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魔法少女学園  作者: 弟子
1章
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1章XVI 『崩壊』

 今日は2075年5月6日、記念すべき愛莉と付き合ってから1日記念日だ。私と愛莉って本当に付き合ったんだよね…?実感が湧かないや…。昨日までの出来事がどうにも夢心地過ぎて現実味がない。いや、もしかしたら本当に夢だったのかもしれない。1回事実確認を取らないとやっぱりこういうのは認められないんじゃ…。


「紗夜ちん〜やっほ、一緒に学校行こ〜」


「ねぇ、愛莉、私達ってちゃんと付き合ったんだよね?」


 不安になりながら私は愛莉に確認をとる。


「も〜めんどくさいメンヘラ彼女みたいなこと言わないの。昨日のことは夢じゃないって」


「だ、だよね〜。もう私ったら何言ってるんだろう…」


 言われてみればちょっとめんどくさい女感があったかもしれない。私ってもしかして無自覚で重い女なのかなぁ。やだなぁ。


「紗夜ちんってばぁ〜、もう1回キスしてあげよっか?」


「ちょっ!そういうのは公の場でしちゃだめなの!もっと節度を持って…」


 あぁ、幸せだ。愛莉とこうやってバカみたいな会話をして、幸せを分かち合う。こんな日常がずっと続けば良かったのに…。

 心の中で思ってることがつい過去形になってしまった。突如大きな音がなり響き、それに反射的に反応した私たちは、進行方向の先を見て驚きの表情を浮かべる。だって、今登校して向かっている学校の目の前、だってあれは…実際には見た事がなかったが、その禍々しい様子と鳥肌の立つ不気味さから確信が持てた。


「あ、愛莉!あの切れ目!!」


「うん、間違いないね。世界の崩壊だ。まさかこんな時に来るとは思ってなかったよ。急ごう紗夜ちん!」


 私と愛莉は急いで駆け出す。切れ目が見えるのは学校の目の前の空間だ。恐らく校庭の真上あたりだろう。こうしている間にも切れ目から空間がペリペリと剥がれていく。教科書で見た通りだ。初めてなので少し戸惑いがあったが、あれだけ学習を積んだ私たちだったら大丈夫だろう。


「愛莉!あれ大丈夫かな!?」


「余裕っしょ〜何の心配もない。見た感じ教科書通り、いつもの訓練通りやっていれば大丈夫そうだね〜」


 愛莉の考えも私と同じようだ。文献通り、マニュアル通りに対処をすればよい。歴史上でも2062年の直近である世界の崩壊は最小限の被害で済んだという記録がある。私たちなら全く問題が無いはずだ。


「だね!急ごう!」


 ✦︎


 そしてものの10分程度で私と愛莉は学校に着いた。学校には既に百鬼先生含め多数の先生方と、恐らく『速度変化』と『瞬間移動』で真っ先に駆けつけたのであろう速水さんと小鳥遊さんがいた。


「あ、彩夏さん!結愛さん!状況はどうなってるんですか?」


 その場で退屈そうに待機していた速水さんと小鳥遊さんに私は声をかける。


「お、紗夜か。今は先生方が世界の崩壊の裂け目を修復するのにどうしようか悪戦苦闘してる所さ。なんか聞いた限りによると、今までよりも切れ目のデカさが数百倍規模でデカいらしくてよ。予想していた修復キッド的なのだと上手くいかないらしい」


 修復キッド、確かすごく大きいテープみたいなので空間を修繕する…みたいなやつだ。最も、それらの修繕は裂け目にかなり近づくことになるため、私たちのような少女ではなく大人が行うことになっているので、私たちは詳しく知らない。


「そうなのか〜そりゃ大変だな〜。私の命令もあの次元の裂け目みたいなやつを閉じることは出来なそうだしねー。この世界の物理に反する事象だと思うから」


 愛莉が残念そうに微笑む。愛莉の魔法は基本的にこの世界物理法則に則っている。もちろん、無機物に意志を持たせた結果、そいつらを引き寄せる際に空中に浮く位はあるが、空中に浮くという事実はこの世界では何ら珍しくない。風が吹けば紙は浮くし、ボールを投げれば球は宙に浮く。要するに愛莉の魔法は物事を物理的に不可能な状態にすることが出来ないわけだ。

 そして、その物理がこの裂け目に通用するかどうかは未知数である。あれがこの世界のものと言うのであれば可能であるだろうが、愛莉が感じている通り恐らく別次元の存在、愛莉の魔法の有効範囲外なんだろう。


「は、はい。だから私たちは魔獣がもしもこの世界に入り込んできたら撃退するよう待機させられているところです」


 なるほど、魔獣退治か。それならいつも訓練でやっている事だしうちら生徒でもできるだろうという判断なのだろう。裂け目から獣のようなものが入り込んだ時に容赦なくボコす役割ってことらしい。


「魔獣って迷い込んでくるとしたらあの裂け目から入ってくるんだよね?」


「は、はい。そうですだから魔法が使えない紗夜さんは出来るだけ離れた方がいいです。わ、私みたいに行動力のある魔法を使える人間が裂け目に近づいて感じを続けますので…」


 小鳥遊さんから遠回しな戦力外通告を受ける。が、別になんの感情もない。いつも通りのことだ。私だって無茶に近づいて魔獣に襲われ、命を失いたくは無い。


「おう、そうだな。せんせー私達ちょっと裂け目の様子監視するから〜」


「そ、それでは私行ってきますね」


「がんばー」


「おう、疲れたら戻ってこいよ〜何時でも交代してやるからな〜」


 小鳥遊さんが監視役を引きつけることになった。この中で1番機動力があるのは『瞬間移動』持ちの小鳥遊さんだろう。

 みんなやる気があっていいな。こう、実際に世界の崩壊が起こってみると、魔法が使えない私がいかにお荷物かということを再認識してしまう。まぁ大人しくして待っていよう。

 そう考えていると小鳥遊さんが『瞬間移動』で裂け目の近くまで移動して行った。あの近くは確かかなりの引力がかかるため、裂け目を視認はできるが、距離を置いた場所から、裂け目の向こう側を監視するという体制を強いている。落ちそうになっては『瞬間移動』を繰り返すことで位置を保ってる。移動の距離が少ないと体力の消耗は少ないらしいけれど、それでもあんな連続で使ってたらかなり疲れそう。

 しかし、いざ現実で裂け目を見るとかなり不気味だ。繋がっているはずの空間。向こうには学校の校舎が見えるはずなのに、実際に見えているのは紫とピンクの中間の色をしている空のようなもの、禍々しい色の海のようなものまでが私の目では確認できる。あれがあの世と言われているのもいささか納得だ。

 そして裂け目の形は今回は稲妻の形のように空間が裂けている。そこからペリペリと空間が剥がれ、稲妻の先端からは空間にヒビが入ってるかのような線が…

 ん…?空間にヒビが入ってるかのような線が…このヒビどこまで続いている?辿って辿って…これは…


「結愛さん危ない逃げて!!空間にヒビが!!!」


 自分が出せる精一杯の大きい声で叫ぶ。しかし、小鳥遊さんがいるのは私のはるか上空だ。何度も大きな声を出すが、小鳥遊さんには届かない。


「どうした!?紗夜!」


「紗夜ちん、急にどしたの〜」


 速水さんと愛莉も急に至近距離で叫ばれて驚いたのだろう。私の様子に困惑している。が、状況を察した速水さんと愛莉も声を届かせることに協力してくれる。


「え、えっと、ひ、ヒビ…?」


 2人の加勢もあってか、小鳥遊さんの耳に私たちの言葉が届いた。よかったよかった。


「あ、届いた!結愛さんそこヒ」


 途端、世界に爆音が響いた。先生方は困惑していたが、私達には何が起こったかが分かった。なぜなら、私が今進行形で見ていたものが変化したからだ。空間に行き渡っていたヒビが崩壊した。そこから私の網膜に入った光景は私の言葉を消失させた。


「おい!!!!結愛!!!」「結愛さん!!」「え、小鳥遊さん…?」


 ヒビが崩壊したところから姿を現したのは魔獣だ。それもサソリ型である。いや、今形はどうだっていい。問題はそのサイズだ。私たちが訓練で相手にしてきた模擬魔獣は大きくても50cm程度、犬くらいの大きさだ。

 でも今我々の目の前にいるサソリ型の魔獣はスケールが違う。10m…いや15mはあるか…?少なくとも高さに関しては後ろにある校舎と同等レベルの大きさをしている。


 そして、サソリ型故その特徴はしっぽだ。その魔獣には長い鉄のようなしっぽがついていた。そしてその先端には…


 赤く染っている小鳥遊さんが刺さっていた。

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