表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪後から始まる泣き虫悪役令嬢の泥だらけ領地再生記 ―追放先の辺境村で干ばつを止めたら、商人ギルドに目をつけられました―  作者: 夜凪ユリエ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/85

第66話 『国家備蓄』

 北部ヴァルクの広場には、これまでにない光景が広がっていた。


 荷馬車の列。


 農民輸送隊。

 地主輸送隊。


 そして――


 国家備蓄輸送隊。


 王国の紋章を掲げた護衛付き馬車が、ゆっくりと広場へ入ってくる。


 人々が道を開けた。


 誰も声を出さない。


 ただ、その光景を見つめている。


 レオンが低く言った。


「……王国だな」


 ミレイアが帳面を閉じる。


「国家備蓄第一波」


 ナディアが笑う。


「ついに来たか」


 巨大な穀物袋が荷馬車から降ろされる。


 兵士たちが整然と動き、広場の臨時倉庫へ運び込む。


 その様子は、これまでの輸送とは違っていた。


 **秩序。**


 そして、


 **国家の重み。**


 広場の人々が価格板を見た。


 穀物価格――


 **さらに下落。**


 ざわ、と空気が揺れる。


 マリアが小さく息を吐く。


「止まった」


 ミレイアが言う。


「供給三層」


 農民。

 地主。

 国家。


 その重なりが、


 市場心理を押し返している。


 ローデリックが腕を組んで言う。


「これが制度か」


 エリシアは頷く。


「はい」


 ローデリックはしばらく国家輸送隊を見ていた。


 やがて言う。


「南部の令嬢」


「はい」


「面白い」


 短い言葉。


 だがそれは、


 北部最大地主の評価だった。


 そのとき、倉庫街の方から馬車が近づいた。


 黒い商会馬車。


 セシル・ヴァルトン。


 ゆっくり降りてくる。


 広場の様子を見渡す。


 農民輸送。

 地主輸送。

 国家輸送。


 三層物流。


 そして価格板。


 セシルは少しだけ笑った。


「見事です」


 その声は穏やかだった。


 だが完全に負けを認めているわけではない。


 エリシアが言う。


「市場は速い」


 セシルが頷く。


「はい」


「ですが」


 エリシアは続ける。


「制度は崩れません」


 沈黙。


 セシルは広場の国家輸送隊を見る。


 兵士。

 馬車。

 穀物。


 そして言った。


「国家は重い」


「遅い」


 ナディアが笑う。


「でも来た」


 セシルは少しだけ頷いた。


「今回は」


 その言葉に、レオンが眉を上げる。


「今回は?」


 セシルは肩をすくめる。


「市場は止まりません」


 そして倉庫街を指す。


 巨大な石倉庫。


 商人ギルドの備蓄。


 まだ動いていない。


 ミレイアが言う。


「公開命令」


 セシルが微笑む。


「拒否中です」


 ナディアが言う。


「そのうち開く」


 セシルは静かに言った。


「開かないかもしれません」


 広場の空気がわずかに冷える。


 エリシアは板を見る。


 農民輸送

 地主輸送

 国家備蓄


 そしてその横。


 **市場倉庫**


 四割。


 まだ大きい。


 セシルはエリシアを見る。


「令嬢」


 静かな声。


「あなたの制度は強い」


 そして少し笑う。


「だが市場は、もっと強い」


 ナディアが低く言う。


「また始める気か」


 セシルは答えない。


 ただ倉庫街を見ている。


 その視線の意味を、


 エリシアは理解していた。


 これは終わりではない。


 **第一戦が終わっただけ。**


 広場の風が強く吹く。


 荷馬車の列。


 国家備蓄の穀物。


 北部連盟。


 制度は確かに動き始めた。


 だが市場はまだ残っている。


 セシルは最後に言った。


「王都で会いましょう」


 それだけ言って、


 ゆっくり馬車へ戻った。


 レオンが言う。


「……次は王都か」


 エリシアは板を見つめた。


 南部連盟。


 北部連盟。


 国家制度。


 そしてその先。


 **王国市場。**


 物語は、


 さらに大きな戦場へ向かっていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ