表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪後から始まる泣き虫悪役令嬢の泥だらけ領地再生記 ―追放先の辺境村で干ばつを止めたら、商人ギルドに目をつけられました―  作者: 夜凪ユリエ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/85

第67話 『価格崩落』

 国家備蓄の輸送隊が到着して三日目。


 ヴァルクの市場は、これまでとはまったく違う顔をしていた。


 人は集まっている。


 だが、恐怖のざわめきではない。


 **様子見の静けさ。**


 広場の中央、価格板の前に人が集まっている。


 書き換えられた数字。


 穀物価格――


 **二・三倍。**


 昨日の三倍から、はっきりと下がった。


 レオンが低く言う。


「……落ちたな」


 ミレイアが帳面をめくる。


「供給が増えています」


 農民輸送。

 地主放出。

 国家備蓄。


 三つの物流が、確実に市場へ流れ込んでいる。


 ナディアが広場を見渡す。


「恐怖が消え始めてる」


 それが一番大きい。


 市場は数字だけで動かない。


 心理で動く。


 そして今、


 **買い占めの恐怖が薄れた。**


 マリアが荷馬車の列を見ながら言う。


「農民も落ち着いた」


 農民輸送隊は、今日も動いている。


 量は多くない。


 だが毎日届く。


 それだけで市場は変わる。


 ローデリックが倉庫前で腕を組んでいた。


「価格は下がる」


 静かな声。


「だがどこまでだ」


 エリシアは板を見る。


 供給量。

 輸送速度。

 市場倉庫。


 そして言う。


「まだ下がります」


 ミレイアが頷く。


「投機在庫が残っています」


 倉庫街。


 巨大な石倉庫。


 商人ギルドの穀物。


 北部在庫の四割。


 そこが問題だ。


 レオンが言う。


「連中、まだ出さねぇな」


 ナディアが笑う。


「出したら負けだからな」


 そのとき、倉庫街の扉が一つ開いた。


 ぎい、と重い音。


 人々が振り向く。


 穀物袋が運び出される。


 ざわ、と広場が揺れた。


 ミレイアが言う。


「……出ました」


 商人倉庫。


 ついに動いた。


 エリシアは板を見る。


 供給がさらに増える。


 心理が変わる。


 つまり――


 **投機が崩れる。**


 レオンが低く笑う。


「来るな」


 そのとき、倉庫街の別の扉も開いた。


 また一つ。


 さらに一つ。


 商人たちが穀物を出し始めている。


 ナディアが言う。


「投機の崩れだ」


 ミレイアが説明する。


「価格が下がる前に売る」


 典型的な崩壊パターン。


 市場は速い。


 だが崩れるときは、


 **もっと速い。**


 広場の人々が価格板を見上げる。


 新しい数字が書き込まれる。


 穀物価格――


 **一・八倍。**


 ざわめきが広がる。


 レオンが言う。


「……落ちた」


 マリアが笑う。


「一気に」


 そのとき、


 黒い馬車が倉庫街から出てきた。


 セシル・ヴァルトン。


 広場の中央で止まる。


 セシルは降りて、


 市場の様子を見た。


 農民輸送。


 地主輸送。


 国家備蓄。


 そして、


 崩れ始めた商人倉庫。


 少しだけ笑う。


「早いですね」


 エリシアが言う。


「市場は速い」


 セシルは頷いた。


「はい」


 そして価格板を見る。


 数字がまた書き換えられる。


 穀物価格――


 **一・五倍。**


 広場がどよめく。


 投機の崩壊が始まった。


 セシルは静かに言う。


「制度が勝ったわけではありません」


 ナディアが笑う。


「負け惜しみか?」


 セシルは首を振る。


「市場が自己調整しただけです」


 エリシアは答える。


「供給が戻ったからです」


 セシルは少しだけ目を細める。


 そして言った。


「……今回は」


 レオンが眉を上げる。


「またそれか」


 セシルは微笑む。


「市場は何度でも戦えます」


 その言葉は事実だった。


 市場は止まらない。


 だが。


 エリシアは板を見る。


 南部連盟。

 北部連盟。

 国家制度。


 そして今、


 市場の暴騰は崩れている。


 広場の風が少し暖かい。


 価格板の数字が、また下がった。


 穀物価格――


 **一・三倍。**


 投機は、


 完全に崩れ始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ