第75話 『連盟起動』
三日。
その言葉が、空気の中に残っていた。
広場のざわめきは消えていない。
むしろ増している。
「また上がったぞ!」
「昨日より高い!」
人々が価格板に群がる。
穀物価格――
**一・七倍。**
ナディアが低く言う。
「早ぇな」
ミレイアが帳面をめくる。
「輸送停止の影響が出ています」
レオンが舌打ちする。
「三日も持たねぇな」
エリシアは静かに言った。
「だから動かします」
振り返る。
「フィオナ」
「はい」
「連盟へ連絡を」
フィオナが即座に動く。
「南部・北部、両方に通達」
ミレイアが補足する。
「緊急輸送要請」
ナディアが笑う。
「またあの手か」
「はい」
エリシアは頷く。
市場を通さない。
連盟の直輸送。
レオンが言う。
「問題は時間だ」
「分かっています」
エリシアは答える。
「だから」
板を出す。
書く。
**分散同時輸送**
ミレイアが目を細める。
「……一斉ですか」
「はい」
エリシアは頷く。
「一点では遅い」
「複数から同時に入れる」
ナディアが笑う。
「面白ぇ」
レオンも笑う。
「網を張るか」
フィオナが言う。
「輸送路を複数確保します」
「検問を避けるルートも含めて」
ナディアが言う。
「裏道も使うな」
「必要です」
そのとき。
広場の空気がさらに荒れた。
「配給減ってるぞ!」
「量が少ない!」
ミレイアが低く言う。
「在庫消費加速」
レオンが言う。
「時間が縮んだな」
エリシアは即答する。
「二日です」
沈黙。
ナディアが笑う。
「いいねぇ」
「追い込まれてきた」
そのとき。
黒い馬車が現れた。
セシル・ヴァルトン。
ゆっくりと降りる。
その顔には、昨日より明確な余裕があった。
「状況はどうです?」
ナディアが吐き捨てる。
「てめぇのせいだろ」
セシルは微笑む。
「市場です」
そして価格板を見る。
「上昇していますね」
エリシアは言う。
「止めます」
セシルは首を傾げる。
「どうやって」
「連盟です」
その一言。
セシルの目がわずかに動いた。
ほんの一瞬。
だが確実に。
「……まだ使いますか」
「はい」
エリシアは答える。
「市場を通さない供給」
セシルは少しだけ笑う。
「面白い」
そして言う。
「ですが」
静かな声。
「間に合いません」
ミレイアが言う。
「計算ではギリギリです」
レオンが笑う。
「ギリなら勝てる」
ナディアが言う。
「いつも通りだな」
エリシアは板を見つめる。
時間。
距離。
輸送量。
すべてを組み合わせる。
「間に合わせます」
その言葉に迷いはない。
セシルは少し黙り、
そして言った。
「では」
ゆっくりと。
「市場も動きます」
その瞬間。
遠くから鐘の音。
市場の合図。
人々が一斉に動く。
「買え!」
「今だ!」
価格板が書き換えられる。
穀物価格――
**二倍。**
ざわめきが爆発する。
ナディアが低く言う。
「……完全に仕掛けてきたな」
ミレイアが言う。
「投機第二波」
レオンが笑う。
「いいねぇ」
エリシアは前を見る。
市場。
群衆。
恐怖。
そして――
動き出す連盟。
フィオナが戻ってくる。
「連絡完了」
「南部、出発」
「北部、準備中」
ナディアが笑う。
「来るな」
レオンが言う。
「間に合うかどうか」
セシルは馬車に乗りながら言った。
「令嬢」
「楽しみにしています」
その言葉は静かだ。
だが確実に挑発。
黒い馬車が去る。
広場は再び混乱。
人々の声。
価格の上昇。
エリシアは板を見つめる。
二日。
その間に、
すべてが決まる。
連盟が勝つか。
市場が勝つか。
王都の戦いは、
**決着へ向かっていた。**
ここから完全に「時間との戦い」です。
連盟は間に合うのか。
市場はどこまで加速するのか。
次話、ついに“輸送の衝突”が始まります。
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