第78話 『逆分断』
――構造を変える。
その言葉が、頭の中で反響していた。
西門はまだ混乱の中にある。
荷馬車が押し合い、
人がぶつかり、
怒号が飛び交う。
「通せ!」
「止めろ!」
現場は限界に近い。
レオンが低く言う。
「このままじゃ潰れる」
ミレイアが帳面を叩く。
「輸送効率、急落」
ナディアが笑う。
「完全にハメられたな」
エリシアはその光景を見ていた。
混乱。
停滞。
そして、
削られていく供給。
だが――
「違います」
静かな声。
フィオナが顔を上げる。
「何が」
エリシアは板を思い浮かべる。
分散。
集中。
どちらも潰された。
ならば――
「逆にします」
ナディアが笑う。
「来たな」
レオンが言う。
「どうやる」
エリシアは即答した。
「市場を分断します」
ミレイアが息を吸う。
「……市場を?」
「はい」
エリシアは言う。
「輸送ではなく」
「需要を分けます」
沈黙。
ナディアが笑う。
「いいねぇ」
フィオナがすぐに理解する。
「……配給区画」
「はい」
エリシアは頷く。
王都は密集している。
だからこそ、
**分けられる。**
「区画ごとに供給を固定」
「流れを止める」
ミレイアが言う。
「市場を切る」
レオンが笑う。
「なるほどな」
ナディアが言う。
「流れじゃなくて箱にするか」
そのとき。
セシルの声が背後から響く。
「面白い」
振り向く。
セシル・ヴァルトン。
すでに理解している顔。
「需要の固定」
ゆっくり頷く。
「市場の自由を削る」
エリシアは答える。
「一時的に」
セシルは少し笑う。
「大胆ですね」
ナディアが言う。
「怖いか?」
セシルは首を振る。
「興味深い」
そして言う。
「ですが」
静かな声。
「機能しません」
レオンが笑う。
「決めつけるなよ」
セシルは指を軽く振る。
「市場は流れる」
「人も、物も」
「止めれば」
その目が冷たくなる。
「歪みます」
エリシアは頷く。
「はい」
そして言う。
「だから短時間です」
フィオナが即座に動く。
「区画分割を開始」
兵士たちが走る。
通りに縄が張られる。
区切り。
人の流れが止まる。
「何だこれは!」
「通れないぞ!」
ざわめき。
混乱。
だが――
ナディアが言う。
「押し戻せ」
兵士が動く。
人を制御する。
強制的に。
ミレイアが板を出す。
書く。
**第一区画 配給**
人々がその文字を見る。
そして――
止まる。
レオンが低く言う。
「……効いたな」
恐怖は流れる。
だが安心は留まる。
区画ごとに、
心理が固定される。
そのとき。
西門の混乱が少し収まる。
荷馬車が動く。
ぎし、と音を立てて。
通る。
ナディアが笑う。
「流れが戻った」
ミレイアが言う。
「干渉が減少」
エリシアは言う。
「分断です」
セシルはそれを見ていた。
静かに。
そして言った。
「なるほど」
その声にわずかな変化。
「市場を止めるのではなく」
「分けた」
エリシアは頷く。
「はい」
セシルは少しだけ笑う。
「良い手です」
ナディアが言う。
「褒めてる場合か」
セシルは続ける。
「ですが」
その目が再び冷たくなる。
「長くは持たない」
ミレイアが言う。
「承知しています」
レオンが言う。
「時間稼ぎだ」
エリシアは言う。
「十分です」
西門の荷馬車が次々と通る。
供給が増える。
価格板が書き換えられる。
穀物価格――
**微減。**
人々がざわめく。
「下がった!」
「戻るぞ!」
ナディアが笑う。
「いいねぇ」
レオンも笑う。
「押し返してる」
だが。
エリシアは板を見つめる。
まだ足りない。
時間は稼いだ。
だが決着ではない。
そのとき。
セシルが言った。
「では」
静かな声。
「次に行きましょう」
ミレイアが顔を上げる。
「……次?」
セシルは微笑む。
「市場は段階です」
そして指を軽く鳴らす。
その瞬間。
遠くから声が響いた。
「南部の輸送、止まった!」
「北部も!」
ナディアが低く言う。
「……全部か」
レオンが笑う。
「やりきったな」
エリシアは目を細める。
すべての外部輸送。
止まった。
つまり。
残るのは――
「内部です」
フィオナが言う。
エリシアは頷く。
「はい」
セシルは言った。
「ここからは」
その目が鋭くなる。
「王都の中で戦いましょう」
沈黙。
市場は外から内へ。
戦場が変わる。
エリシアは板を見つめた。
分断。
成功。
だが。
次は――
**内部戦。**
ついに「逆分断」が決まりました。
ここで一度、制度が押し返します。
ですが、まだ決着ではありません。
次は“王都内部戦”。
戦場そのものが変わります。
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