2章幕間3
「ちょっ、待つにゃ!」
あすみっちが……。あすみっちが居なくなっちゃった……。それに、沙那ぽんまで……。
「うわぁ!なんだ!」
「にゃ?」
沙那ぽんの体が!光の粒となって消えていく…。
「ど、どういうことにゃ……」
「分からない。それに後ろ、他のクラスメイトも」
「嘘にゃ!なんでみんなの体が無くなってるんだにゃ!?」
「分からない…。七瀬あすみの魔法によるものなのか……。それともなにか別のものが影響しているのか……。魔法少女は死んだら跡形も無く消えるって言うのか?」
「そうですね」
「小鳥遊先生!?」
「少し目覚めるのが遅かったみたいです。目を覚ました後、瑞希さんに様子を伺ってから、すぐに来たのですが。まさか現状がここまでとは」
「小鳥遊先生、みんなの体が……」
「これは、現状私と愛莉だけが知っていることにはなりますが、魔法少女は命を失うと、その体が光の粒となって消滅する。それがこの世界の理として周知されているべきでした」
「そんにゃ…なんで先生はそれを知っていて……そして、そんな冷静なんですかにゃ?」
「まぁ端的に言えば、1回目か、2回目かということですね」
「!」
そうにゃ…。小鳥遊先生からすれば、世界の崩壊を経験するのは2度目にゃ。その時も多数の魔法少女の犠牲は見てきたにゃろうし、私たちほど動揺もないのかもしれないにゃ。
「それにしても、私が言うのもなんですが、愛莉はなんであんな所で倒れて……お前!!」
「にゃ!?」
「あの男は?」
先生が姫野先生の方を向くと、驚いた様子で声を張り上げる。私たちも思わず視線を向けると、倒れている姫野先生の隣には1人の男の人、並びにたくさんの顔が見えない手下のような人達が立っていたにゃ。
「あの男は矢野輔。国魔連のトップ且つ、この国のトップも牛耳っている男です。そんな人間がどうして今こんな所に?」
「ご紹介ありがとう。と、その前に。その世界の崩壊の裂け目を直してしまうべきでしょう。皆さん、このテープで直しておいてください」
「はっ!」
矢野さんの一声で、矢野さんの周りにいた人達はテープを持ち、裂け目を修復しに向かう。そんな中、小鳥遊先生が切り出したにゃ。
「今回こんな所までわざわざ来て、一体何が目的なんです?」
「散歩……と言っても誤魔化せそうにはありませんかね?」
「……っ!ふざけないでください!」
矢野さんの態度はどこまでも私たちを舐め腐っているような態度で少し嫌かもしれないにゃ…。
「まぁ簡単な話です。我々の計画は第2段階へと入った。そのために魔法少女を拘束しに来たのですよ」
「拘束……?」
「世界の崩壊ある所に魔法少女あり。全ての魔法少女を拘束するとなれば、これほど手っ取り早いものは無い」
「な!拘束って……私たち悪いことなんて何もしてないにゃ!」
「悪いことですか。強いて言うならば、存在そのものが悪と言った所じゃないかね?」
「存在が……悪?」
「あなた達のような魔法少女が魔法を使うことによって、どれだけの一般人が恐怖しているか。それを理解したことは無いのかい?」
「いや……それは……」
分からないにゃ…。魔法少女じゃない人間が私たちをどう見てるかなんて、魔法少女の私たちが分かりようがないにゃ……。
「まぁいい。総員、捕らえろ」
「瞬間移動!」
「反射!」
「複製!」
後ろから矢野の仲間が私たちを捉えようとしたが、全員が余裕でかわす。この人たち……魔法少女じゃないにゃ!
「魔法少女を捉えようとする役目を魔法が使えない人間にさせるとは、随分と舐められているようですね」
「その油断を待っていたんだ。封印」
「な、なんだ!?」
私を含め3人の体に何かをしかけたようにゃけど、何が起こったかは分からなかった。一体…。
「ぐっ………!」
「葵っち!?」
何が起きたのかは葵っちの様子を見て確認できた。
「葵っちの腕が無くなってる……。ってことは『同化』が切れてるってことにゃん」
「まさか!……ダメだ。私も『瞬間移動』が封じられている!一体何をした!」
「『魔法無効』の能力を『強化』した結果。触れていないものの広範囲の魔法を無効化することが出来る。しかし、それを発動するためには君たちの魔法がどう言った仕草を見せるのか、きちんと把握しなければならない。そのための攻撃だったわけだ」
「魔法を使えなくさせるために、わざと魔法を使わせたってことにゃんか……」
「さぁ、お話はここまでです。皆さん。捕らえてください」
「くっ……」
私と葵っち、それに小鳥遊先生のからだに手錠がはめられ、そして拘束される。
「矢野輔、一体なんのつもり?」
「あなた達には魔法少女収容施設にて今後隔離生活をしてもらう。その第1号から第3号が君たちだ。光栄に思ってほしい」
「か、隔離だって!?」
「何も不自由な生活はさせません。ただ少し、世界の平和を保つための作業ですよ」
「にゃ!そんなこと言われても!私たちはそんなの嫌にゃ!…………にゃ!?」
唐突に首筋に針のようなものが刺さった感触が生まれる。
「あなた達が望む、望まないの話ではない。どれだけ反抗しようと、眠らせて連れていくのみ」
「お前…………」
「さぁ。それでは皆さん帰りますよ。『模倣』そして、『瞬間移動』!」
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「……誰も居なくなったかな?」
砂浜に広がった海藻の下から1人の少女が姿を現す。
「全員、姫野先生も連れてかれちゃったか。私は運よく謎にでっかい海藻の下敷きになってたから見つからずに済んだけど」
白石光が辺りを見回す。
「さて、助けに行くか……。いや、まずは逃避行をするべきって所かな」




