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97.電設のヒデオさん、消す。


現役魔王と、四天王ポジションの三人組。すでに処理済だが、後処理に困った。


今後の安全性を考えると、生かしておけない。しかし、迂闊に始末もできない。


近視眼的には、ここで始末してしまえば、安全を確保できる。しかし、大局的にはマズい。ストーカーの被害者がストーカーを物理的に始末して安全確保するのと同じくらいマズい。


まがりなりにも現役魔王。その息の根を止めた下手人ともなれば、大勢の部下達から血眼になって狙われる危険がある。ある者は、忠誠心から。またある者は、功名心から。




どう転んでも、ムチムチさんは狙われる。


現役魔王を生かしておけば、クローンの存在を抹消するために狙われる。この場合、現役魔王直々に狙われるが、襲撃者は少数に留まる。


現役魔王を始末すれば、クローンとしては狙われなくなるが、別の理由で部下達から狙われる。この場合、襲撃者一人一人は魔王より格下だが、人数は膨れ上がる。


ついでに言えば、いずれの場合も、第二目標として自分達全員が狙われる可能性がある。


生かしておいても、始末しても、リスクがある。どちらを選ぶかの判断は、第一目標として狙われているムチムチさんに任せた。


状況的に、自分はオマケだ。勝手に決められない。



「このまま捨て置くべきだろうな」


「いいんですか?」


「良くは無いが、仕方が無い。禁忌の生存を知る者がいなくなったとしても、身上を隠して生きる事には変わりないのだ。今世の私は――……いや、私達三人は、そういう宿命だ。どうあれ身上を隠して生きるのなら、世の混乱が少しでも小さい道を歩んだ方がマシと言うものだ」


「……………………」


「もっとも、生存を完全に知られているのは私だけだが。今代の魔王に知られているのは面倒極まり無いな」


「……本当に、いいんですか?必要なら、その、やりますよ?」


「無用だ。この程度の面倒事で手を汚す必要は無い」


「……そうですか」


「そうだよ」



ムチムチさんに明言されて、正直、ホッとした。


ホッとしてしまった自分に、少しだけ凹んだ。


始末しない合理的な理由は、ある。だが、それ以上に、嫌だ。感情的に、嫌だ。特に深い理由も無く、ただただ嫌だ。


始末するのは、嫌だ。たとえそれが必要だったとしても。


行動の必要性を理解するのと、実際に行動できるかどうかは、また別の話。合理的必要性の有無だけで割り切って行動できるなら、苦労は無い。


平和ボケ国家で生まれ育った人間の中には、生魚と目が合っただけで三枚おろしできなくなる人がいる。さすがに自分は生魚程度では嫌な気分にならないが、海千山千の元魔王様から見れば、五十歩百歩だろう。


その辺の事、見透かされて気遣われた気がする。



「連中の情報を確認した限りでは、配下は禁忌について知らされていないようだ。作戦名は『魔女狩り』、私達の素性については『魔眼を使う女がいる』という情報だけのようだな」


「全てを知っているのは魔王のみ、という事ですか?」


「そういう事だ。……まあ、上位陣なら何かしら察していそうではあるが」



ムチムチさんは、丸眼鏡の縁を弄りながら言った。現役魔王の発明品らしい。


サングラス型ウェアラブル端末の魔道具。動力は魔力。性能は携帯端末と同等。


幹部用の高性能品で、極めてユーザビリティに優れている。誰でも使える。


幹部用の端末なのに、情報の閲覧にIDやパスワードが不要。誰でも使える。


この世界にも、暗号化や封蝋など、情報セキュリティの概念はある。しかし、デバイスに対するセキュリティは緩い。現役魔王の発明品が常識外れに先進的すぎて、情報セキュリティ関連技術が置き去りになっている。おかげで、端末一つで機密情報ガバガバである。


物造り偏重の技術的アンバランスが生んだ悲劇。自分達にとっては都合が良い。



「……ふふっ、良い拾い物をした」



ムチムチさん、嬉しそうに笑ってた。グラサンしてても笑顔が美しい。


地面に落ちてる物を拾ったんだから、確かに拾い物で正しい。実質ほぼ強奪な気がするけど、気にしたら負けだ。



「討ち漏らした時の備えとして、部隊が展開しているな」


「地面の下に潜んでいるのが、まだいるって事ですか?」


「いや、地上に配置している。いかに魔王と言えど、あれほど質の高い魔道具を大量に用意するのは無理だ」


「でも、兵士の影も形も見えませんよ?」


「かなり距離を取っている。おそらく、部隊を展開したのは本当に万が一の事態に備えてのもので、できれば禁忌を見せずに終わらせたかったのだろう。……これなら、突破できる目がある。貴殿のゴーレム車を頼る事になるが……」



ムチムチさんは、申し訳無さそうな顔をして、この後の作戦を提案してきた。


提案された内容は、至極シンプル。大型バスによる強行突破だった。




敵の包囲網は、すでに完成済。しかし、包囲が広く、薄い。


包囲の構成は、魔道具が多数と、兵士が少数。


対人用の機雷のような魔道具が、一帯を取り囲むように帯状に設置。


兵士はポツポツと配置。戦闘要員、兼、魔道具の運用のための人員。


この構成なら、大型バスで強引に突っ切れる。




本来は、この包囲網でも十分だったはずだ。


普通に戦闘が発生していれば、討ち漏らしたとしても、疲労と負傷で動きが鈍る。弱っている所を機雷で仕留めれば、終わりだ。


仕留め損ねても、足止めにはなる。その場にいる兵士が時間を稼ぎ、周囲から応援が駆け付ければ、終わる。


討ち漏らし対策として見れば、さほど問題は無い。


残念ながら、今回はそうならないけど。



「……本当に、全然見えないな……」



強行突破は良いとして。


今いる場所からは、機雷も兵士も見えない。


包囲網の具体的な情報は、自分でも確認しておきたい。特に、兵士の配置図を直に目で見て確認したい。


口頭の伝達では、伝達漏れや誤解が出る恐れがある。



「ムチムチさん。そのサングラス、私にも貸してもらえます?」


「……っ……」



グラサンを借りようと手を伸ばすと、ムチムチさんが思いっきり後ずさった。



「な、何故だ!?」


「いや何故って、普通に確認したいだけなんですけど」


「……っ……ダメだ!」


「えっ、なんで?」


「そ、それは、その……、あ、あの、その……。こ、これは私の物だ!私が拾ったのだから、私の物なのだ!ヒデオ殿にはあげないぞ!」


「あ、はい」



お気に入りのオモチャを取られたくない子供か。


そう言えば、生後4ヶ月だった。



「別に取ったりしませんよ。少し貸して欲しいだけです。確認したらすぐ返しますから、少し貸してください」


「だ、ダメだ!」


「本当に少し借りるだけですよ。パッと確認してパッと返しますよ。それでもダメですか?」


「それは、その……。そ、そうだ!魔王しか知っちゃいけない禁忌の情報とか載っているのだ!いかにヒデオ殿とて、これは貸せない!」


「……さっき、部下には禁忌の事が知らされてないって言ってませんでしたか?」


「ふぁっ!?……そ、それは、その……、き、気のせいだったのだ!」


「あ、はい」



正直者だな、この人。物凄くわかりやすい。


わかりやすすぎて、逆に追及しづらい。


R18指定の情報を秘密裏に閲覧していた親戚のチビどもを思い出す。あんまりにもバレバレすぎると、何故か追及する側にも罪悪感が発生する。あれ本当に何故なのだろうか。


それはさておき。



「わかりました。それはムチムチさんの物です。取りません」


「そ、そうか!」


「包囲網を抜けるのに必要な指示は、お任せします。いいですよね?」


「ああ、任された!」



お返事、とっても元気。


包囲網に閉じ込められた現状では、下手に追及して不和を生むのは悪手。強行突破に成功するまでは、見て見ぬフリして任せた方が得策だろう。


無事に包囲網を切り抜けた後で、追及しよう。



「では、戻ろうか、ゴーレム車に」



確認が済み、次の行動も決まり、ムチムチさんは大型バスに戻ろうとした。


自分も一緒に戻ろうとした。


戻ろうとして、ふと、思い付いた。



「……知っているのは魔王のみ、なんだよな……それなら、行けるか……?」



ふと、思い付いた事を試してみたくなった。



「少し待ってください」


「ん?どうした、ヒデオ殿?」


「半分ダメ元ですけど、やるだけやっておこうかと」


「やる?何を?……先程も言ったが、貴殿が手を汚す必要は無いぞ?」


「しませんよ。これでも綺麗好きなんで」



通勤カバンから、フェア謹製スタンガンを取り出す。封印解除。



「ねえ、フェア。こいつの出力、もっと上げられる?」


「はい。出力をもっと上げます。ますたー」



フェアの可愛い手が、何故か付いてるツマミに触れた。


グルルルンッと回転した。



【Limiter removal! Power output 1200% over! Take it easy!】



なんか出た。超ヤバそう。



「まあいいか。半分ダメ元だし、気楽に行こう、気楽にね」


「はい。気楽に行きましょう。ますたー」



スタンガンの端子を、地面に半分めり込んでるバスケットボールに押し付けた。


もし、たった一人の、今日一日分の記憶を消し飛ばせば、どうなるか。


いや、今日一日分もいらない。虫が信号を受信し、返信した、あの時以降の記憶だけでいい。もしも消し飛ばせば、どうなるか。


元魔王のクローンは、生死未確認の状態に戻る。


状況証拠的に推定死亡99%の状態に、力尽くで押し戻す。


おあつらえ向きに、さもクチュクチュしてくださいと言わんばかりに頭頂部が地面から露出している。邪魔な髪の毛も生えていない。まさに記憶を綺麗サッパリ消し飛ばすのに絶好のシチュエーションである。


本当は直接電極ブッ刺した方が有効そうだけど、ナマモノにそれをやるのは抵抗感がある。生魚を三枚におろすより、ちょっと嫌。そこで、スタンガン。


フェア謹製スタンガンの超過剰出力があれば、外側からでも電極ブッ刺しと同等の効果を得られるかもしれない。



「ヒデオ殿?何を――」


「やってみる価値ありますぜ。ポチッとな」



バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂンッ。



「ひ、ヒデオ殿ーッ!?」



瞼を閉じても閃光で目が痛い。グラサン欲しい。後ついでに耳栓。



「……よし。こんなもんかな?」


「どんなもんなのだ!?」



数秒の放電により、イイ感じにプスプス煙が立ってた。焦げ臭い。


念のために言っておくと、新車を壊されたツケを払わせている訳では無い。


この行動には、合理的必要性がある。だから、実行した。ただそれだけである。



「貴殿が手を汚す必要は無いと言ったぞ!?」


「汚してませんよ。むしろ汚さないためにやったんです」



ちょっと記憶を消し飛ばそうとしただけである。


これで実際に消し飛ぶかどうかは知らんけど。




命は取らない。


血は流れない。


成功すれば丸儲け。


失敗しても平常通り。


正真正銘ノーリスク・ハイリターン。




大体からして、こいつらが襲撃してきたのは、元魔王のクローンの破壊が目的だ。つまり、ムチムチさんを破壊しようとやって来た連中だ。


こいつらには、ムチムチさんを生かしておく気が無かったはずだ。それなのに、こっちは生きたまま五体満足で見逃してやるのだから、温情な処遇だろう。感謝して欲しいくらいである。


まあ、黄玉が感謝するとは思えんけど。だって黄玉だし。期待薄。



「うまくすれば、これで今日の記憶は消えたはずです」


「こ、これでか?」


「あの虫が起きてからの記憶さえ消せば、ムチムチさんが執拗に狙われる理由も消えるでしょう」


「……っ……」


「まあ、半分ダメ元なんで、うまい具合に忘れてくれるかは賭けになりますけど。確実な手じゃなくて、すみません」


「……っ……」



嘘でも、絶対大丈夫とは言えなかった。クローンの生存の根本に関わる話だけに、安易な断言はできない。


それでも、少しでも安心して欲しくて言った。我ながら、気休め感が酷い。



「……なんと不義理なのだ、私は……ヒデオ殿は、私の身を案じているのに……」



ムチムチさんは、丸眼鏡の縁を弄りながら顔を伏せた。



「……ヒデオ殿。それでは意味が無いのだ」


「そ、そりゃまあ確かに、ギャンブル要素ありますし、意味が無いと言われたら、そうなんですが……」


「違う!そうではない!……そうではないのだ。悪いのは、私なのだ……」



黒いグラスが邪魔で、ムチムチさんの瞳が見えない。



「……私の生存が露見したのは、確かに今日の事だ。だが、生存の可能性を強く疑われたのは、もっと前なのだ」


「もっと前?」



思ってもいなかった事を言われた。



「……すまない。地下工房で、罠を踏んでしまったようなのだ」


「罠を踏んだ?」


「……本当に、すまない」


「ええっと……。地下工房って、途中にあったアレですよね?」



海に行く前に立ち寄った、地下施設への入口の事を思い出した。


自分は地下には入らず、こっそり盗聴していた事も思い出した。


古傷のように、罪悪感が疼く。



「……あれ?でも確か、あの時は、何事も無く出てきましたよね?みんな平気そうだったんで、何も無かったと思ってたんですけど……」


「私もそう思っていたのだが……、知らない内に踏んでいたのだ。仕掛けられていたのは、鳴子の罠を高度にしたような罠だ」


「鳴子の罠?それって、紐を踏むとガラガラ鳴る感じの奴でしたっけ?」


「普通はそうだが、あの場にあったものは違う。紐は使わず、その場では音も鳴らず、罠を踏んだ事に気付かせない。しかも、運用には魔力を一切用いず、わずかな魔力場の乱れも起きない。罠を踏んだ者がいるという事実だけを、遥か彼方にいる者に知らせる。常識外れの罠だ」


「……そうですか」



自分にとっては常識的な代物です。


……とは言いづらい雰囲気だった。




ガサ入れの後、お取り潰しになった、違法クローン研究所。


通路の途中に、赤外線センサー的なモノが設置されていたらしい。いや、もしかしたら、本当に赤外線センサーの可能性もある。


何にせよ、魔力を使わないセンサー類が後付けされていた。


黒夫、魅雪、ムチムチさんの三人が地下施設に立ち寄った際、センサーに引っかかり、侵入した事がバレた。


今回の騒動の発端は、それが原因らしい。




こちらの世界では、高度な道具は魔力で動く。


電子機器が稼働すれば電磁場の乱れが起きるように、魔道具が稼働すれば力場の乱れが起きる。


ノイズを低減するためのノウハウはあっても、ノイズを完全に消す事はできない。それがノイズというものだ。


魔力に敏感な者であれば、力場の乱れによって魔道具に気付く。逆に言えば、力場の乱れを感じ取れないなら、高度な魔道具は無い、という事になる。


そういう意識の盲点を突いた罠だ。




地味に嫌らしい罠を設置してくれたものだ。


黄玉の性根が知れる。


まったく嫌な黄玉だ。主人公気質の皮を被ってるけど、本性は違うに違いない。



「要するに、直近1週間分の記憶を消せばいいって事ですね!任せてください!」


「……………………えっ?」



無駄に落ち込んでるムチムチさんを元気付けようと、意識して明るい声を出した。


ムチムチさんは何にも悪くないんだから、落ち込むだけ無駄なのに。


相変わらず、思い込みが激しくて面倒な人だ。ホント面倒臭い。




あえて言うまでも無い事だが、あえて言う。諸悪の根源は、違法クローン研究所である。どっかのクソどもが違法な研究なんかに手を出したから、こんな事になっている。


そして、次点で悪いのが、黄玉である。


違法クローン研究の関係者は、犯罪者として裁かれて当然。しかし、それはそれ、これはこれ。混同してはいけない。


ただ生み出されただけのクローンの何が悪い。


クローンが犯罪行為を働いているなら、犯罪者として裁けばいい。だが、何も悪い事をしていないクローンを、ただクローンと言うだけで消そうと言うなら、それは消そうとしている方が悪だ。


そんな簡単な事もわからないなんて、やっぱり黄玉はダメだ。


まあ、ムチムチさんは割と頻繁にお皿割ったりコップ割ったりする人なので、全く何も悪い事してないって事も無いんだけれども。


そういうのは家庭内で裁くんで、ダメな黄玉はお呼びじゃない。


お呼びじゃないダメな黄玉には、引っ込んでもらう。


ツルッツルの黄色いサッパリしたハゲ頭には、中身も綺麗サッパリしてもらおう。



「安全マージン含めて、10日分くらい行っとくか。それじゃあ、ポチッとな」



バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂンッ。



「ひ、ヒデオ殿ーッ!?」



良かった。ムチムチさん、元気を取り戻したみたいだ。



「よし。これで大丈夫ですね」


「いやこれ大丈夫なのか!?」



数十秒の放電により、モクモクと黒い煙が立ち昇っていた。かなり焦げ臭い。


大丈夫かな。大丈夫だな。きっと大丈夫のはず、多分。


大型バスに頭を踏ん付けられても地面にめり込むだけで済むくらい、ドワーフの頭は固い。人間ならR18スイカ割りになってる。


ドワーフは岩頭。ちょこっとスタンガンで岩頭にパチンッとやったくらいでは、命に別状は無いだろう。精々、ここ10日分の記憶が消し飛ぶ程度で済むはず。


現役魔王の頭の固さ、信じています。


他は一切信じるに値しない黄玉だけど。



「それじゃあ、戻りましょうか、ムチムチさん」


「……ああ、そうだな。戻ろう。色々言いたい事はあるが、全ては無事に切り抜けられてからだ」



元気になったムチムチさんと、大型バスに戻った。


今代の魔王の設定。


魔王『奇天烈な黄玉』、満50歳。男盛りのドワーフ特殊個体。好物は芋焼酎。


一人称は『吾輩』、語尾に『也』を付けて話す変人。


常識外れの魔道具を作った――……と言われてるけど、実際には作ってない。


偶々迷い込んだ神代の遺跡にて、男性型ゴーレム『KT-A1』を偶然発見した。取扱説明書(百科事典並みに分厚い)も一緒に発見した。


聖剣も、魔道具も、全て『KT-A1』が製作。黄玉は横から口を出す係。


巷に流れる噂話は『KT-A1』の行動が美化されたもの。交渉や折衝は黄玉が担当していて、外見的にも黄玉の方が目立つため、気付けば噂話の主役は黄玉という事になってた。


魔王の座に就いたまでは良かったものの、酷使しすぎたせいで『KT-A1』は機能停止。メンテもできないクセに調子に乗りすぎた。


作り置きの魔道具で誤魔化しているが、最近はボロが出まくり、人望が急降下中。密かに複製体の成功例を捕獲して『KT-A1』喪失の穴埋めに使おうと企むも、あえなく失敗。今回の件により、失望は加速する。


スタンガンで黒焦げにされても、誰も敵討ちはしてくれない、多分。

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