でも日持ちするし潰れないし最高だよ、旅のお供にも優秀なんだから。
みんなで分けてって渡したら、また歓声。
後ろ髪は引かれるけれど、手を振って別れる。
俺の死に繋がりそうな、何かがほしいんだよね。
転生小説あるあるみたいに、歩いていたら思い出せるとか、ないかなって。
ご都合主義に、ちょっと期待。
え? だって、乙女ゲームにご都合主義はつきものでしょ?
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