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89.電設のヒデオさん、星見酒を飲む。


真剣な話をする場に、酒は有用である。重くなりがちな口を軽くしてくれる。用法用量を正しく守れば、本当に有用である。


個人的には、こういう事に酒の力を借りるのは好みじゃないけど、好みより実利を優先する。


黒夫と魅雪を寝かしつけ、つなしが渋るのをなだめすかし、フェアがついて来ないように拝み倒し、どうにかムチムチさんと二人っきりになった。


念には念を入れ、消音スピーカー起動済。変な音を立てても、子供達は起きないだろう。いや別に変な音立てないけれども。




キャンピングカーのルーフが変形した屋上テラスで、夜の海と星を肴に酒を飲む。


美人さんとサシ飲み。


世の中、これに勝る贅沢は、あんまり無い。



「軽い女になる事こそ、モテ女への道!軽い女に、私はなる!」



早々とんでもない事を言い出した、この人。


酔うの早くないですかね。お酒、お強かった気がするんですけど。



「何がどうしてそんな事になってるんですか……」


「うむ。水蛇様から指摘をされたのでな。それに従うのが良いかと思って――」


「やめてください。どんな指摘されたんだか知りませんけど、それ絶対に間違いです。デマです。偽情報です。忘れてください」


「い、いや、しかし、確かに水蛇様が言っていたのだ。重い女はモテない、と。だから逆を行こうかと」


「逆に行ったからモテるってもんじゃないですよ、それ。……まあ、ある意味、モテに近い状態にはなるでしょうけど……」


「やはり軽い女がモテるのだな」


「違います。ヤれそうな女には男が群がるってだけです。モテじゃないです。モテとは似て非なる別物です」


「そ、そうなのか?」


「終日酔っ払いの戯言は忘れてください。基本、軽い女性は印象悪いですよ。人によって好みは分かれるとは思いますが、基本、軽いのはダメです」


「基本、か……。それでは、その……、貴殿は、どうなのだ?軽いのと、重いの、どちらが良いのだ?」


「私ですか?個人的には、身も心も重ためが好きですね」



自分は自分で何言ってんだ。


酔ってんのか。あんまり自覚無いけど。



「尻の重たそうな女性に、重ために尻に敷かれる感じが好きです」



いや本当に何言ってんだ。


酔ってる。自覚したけど酔いが醒めない。チョコ菓子用意し忘れた。まあいいか。



「なるほど、貴殿は重い女が良かったのか……」


「重ためがいいんです。重い女がいい訳じゃありません」


「……ん?それ、同じだろう?」


「違いますよ!全っ然!」


「ち、違うのか?」


「そりゃもう全くの別物ですよ!痛い女と痛々しい女くらい別物ですよ!」


「お、おお?そ、そうなのか?……それの違いも、よくわからないのだが」


「なんでわからないんですか!」


「どうしてわかると思ったのだ……」


「例えば、いい歳こいてセーラー服を着てる女は、痛い女!いい歳こいてセーラー服を着させられてしまった女は、痛々しい女!どうですか!全然違うでしょう!」


「そ、そうか。違うのか、それ。……それで、貴殿はどちらが良いのだ?」


「いい歳こいてセーラー服着させられてしまって恥ずかしそうにしながらも決して脱ごうとはしない感じ!控えめに言って最高です!」


「そ、そうか。最高か。……いずれ着させられちゃったりするのかな、私……」



美人さんの江戸切子が空になってる。ペース早い。



「グラスあいてますよ。どうぞ」



緑の江戸切子に、透明な日本酒を注ぐ。



「ああ、すまない。貴殿も、杯を」



いつの間にか、自分の江戸切子が空になってた。



「あ、こりゃどうも」



青の江戸切子に、透明な日本酒を注がれた。


やっぱり江戸切子には日本酒が一番よく似合う。


とてもおいしいような気がしないでもない、何となく雰囲気的に。



「とりあえず、軽い女の件は置いておくとして……。海のゴミ拾いは、今日で終わりにしましょう。あれだけ拾ったんですから、もう十分でしょう」


「そうだろうか。とても貴重な品を受け取ってしまったし、まだ足りない気がするのだが」


「キリありませんよ、そんな事言ってたら。単純に金額に換算したら、それこそ、一生を費やしたって返せないんじゃないですか?」


「それは、そうかもしれないが……」


「なら、明日です。明日で終わりにしましょう。いつまでもゴミ拾いし続けるって訳にもいきませんし、明日一日、拾えるだけ拾って、そこを区切りにしましょう。それならどうですか?」


「区切り、か……。何事にも区切りはいるか……。ああ、明日を区切りとしよう」



さすがに、海と星だけが肴だと寂しいので、食べられる肴も用意してあります。


肝漬け。南蛮漬け。味噌漬け。粕漬け。オイル漬け。魅雪に作ってもらいました。


めっちゃウマい。



「明後日からは、また移動ですね。南に行きます。いや、南南東くらいなのかな?まあとにかく南の方に行きます」


「……そうか」


「もうこの際なんでハッキリ聞きます。以前聞かせてもらった、充電の当てがあるって話……、アレの事ですよね?」


「な、何の事かな?わ、私は知らないぞ?な、何も知らないぞ?あ、あんな塔の事など、ま、全く知らないぞ?」


「隠し事下手すぎでしょ……。昼間に見ても大概ですけど、夜に見ると更に異常ですよね、アレ。なんか光ってますけど、アレ。電気の光ですよね、アレ」


「……………………」



遥か南。軌道エレベーター。


某電波塔みたいにピカピカしてる。高さ634mより遥かに高いだろう。



「しっかし、どうして軌道エレベーターなんて建ってるんですかね。異物混入にもほどがあるでしょう、アレ」


「……ん?貴殿は何を言っているのだ?」


「いや、だから、どうしてこの世界に軌道エレベーターが建ってるのかと思って」


「昇降機、か……。そういう説を唱えている学者もいるようだが、仮説としては色物の部類だぞ?」


「……仮説?もしかして、軌道エレベーターじゃないんですか、アレ?」


「違うと思うぞ。断言はできないが」


「じゃあ何なんですか、アレ?」


「さあ?」


「さあって……」


「仕方が無いだろう。わからないのだから」



嘘は言っていない。隠し事もしていない。それは、見ればわかる。



「わからないって、どういう事ですか?」


「わからないのだ。いつ、誰が、何のために、どうやって、あの塔を建てたのか。何もわからない。誰も知らない。正体不明の塔だ」


「ええっ……。あんなデカいもん建ってて、何もわからないなんて事あります?」


「実際わからないのだから仕方が無い。昔、集落の古老に聞いた話によれば、気が付いたらもう建っていたそうだ。いつの間に建ったのかもわからないし、どういう風に建てたのかもわからないと話していたな」


「……それ、その老人が単にボケてただけなんじゃ……」


「あの塔は、優に千年は建っているはずだが、その間、誰も秘密を解明できた者はいない。……いや、秘密裏に解明した者なら、いるかもしれないが。少なくとも公表はされていない」


「……それで、結局アレ何なんですか?」


「だから、わからないのだよ、本当に。仮説だけなら幾つもあるがな。『天上に至る昇降機』と言うのも、仮説の一つだ。不注意により下界に落ちてしまった神が、天に戻るために建てた、と言う仮説だな」


「うっかり神様……。性格はともかく、あんなの建てられるくらいパワーある神様なら、あんなの建てなくても普通に帰れるのでは?」


「私もそう思うよ。仮説としては色物だ」


「色物って事は、主流の説とかもあるんですか?」


「一昔前は『楔』説が最有力、拮抗しているのが『楽器』説と『技能検証』説だったそうだが、ここ最近は『悲恋』説が台頭してきているそうだ」


「……全然関連無さそうに聞こえるんですけど。それ本当にアレの話ですか?」


「全て、あの塔に関する仮説だよ」



仮説その1、『楔』説。


地上の神敵に天より楔が撃ち込まれた、とする説。巻き添え注意。


仮説その2、『楽器』説。


神様専用の大きな楽器、とする説。超シビれる神音を奏でるのに必須。


仮説その3、『技能検証』説。


神様が権能の試し打ちをしている、とする説。神様版やってみた系。


仮説その4、『悲恋』説。


フラれた神様が直立不動の柱になった、とする説。失恋と言うと天罰直撃。



「全部神様がらみ……。説って言うより、神話の類ですね」


「よくわからない事は大抵、神の仕業という事になる。どんな不思議も、神の仕業なら不思議では無い」


「何という投げっぱなし……。神様が聞いたら怒りますよ、多分」


「神より格は下がるが『妖精の悪戯』と言うのも定番だな」


「イタズラって規模を超越してますよ、明らかに……」


「他には『凄腕の職人が一晩でやってくれました』と言う仮説もあったかな」


「その説を唱えた奴、職人を何だと思ってんですか……」


「一層変わり種では『絡繰りの暴走』なんて仮説もある」


「……絡繰り?」


「御伽話になぞらえているのだよ。古き神々の遺構『絡繰り仕掛けの代行者』とやらが、神に代わって世界を維持し続けている、などと言う話があってな。古き神々去りし後、独り黙々と働き続けていた絡繰りが、寂しさのあまり暴走して地上に下りてきた、と言う仮説だ」


「おとぎ話の代物には見えませんけど……」



ピカピカ光る謎の施設は、距離が遠すぎて、見栄えはイマイチ。もっと近付けば、メルヘンに見えるのだろうか。


誰かが観光用に光らせている、とかでは無いようだけど、それならどうして光ってるんだ、アレ。思ってた以上に謎だ。



「学者の仮説は色々あるが、学者自体が少数派だ。多くの者達は、そこまで深く考えない。ただ漠然と、神が建てた塔だと信じている」


「……神様の建てた塔……この世界に馴染んでるのか、アレ……」


「ちなみに、巷で一番よく使われる名は『神鳴りの塔』だ」


「雷の塔?そんな名前なんですか?」


「何もかも不明。正式名称も不明。とは言え、名無しの塔ではあんまりだからな。便宜上、あの塔を呼ぶ時は『神鳴りの塔』と呼ぶ事が多い」


「なるほど。……それで、その雷の塔が、充電の当てって訳ですか」


「そうだ」


「……………………」


「……あっ!?ち、違う!し、知らない!私は知らないぞ!あんな塔に行ったからって、貴殿の道具が使えるようになるとは限らないぞ!」



つくづく思うけど、隠し事が似合わないな、この人。


酔ってるせいか、いつも以上に隠し事ボロボロだわ。


酔ってる今なら、聞き出せるだろうか。



「あそこが最終目的地になりますけど、その前に寄りたい所があるんですけど、いいですか?」


「寄りたい所、だと?貴殿、こちら側に来るのは初めてでは無かったのか?どこに寄るのだ?」


「もし良ければ、みんなの故郷に」


「……っ……」


「もし、余計なお世話でなければ、送らせてください。元の世界に帰る前に」


「……………………」


「みんなの故郷の場所、教えてくれませんか?」


「……………………」


「……気分を害したなら、すみません。嫌なら聞きませんよ。人間なんかを生まれ故郷の集落に近付けたくないとか、そういう事情なら言いにくいでしょうし」


「ち、違う!そうではない!……いや、それも少しはあるか。霊樹の森は聖域として、他の種族の立ち入りを禁じている。事実上、その周辺も立ち入り禁止だ。迂闊に近付けば殺されかねない」


「えっ、何それ。怖っ……」


「その場合、殺されても、近付いた方が悪いと見なされるのだ。まだ一歩も踏み入っていなくとも、だ」


「ええっ……。それがまかり通るって、どんだけヤバい連中なんですか。もっとこう、ほわほわした感じの種族じゃないんですか、エルフって」


「ほわほわ?何だ、それは?」


「半分精霊みたいな感じの種族だと思ってましたので、なんかこう、ほわほわっとしてるイメージだったんですけど」


「どんな印象なのだ……。そんな緩そうな印象とは無縁だぞ。特に霊樹を穢そうとする者に対しては、一片の慈悲も無い」


「汚すつもり無いんですけど」


「穢そうとしているように見えれば、それは悪だ。即射殺だ。悪即射だ」


「……ああ、攻撃手段は弓……そういう部分だけはエルフっぽいなぁ……」



血なまぐさそう。


自分の知ってる唯一のエルフの実例が、日常的には基本ほわほわっとしてる人だから、そのお仲間も似たような感じかと思ってた。どうやら違うらしい。


それにしても、森に近付いた者は即行で悪認定して射殺とか、本当にヤバい。


きっと凄まじく思い込みが激しく、すぐに暴走して何を仕出かすか予想も付かないような、ヤバい種族なのだろう、多分。


この人とは大違いである。



「……うん。大違い。うんうん」


「何がだ?」


「こちらの話です。お気になさらず」



美人さん、ほろ酔い気味。コテンッと可愛く首を傾げていた。


無防備。警戒心の欠片も無さそうな表情してる。男とサシ飲みしてるのに。


基本ほわほわな人である。たまにスイッチ入ると暴走するけど。


常時エマージェンシーモードで暴走しっぱなしのヤバい種族とは大違いである。


まあそれはともかく。



「集落に近付くのは無理そうですけど、どこか最寄りの場所まででも送りますよ」


「……いや、無用だ。元より、あそこに私の居場所は無いのでな」


「……………………」


「母が亡くなったのを契機に出てきて以来、一度も帰っていない。これからも帰る気は無い」


「……これは興味本位で聞くだけで、言いたくないなら言わなくていいですけど。他に親族の方は?」


「縁を切られている。親族どころか、親しい者もいなかったよ。母も私も、腫物扱いだったからな。例外だったのは、変わり者の古老くらいだったが、それも、私が幼い頃に亡くなってしまった」


「……そうですか」



緑の江戸切子が空になってる。注ぐ。



「なあ、ヒデオ殿。貴殿は……、帰ってしまうのか?」


「……ええ」


「本当に、帰るのか?本当にか?」


「……ええ」


「連れて行って欲しい、貴殿の故郷に」


「……………………」



どうしても越えられない一線がある。


相手の話ではない。


自分の中にある、自分が踏み越えられない一線がある。



「……ダメです。連れて行けません」


「そうか。……そうか」



青の江戸切子が空になった。注がれた。


緑の江戸切子が空になってる。注ぐ。



「……黒夫と魅雪の故郷の場所、わかりますか?」


「知っている。だが、帰る場所にはならないよ。故郷を離れた事情は異なるが、二人とも故郷に帰れないという意味では同じだ」


「……そうですか」



青の江戸切子が空になった。注がれた。



「そもそも、故郷を覚えていないはずだ。今の二人にとっては、未知の土地だよ。現地に着けば思い出す可能性はあるが……。私としては、それはむしろ二人を苦しめる事になるのではないかと危惧している」


「……………………」


「無論、そうならない可能性もあるが、敢えて寄る意味があるとは思わない」


「……そうですか」



青の江戸切子が空になった。注がれた。



「なあ、ヒデオ殿。本当に、連れて行っては――……」


「……………………」


「……いや、すまない。忘れてくれ。未練がましかったな」


「……………………」


「なぁに、何の問題も無いのだ!すっかり意気軒昂だからな!何なら今すぐ身一つで放り出されても大丈夫なくらいだ!」


「……………………」



青の江戸切子が空になった。注がれた。



「……………………」



青の江戸切子が空になった。注がれた。



「私は、故郷では家を持っていません」


「何だと?突然どうした、ヒデオ殿?……故郷に居場所が無いのか?」


「あ、いや、その、そうじゃなくて……。一応、住む場所はあるんですけど……。集合住宅の一室を借りて住んでいたんです」


「そうなのか?」


「職場の近くに小さい部屋を借りてまして。しがない独身の一人暮らしでしたよ」


「お、おお、そうか。貴殿、独り身か……。やはり独り身だったのか!そうか、そうか!まあ、そんな気はしてたがな!」


「……そうハッキリ言われると凹むんですけど」


「あ、いや、悪い意味ではないぞ!良い意味で、だ!良い意味で、絶対に独り身に違いないと思っていたのだ!良い意味で!」


「……良い意味って付ければ、何でも良くなるってもんじゃないですよ……」



緑の江戸切子が空になってる。注ぐ。



「まあ一応、自分の家も、あるにはあるんですけど。そっちの家は父が所有者で、自分の家だけど自分の家ではないと言いますか、家族の家と言いますか、そういう感じでして」


「親の家で、家族の家なら、自分の家だろう。縁を切られているなら別だが」


「そりゃまあ、そうなんですけど。あくまでも所有者は私以外の誰かですので。借りている部屋も、実家も、あんまり勝手にできないと言いますか、そういう感じでして」


「意外だな。貴殿は、故郷ではそうなのか」


「……意外に見えますか?」


「あ、ああ、そう見えるが……」


「……どちらかと言えば、故郷の私が、本当の私です。自分で言うのも何ですが、平凡です」


「平凡?貴殿が?」


「平凡ですよ。……本当に平凡です。平凡だったんです」


「……………………」


「平凡なりに、人並みに働いて、人並みに自分の足で立って生きていました。そのくらいの自負はありましたけど……。でも、まあ、そのくらいです」


「……………………」



青の江戸切子が空になった。注がれた。



「自分の足で立ってる自負くらいしか無い……自分以外の誰かの人生を背負って立つだけの自信が……無いんです……」


「……………………」


「この先も、ずっと背負い続けるのかって……そう考えると……怖いんだよ……」


「……………………」



青の江戸切子が空になった。



「あなたを連れて帰るのが怖い――……なんて言ったら、笑いますか?」



緑の江戸切子が空になった。



「ああ、とんだ御笑い種だよ、まったく」


「……………………えっ?」



細く美しい指が、品良くミニボトル開封。そしてラッパ飲み。一気飲み。



「まさか、そこまで見くびられていようとはな!」


「み、見くびる?いや、あの、別に見くびってる訳では――」


「確かに私は役に立っていないが!家事では全然役立たずだし!ミユキみたいに魚料理作れないし!クロオみたいに風呂ピカピカにできないし!なんか丸っこい奴より掃除下手だし!それはもう本っ当に全っ然だが!」



ミニボトルが空。そして新しいミニボトル開封。ラッパ飲み。一気飲み。



「私はっ!お荷物じゃないっ!」



ミニボトルが空。そして新しいミニボトル開封。ラッパ飲み。一気飲み。



「あ、はい。わかりました。わかりましたから、その飲み方は――」



ミニボトルが空。そして新しいミニボトル開封。ラッパ飲み。一気飲み。



「ふふふふふふふふっ!これでも私は、生活能力高めの女なのだ!本当なのだぞ!そりゃあまあ、ちょっとばかし女子力とか家事力とかはちょっとばかし低めかもしれないが!お独り様でも全然平気で生きていける女なのだ!死ぬまで喪女だったからって見くびるなぁっ!」


「はい。わかりました。見くびりません。見くびってました。すみませんでした。ですから、その、そんな飲み方は止めた方が――」


「ふふふふふふふふっ!」



ミニボトルが空。そして新しいミニボトル開封。ラッパ飲み。一気飲み。


ミニボトルが空。そして新しいボトル開封。ラッパ飲み。一気飲み。


ボトルが空。そして新しいボトル開封。ラッパ飲み。一気飲み。



「ぶっはぁあぁぁあぁぁぁぁっ!」


「いや飲みすぎぃっ!?」


「ああもう、やめだやめだ!自重するのは、もうやめだ!」


「じ、自重?」



両肩を掴まれた。


顔が寄せられ、鼻の頭がぶつかる。



「いや近い近い近い!近すぎですよ!」


「ふふふふふふふふっ!もう自重しないぞ!組み伏せてくれる!」



腕力、貧弱。でも、振りほどけない。振りほどく気が起きない。


髪がかかる。


息がかかる。


なんか凄くいい匂いする。


フルーティなワインのよう。酔わされる。もう酔ってた。



「私を見ろ!」



金色の瞳が、すぐ近くにある。


美しい瞳。どんな宝石よりも美しい。


右目の虹彩が、美しく輝く。



「ふふふふふふふふっ!貴様は私のモノだ!私だけのモノだ!私だけのモノになるのだ!……私のモノに、なれ」



白地が漆黒に染まり、金色の瞳が銀光を放った。



「……この生活も、終わりだ。『シラキ・ヒデオよ。我が意に従え』」


スキル情報。


【スキル:世界の半分を支配せし女帝の魔眼】


対象を支配下に置きます。

対象は、生物、非生物、実体の有無を問わず指定できます。精霊も指定可能です。

効果の深度は魔力量に比例します。

万が一、ハイエルフ並みの膨大な魔力量の保有者が発動した場合、とんでもない事になります。

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