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魔法少女学園  作者: 弟子
1章
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1章XIII 『速度変化』

 次に私たちが向かったのはコーヒーカップだ。3:3で分かれて乗ることになり、私は小鳥遊さんと速水さんと一緒に乗ることになった。残りの3人は魔法で激しいコーヒーカップになりそうだし…。


「紗夜…だっけか?今日は誘ってくれてありがとうな!」


 速水さんが声をかけてくれた。とはいえこっちのグループもほぼ初対面すぎて中々気まずいものがあるな…。


「いえ、速水さんが楽しんでくれたならこっちも嬉しいです…」


「そんなかしこまらなくてもいいっての、下の名前で気安く呼んでよ。彩夏って、多分結愛もそう思ってるぜ?」


 こ、これが陽キャの距離の詰め方…!いきなり下の名前呼びはハードル高くありませんか…?でも私の事速水さんいきなり紗夜って呼んでくれてたし、普通の事なのかな。それに名前を呼ばれてあんまり嫌な気分になることは無いし。


「う、うん。な、名前の方が仲いいって感じするから…」


「あ、はい。じゃあこれからよろしくお願いしますね。彩夏さん。結愛さん」


「さんも別に付けなくていいけどな。まぁ壁は固いか。とりあえず乗ろうぜ」


 やったぁ。多分今私には友達が増えた気がする。愛莉に続き2人目と3人目の友達だ。涼風さんと委員長はどっちかと言えば知り合い…?というかなんか顔見知りって感じがするしなぁ…。特に委員長からは誰とでも分け隔てなく会話するうちの一人って雰囲気を感じずにはいられない。


「結愛って確か乗り物酔いしただろ?あんまり回さない方がいいよな」


 流石親友同士ってところか。なんでも知ってるなぁ。私も愛莉のことだったら基本分かるけどね。…って何を張り合ってるんだろう…。


「そ、そう。でも、今日は酔い止め飲んできたから、だ、大丈夫」


「本当か?よーしじゃあ本気で回すか〜」


 おっと…?速水さんの本気って割と怖くないか?私もそんなに激しいコーヒーカップは望んでないぞ…?もうちょっとゆっくりくるくると回りながら景色を楽しめる位が…。

 でも、速水さんの能力『速度変化』は、自身に対する強化魔法のはず。向かいのコーヒーカップみたいな大惨事にはならないだろう。

 向こうでは愛莉の命令で速さの上限を超えたコーヒーカップが姿をまともに観測できないレベルのスピードで回転している。ちょっと風も飛んできてるし音速近いんじゃない…?


「よーし行くぞ〜」


 速水さんがコーヒーカップを回し始めた。その手は止まらずにどんどんと回し続けて…


「ちょちょ!!やばいやばい速すぎる!!」


 コーヒーカップが唸りを上げ始めた。地面との接合部分からキーキーと金属が擦れる音が聞こえる。


「そんな事ないだろ〜もっと速くするぞ〜」


「わ、私もは、早すぎる気が…」


「なんだー?情けない奴らだな〜」


 私と小鳥遊さんはもう降参である。体が吹き飛ばされそうになっていた。

 それでも速水さんの速度をあげる手は止まらない。というか速水さん涼しい顔をしすぎでは…?


「あ、彩夏はなんでそんな平気なの…」


「ウチか?そりゃ自分の速度を変えてるからに決まってるだろ〜」


 速度を変えている…変えているからといって平気なものなのか…私は今にもコーヒーカップの外側に顔面が飛ばされそうな勢いだと言うのに…まさか!


「紗夜は勘づいたか。ウチは今このコーヒーカップの中心に向かって速度を持たせているんだよ」


「ち、中心に向かって…どういうこと…?」


 ここで速水さんのコーヒーカップの加速が止まり、一定の速度でコーヒーカップが回り始めた。


「何も速度ってのは進行方向へ動くスピードってわけじゃないってことさ。速さじゃないんだ。お前らが苦しんでるのは遠心力によって外側に引っ張られてるからだ。いわゆる慣性ってやつだな」


「なるほど…」


「ウチらは今コーヒーカップに乗ってるから回転座標系の非慣性系にいる。ってことはその動きに対する慣性力が働くんだよ。外側に向けてmrω²の力が、速度にするとrωだけの速度が外側に向かってかかっているのさ」


「む、難しくて分からなくなってきました…」


「だから自分自身にコーヒーカップの中心に向けてrωだけの速度を加えれば、速度が打ち消されて平気でいられるってわけよ」


「彩夏さんの魔法ってそんな小回りも効くんですね」


「あぁ、ウチの魔法の使い道は大きく2つ。1つは純粋な速さを操作すること。自分の意思に基づく動作、並びに肉体そのものの速度を操作できる。体だけ遅くなって、血の流れが速すぎて体が爆発とかシャレにならねぇからな。速くすれば世界が丸ごと遅く感じるようなもんだな。2つは自分の体を物体と捉えて、そこには意志とは無関係の速度を与えること。こっちの使い方はあんましないけどな。急激に速度を加速無しで変えたいときに使えるやつだ」


 へ、へぇ。そんなに小回りが効くような効かないようなよく分からない魔法だったのか。上手く扱うのにはかなりの知識が必要そうだ。というより、私が意外に思ったのは


「彩夏さんってその感じで理的なキャラだったんですね。てっきり勉強とか苦手な方かと…」


「お、なんだなんだ?悪口か?まぁギャップ萌えってヤツよ」


「コーヒーカップをお楽しみいただきありがとうございました。間もなくアトラクションは停止致します。完全に停止しましてから…」


 風に揺られながら会話をしていたら、コーヒーカップの終わりの時間のようだ。普通に吐きそう。ちょっと終わったらトイレに駆け込もうかな。


「え?もう終わりなのか?おい、ちょっと待ってくれ」


 速水さんがなんか待ったをかけているが、コーヒーカップは減速している。それと同時に


「いたたたたた!!!痛い痛い!!」


 速水さんがコーヒーカップの中心の柱にめり込んで行った。そういえばこの人の魔法って一定時間付与制なんだっけ。


「あの、彩夏さん。逆側に同じ大きさの速度を加えればいいんじゃ…」


「そ、その手があった!」


 すると、速水さんの周りが赤橙色のオーラに覆われて、速度変化の残り秒数分だけ逆速度変化を起こし、速水さんのめり込みが止まった。やっぱりこの人アホキャラなのでは…?

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