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魔法少女学園  作者: 弟子
2章
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30/53

2章IV 『不老』

「あれ、いつの間に寝ちゃったんだろう。もう朝かぁ」


 窓から床に差し込んでくる木漏れ日、チュンチュンとなく雀の声、心地よい朝。


「ぽかぽかだなぁ、二度寝したっていいよね…」


 床に敷いたふかふかの布団にもう一度体をうずめる。今ベッドは沙那か使ってるから久しぶりに敷いてみたけど、布団ってのもやっぱりいいもんだよね。この体を吸着するような感じが…


 ドガーーーン!!!


「ふぁ!?」


 急に私の部屋の中に爆発音が響き渡る。何事??


 ドガーーン!


「え?なに?なにこれ?」


 凄い爆発音が鳴ってるけど、実際に爆発は起こってない。なんか視覚情報と聴覚情報が噛み合ってなくてすごく気持ち悪い。


「ん、あぁ。ごめんごめん」


 沙那もこの爆発音のせいで起きたみたい。そりゃこの爆音の中寝てられないよ。


「さ、沙那、なんか爆発が…」


「あぁ、ごめんこれ私のスマホの目覚まし」


「……は?」


 め、目覚ましって言った?今この人、正気?


「私あんまり目覚めが良くないから、このくらいの爆音じゃないと起きれなくて…」


「えぇ、それでこれ?沙那趣味悪いよ」


 正直これが鳴るってわかってたんだったら目つぶる前にアラーム切っといて欲しい。ここ私の部屋だよ?


「ごめんって、早くご飯食べて学校行こ?遅刻するよ」


「はーー。まぁいいけど。行こっか」


 そして私たちは制服に着替えリビングへと向かう。今日の朝ごはんは食パンに目玉焼きを載せたやつだ。いわゆるラピュタパンってんだね。


「じゃあ行ってきまーす」「行ってきます」


 そそくさと朝ごはんを食べて学校へと向かう。沙那のアラーム爆音のくせに鳴るのが遅すぎて正直余裕は無い。ノンストップで歩けば間に合うくらいだ。


「今日は昨日みたいな問題起こさないでよ?」


「ん、善処する」


「善処じゃなくて絶対だめね?他の人にも迷惑だったでしょうあれ」


 今日は何事もなく1日を終えたい…。でもこの学園でそんなことあるわけないよな…。


 ✦︎


「みんなおはよ〜」


「あ!あすみっち〜待ってたにゃよ?」


 挨拶をして教室に入ると、私に気づいたたまちゃんがドタドタと足音を立てて私の元へと厳かな様子で近づいてきた。


「ど、どうしたよたまちゃんそんな足音鳴らして」


「どうもこうもないにゃ!昨日本当に大変にゃったんだから!あの後1時間はあの赤髪の小鳥遊…先生?にガミガミと…」


「あはは…ごめんごめん」


 やっぱあの後2人は説教をくらってたのか。確かにボロボロに壊された職員室の中にいたら事情聴取くらいは受けても仕方ないか…。


「ほら、あっちを見るにゃ。葵っちが燃やし尽くされた灰みたいな色の姿で窓際で黄昏てるにゃ。なんかブツブツ言ってるにゃし…」


「入学初日から酷い目に…そもそも僕は…ブツブツ」


「これ、私のせい?」


「4割は姫野先生のせいで4割は沙那のせいもあると思うよ」


「そんな。あすみは私の味方でしょ」


 さすがに庇いきれないってぇ。学校半壊させたのは事実じゃんか。


「あれ?っていうかあそこで喋ってるのって宇田川さんじゃない?」


 窓際でクラスメイトと話している宇田川さんが目に留まり、私は驚きの声を上げる。宇田川さんはだってたしか昨日…。


「あぁ、それにゃんだけどね。この学校の養護教諭の魔法が『蘇生』らしいにゃんよ」


「そ、『蘇生』!?」


『蘇生』とはこれまた強すぎる魔法だ。魔法ってそんなことも出来てしまうのか。


「1日3回だけにゃしいけどね。なんかその先生に診てもらったら生き返ったらしいにゃ」


「蘇生…か。それを見越してあの人は私と本気で…?」


 そうか。姫野先生が沙那と本気で殺り合ったのも、『蘇生』の能力を持つ養護教諭の先生がいると知っていたから。そして沙那に魔法が万能で無いことを教育するために……。そう考えるとあの人もそこまで悪い人ではないのかな?若干口下手な気はするけど。


「はーい。皆さん席に着いて、HR始めますよ」


「ありゃ?姫野先生じゃないの?」


 時間ギリギリに教室に着いたので、直ぐにHRが始まり、先生が教室に入ってきた…。が、入ってきた先生は姫野先生ではなく、昨日から何かと関わりのある小鳥遊先生だった。


「姫野先生は…まぁなんというか、1日だけ有給を取得されました」


「あぁ〜」


 一同納得の様子、そういうことしそうって感じの人だし。


「というわけで、今日1日だけ私が担任の代わりを務めます。と、言いましても本日は明日からの合宿の話ですね。それの班決め等になるのですが」


 本当にあるんだ合宿。私生きて帰れるかな。


「先生!合宿では何をやるんでしょうか。自分で言うのもなんですが、私魔法が使えないので魔法を強化できるまで帰れないとかだと詰むんですけど…」


「心配しないでください。きちんとこの合宿には皆さんに課す目標があります」


 そう言うと、先生はポケットから小さな赤色のブレスレットのようなものを取りだして教卓の上に置く。


「皆さんにはこのブレスレット型の魔法グッズ、マジックリングを使いこなしてもらいます」


「マジックリング…?」


 全く知らない物がでてきた。魔法グッズというのは聞いたことがある。国際魔力連合が事業を展開している魔法を応用することが出来るグッズのことだ。

 確かポーションという魔法を貯めておく器具と、公の人間が使う、魔法が発現しているかどうかを確かめる魔法鑑定装置しかなかったはず。マジックリングなんてものは聞いたことがない。


「魔法グッズは皆さんご存知の通り、国際魔力連合が出しているグッズのことですが、この度新作が出まして、それを試験的にこのクラスで導入しようとのことです。まだ世に出回っている商品では無いので、学校とそして合宿先以外での使用許可は出ておりませんが」


「それで小鳥遊先生、僕たちはその魔法グッズをどう使えばいいのでしょうか」


 葵ちゃんが口を挟む。私もそのブレスレットみたいなやつをどう使えばいいのか検討がつかない。


「そうですね。御託の前に私が使ってみましょうか。まずどちらかの腕にこのブレスレットをはめます」


 小鳥遊先生がブレスレットを腕にはめると、そのブレスレットはがっちりと先生の腕を掴み、固定された。少しの衝撃では微塵も動かないほどに。


「そしたら体内の全ての意識をこのブレスレットに向けてください。まるで体内の魔力をこのブレスレットに集めるかのように…」


 ブレスレットは光を帯びていき、赤く染っていく。その光が強くなっていき教室中を覆うと…


「マジックリング、起動!」


 ひと声先生が放った瞬間、目を開けられないほどの光線が私を襲い、視線を遠ざける。目を手で覆い、その隙間からかろうじて小鳥遊先生の姿を除くと、そこではまるで変身かのような動作が行われていた。

 短かった赤髪は長くストレートなロングへと変化し、スーツもフリフリのスカートを纏った可愛い衣装へと変化している。手は白い手袋のようなものがハマっており、胸元には大きなピンクのリボンが付いている。これはまるで…


「まるで、テレビに出てくる魔法少女じゃないか…」


 葵ちゃんが私の思ったことを代弁する。そうだ。この感じはプリキュアとかのテレビに出てくる魔法少女の姿そのものである。まさか、魔法を使える私たち(使えないけど)にはこうなる素質がある的な…?


「ふぅ……。これでブレスレットの使い方は終わりです」


 周りの人はみんな呆気にとられている。なんか、先生若返った…?背も縮んでいるし、中学生みたいな容姿になっている。


「な、なんにゃ?これは若返りグッズか何かにゃ?」


「ふふ、確かに私は今13歳だった時のような姿をしていますね。ですが、これは魔法を最適に使うための姿であるだけ。若返りは本質では無いですね」


「では一体これは…?僕たちの魔法に関係しているものなのでしょう?」


 そうだ。魔法合宿で使うと言われている以上、魔法に関係しているには違いない…。だけど、魔法は返信しなくても使えるわけだし…。


「簡単に言いましょう。これは魔法の『強化』を測るアイテムです。私の魔法は『瞬間移動(テレポート)』であり、自分並びに自分と触れているものを行ったことのある任意の場所へ移動できる魔法なのですが…」


 先生が目を瞑ると、先生の体。そして教室全体が赤色のオーラで覆われた。


「え、え…!?」


瞬間移動(テレポート)!」


 ブォン、という映像が切り替わるかのような音と共に、窓の外の景色が青色で染まる。ここは…


「う、うみ〜!?」


 海だ!教室ごと砂浜へとワープされている。す、凄い!ここは無人島かどこかかな…?人の気配は全く無いし。


「とまぁ、こんな感じで、私の魔法の場合は単純な効果拡張が挙げられます。私の存在している空間の1部を切り取ってまるごと移動させるという風にですね」


「なるほど、これは確かに面白い。私の魔法も早く『強化』したい…」


 魔法バカの沙那には確かに持ってこいの代物だ。でも私もこれには興味がある。だって…


「これなら私が魔法を使えるようになる可能性だってある。使ってみたい!」


「確かにあすみっちの魔法が開花される可能性だってあるにゃんねこれ。私も『反射』がどう『強化』されるか知りたいにゃ」


「うーん。『心読』の『強化』ですか…。どうなるのか全く検討がつきませんね…」


 各々がこのマジックリングという魔法グッズに期待をよせ、口々に言葉を交わしている。そんな中先生がパンと手を叩き、皆の注目を集めた。


「それでは、皆さんに魔法グッズをお配りしましょう。そうしましたら、その時点より魔法合宿が始まりますので各自気持ちを整えておいてください」


 やった!マイマジックリングが配られ………あれ?


「今先生、魔法合宿が始まるとか言ってなかった…?」


「はい。今から合宿を開始します。場所はこの無人島、期間は今日から2泊3日ですね」


 あちこちから動揺の声が聞こえる。え、今から合宿?


「た、小鳥遊先生。僕たちは明日から合宿って聞いてたんですが…」


「はい、そう伝えておりましたが、世界の崩壊はいつ何時起こるか予想できません。ならば訓練も予想できない時にやるのが合理的でしょう?」


「そ、そんな…」


 まずい。何の準備もしていない…。


「大丈夫でしょ。あすみは私と一緒に行動しなね」


「沙那ぁ…」


 こうして私たちのはちゃめちゃな魔法合宿が幕を開けることになったのだった。





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