87.電設のヒデオさん、挨拶する。
羽交い絞めされた。
鬼女の力強さ。女の子らしい柔らかさ。背中の触覚情報がカオス。
筋力は自分の方が上のはずなのに、振りほどけない。
「おじちゃん、ジッとして」
「やめろショッカー!」
「誰だよ、それ。いいからコレ飲め、ニンゲン」
怪しい小瓶が差し出された。
怪しい。
「何を飲ませるつもりだ!?」
「ただの酔い覚ましだぞ」
「嘘だっ!それ飲ませて変な事するつもりでしょう!薄い本みたいに!」
「うすいほん?うすいほんって、何なの?」
「世話が焼けるニンゲンだな、まったく……。おりゃっ」
「がぼぼっ!?」
怪しい小瓶を口に突っ込まれた。
怪しい液体が流し込まれる。
「……あれ?俺、一体、何を……」
酩酊状態、スッキリ解消。
ぼやけていた意識がハッキリした。
「……今、何飲まされたんだ……?」
怪しい小瓶をよく見ると、見覚えがあった。
フェアリーストア・オリジナルブランド商品『フェアリーゼΩ』、容量50ml。
ウコン&しじみ&キャベツ&柿&その他エキス配合。
「ますたー。お気分は如何ですか?」
「あ、ああ、うん。もう大丈夫」
通勤カバンにストックしといて良かった。
コンビニ商品は、目ぼしいものは引っ越し前に粗方カバンに入れてある。そして、商品を補充していたのはフェア。つまり、酔いから脱したのはフェアのおかげだ。
もっとも、元をたどれば、ほぼアルコール燃料を注いだのもフェアなんだけど。
ほぼアルコール燃料と承知の上で、一気飲みしたのは自分だ。文句は言えない。
「ええっと……。黒夫も、魅雪も、なんか悪かったな。すまん」
一気飲みした後の記憶が曖昧だけど、黒夫と魅雪に迷惑かけたっぽい。
酔って子供に迷惑かけるとか、酔っ払いのオッサン並みにダメな大人である。反省しよう。
「ふん。いつもの事だぞ」
「いいの。いつもの事なの」
「いやいつもでは無いよね!?」
自分は宅飲みしないタイプです。いつもは迷惑かけてません。冤罪反対。
それはそれとして。気付いたら、料理は全て食べ終わっていた。せっかくの魅雪の手料理だったのに、覚えているのは副菜の味だけ。他は思い出せない。
自業自得だ。しょうがない。次は夕飯に期待しよう。
全員分の洗い物を食洗器に突っ込む。そこで、一人足りない事に気付いた。
「あれ?お前達、お姉ちゃんどこ行ったか知らないか?」
ムチムチさんがいない。食後の散歩にでも行ってるのだろうか。
「「あっち」」
「あっち?」
子供達の指差す方に、視線を向ける。
魔物同士が旧交を温めている崖っぷちに、灰色の髪の美人さんの姿が見えた。
十本の赤い首に絡まれて、完全に捕まってた。
生贄かな。
「……なんであんな所に……」
さすがに生贄ではないと思うけど、他にどんな理由があるのか。
まさか、ムチムチさんも海の魔物と知り合いだったのだろうか。
エルフなら長生きだろうし、思わぬ交友関係があっても、おかしくない。
邪魔しない方が良いか。
「お姉ちゃん、お礼したいって呼ばれたの」
「寝床を掃除したから、そのお礼だって言ってたぞ」
「寝床の掃除?……ああ、もしかして、アレの事か?」
崖の傍には、ムチムチさんの釣り上げた具足その他の山が放置されている。
質量や体積だけなら、魅雪の釣果を遥かに凌ぐ。
改めて見ると、とんでもない量だ。ある種の才能が凄い。
「……おかげで、海の魔物は大喜びって訳か……いや、でもなぁ……海は広いし大きいのに……」
個人の掃除の成果として見れば、回収したゴミの量は多い。しかし、海の広大さに比べれば、微々たる量だ。わざわざ魔物がお礼を言うほどの成果とは思えない。
成果そのものより、掃除をしたという事実が大事なのかもしれない。神棚をお清めして、祝福を賜るようなものだろうか。
やっぱり邪魔しない方が良さそう。しばらく、ここで待とう。
海の魔物と関わるのが嫌だから遠巻きにしている、とかではない。
「ますたー。お茶です」
「うん。ありがとう、フェア」
生贄から目を逸らしてお茶を飲み、まったりする。
「そう言えば、魅雪。今日の夕飯、どんなメニューなの?」
「主菜はね、かぶと煮なの」
「魚の頭かぁ……。大きいのもいたし、食べごたえありそうだね」
「あとね、お煮しめも作るの。お出汁ジュクジュクに染み込ませたお煮しめなの。カブと煮込んでドロンドロンにするの」
「おいしそうだね」
「それとね、肝の漬けも作ってるの。今日は無理だけど、明日には食べられるよ」
「……お酒のおつまみっぽいね、それ」
夕飯のメニューの中に、場違い感のある奴が交じってた。
やっぱり侵食されてる。魔物は悪。ハッキリわかる。
いや、全ての魔物を一括りにして悪と判断するのは早計か。人間に個人差があるように、魔物にも個体差はあるはずだ。
一角鯨の魔物は、わざわざ掃除の礼を言おうとしているらしい。魔物から見れば、人間も魔族も等しく矮小な存在のはずなのに、とても礼儀正しい魔物だ。実に紳士的。きっと良い魔物なのだろう。どっかの酔っ払いのオッサンとは全然違う。
要するに、ヘビの魔物だけが悪。ハッキリわかる。
「あ、姉ちゃん帰ってきたぞ」
悪の魔物が、美しい生贄を連れて戻ってきた。
「おかえりなさい、ムチムチさん。……何ですか、それ?」
美しい生贄は、手に何か持ってた。
乳白色のボウリングの球みたいだが、やたら光沢がある。
「……寝床の掃除の礼だと渡されて、受け取ってしまったのだが……果たして良かったのだろうか、受け取ってしまって……」
「気にせず受け取っておけば良いのである。その方が『鼻水吹き』も喜ぶ」
「……こんな大層な代物を受け取るほどの事は、していないのだが……」
ムチムチさん、手に持った謎の球を見て困惑していた。
「それ、何か凄いものなんですか?」
「……真珠だそうだ」
「し、真珠!?その大きいのが!?」
「……こんなに巨大な真珠など、見た事も聞いた事も無い……果たして、どれだけの価値があるのやら……」
ボウリングの球サイズの天然真珠。市場価値どれくらいなんだろうか。ある意味、本日最高級の釣果である。
それにしても、そんな巨大な真珠を作るような貝って、どんな貝だ。貝の魔物か。
異世界の海、規格外すぎる。
「さて、次はそなたであるな」
巨大な真珠に慄いていたら、十本首に掴まれた。
「お、おい、何すんだよ、つなし」
凄い力で引きずられた。向かう先は、断崖絶壁。
「そなたの事を『鼻水吹き』が気にしているのである。挨拶の一つもするが良い」
とんでもない事を言い出した、この酔っ払いのオッサン。
海の魔物は紳士的な魔物のようだが、それでも関わり合いになりたくない。
良い魔物も、悪い魔物も、結局は魔物だ。気分一つで消し飛ばされかねない。
小島サイズの巨体ともなれば、気分の良し悪しすら関係無くなる。くしゃみ一発で家ごと消し飛ぶ。
「冗談じゃねえ!お前の相手だけでも手一杯なのに、これ以上やってられるか!」
「カッカッカッ。そんなに我の事ばかり気にせんでも良い。多少、気が移ろったくらいで、我は機嫌を損ねんぞ?」
「笑ってる場合かよ!離せよ、つなし!」
抵抗してみたが、無駄な抵抗に終わった。
身体能力は勇者級でも、体重は平凡。引っ張り合いでは、体重こそがモノを言う。地面との摩擦力は質量に依存する。
この酔っ払いのオッサン、見た目からして重そうだが、実際の体重は見た目よりも更にクソ重い。縮んだ際に軽くなったようだが、それでも人間一人よりは重い。
ズリズリ引きずられ、崖っぷちに立たされた。
「ほぅ。引きこもりの『頭割れ』が外に出ているだけでも珍しいのに……。どうやら、外の者らと楽しくやっておるようじゃのぅ。本当に珍しい事よ」
一角鯨が、つぶらな巨眼でこちらを見ながら笑っていた。
十本首が、不機嫌になった。
「我を『頭割れ』などと呼ぶでないわ。ついさっき教えたばかりなのに、もう忘れたのであるか、『鼻水吹き』よ」
「儂の事をそんな風に呼んでおいて、随分な言い草じゃのぅ。そう呼ぶのはやめるよう、何遍も言うたじゃろうが」
「『鼻水吹き』と呼ばれるのが嫌なら、名を教えるが良い。その名で呼んでやるのである。名があるならな」
「儂は名など持たん。そのようなもの、無用じゃ。己を悪戯に縛るだけのものじゃからのぅ」
「なら、これからも『鼻水吹き』と呼ばれておけば良かろうが」
「それとこれとは話が別じゃ。名はいらんが、何と呼ばれても良いという訳ではないんじゃぞ。そんな事もわからんのか?」
「わからぬ。名がいらぬのなら、どう呼ばれても大差は無かろう」
「差があるに決まっとるじゃろうが。その頭は飾りかのぅ、『頭割れ』よ」
「我を『頭割れ』などと呼ぶでないわ!」
なんかケンカ腰で言い合ってた。
魔物同士のケンカとか、マジ勘弁して。
ケンカしたいなら止めないから、こっちを巻き込まない所でやってくれないかな。
下手したら死ぬ。
「耳かっぽじって、よく聞くが良い!我の名は、つなし!これから我を呼ぶ時は、つなしと呼ぶが良い!」
「つなし、のぅ……」
「そして、我につなしの名を献上したのが、こやつである!」
「おいぃっ!?俺を巻き込むんじゃねえよ!」
この状況で、ケンカに巻き込みやがった。
今はまだ口喧嘩で済んでいるが、実力行使の段階に移行したら、普通に死ぬ。
あの角、ねじくれてて、刺されたら痛そう。
「……ほぅ?その男が、のぅ?」
一角鯨が、つぶらな巨眼で見詰めてくる。
生きた心地がしません。勘弁してください。
「随分と、その男を気に入っておるようじゃのぅ?」
「気に入ると言うほどでは無いのである。ただの戯れで、傍に置いているだけであるよ」
「戯れ、のぅ……。名を付けさせたのも、戯れと抜かす気か?」
「無論、戯れである。我としては、名など無くとも良かったのであるがな。こやつが我に『どうしても名を授けさせて欲しい』などと懇願するのでな。戯れに受け取ってやったのである」
過去を捏造された。事実無根。
「法螺吹いてんじゃねえよ。名前を考えるように強要したの、つなしの方だろ」
「はて?そうであったか?」
「しらばっくれんな。酒の席の事だからって、忘れられるかよ」
「大方、酔って勘違いしたのであろう。そなた、酒に弱すぎるのである」
「酒のせいにして全部おっかぶせる気か!?俺がどんだけ苦労したと思ってんだ!名前考えるのマジで大変だったんだぞ!」
「大儀である。褒めて遣わす」
「つなし、テメェこの野郎!ナメた態度取ってくれんじゃねえか!覚悟はできてんだろうな!」
「ふぅむ?我に何かするつもりであるか?良かろう、受けて立つのである」
「かも~ん」
十本首、余裕綽々の態度。
マジでナメてやがる、この酔っ払いのオッサン。
わからせてやる。立場ってものを。
「今日一日!お酒のおかわりは無しだ!」
「「「「「「「「「「え~っ!?そんなぁ~っ!?」」」」」」」」」」
主導権は、こちらにある。
十本も首あるのに、全部忘れていたようだけど。
「じ、冗談であるよな?」
「本気に決まってんだろ。丁度いい機会だし、休肝日を設けるぞ。いくら何でも飲みすぎなんだよ」
わからせ半分ではあるが、もう半分は真面目な話。
以前から、少し気になっていた。いくら魔物とは言え、あまりにも酒浸りすぎる。
本人の自己申告では、病気にならないと言っているが、それでも酒を飲めば酔う。アルコールの影響は確かに表れる。
目に見える部分に影響があるのだから、当然、目に見えない部分にも影響はあるはず。内臓にも何らかの影響があると考えた方が自然だ。
杞憂なら、それはそれ。笑い話で済む。
杞憂ではないのに病原を放置して健康被害が出たら、笑い話では済まない。
「我に休肝日などいらぬ!」
「然り!」
「おさけ~!」
「ええい、まとわりつくんじゃねえ!」
人の心配をよそに、酒を求めて十本首が絡んできた。鬱陶しい。
押し退けても押し退けても、絡んでくる。腕二本では足りない。多勢に無勢。
崖っぷちで不毛な争いしてたら、海面から重低音の笑い声が響いた。
「ほっほっほっ。仲良しじゃのぅ。あんなに粋がっていた小童も、お年頃か。よもや、男とじゃれ合う姿を見る日が来ようとはのぅ。驚きじゃわい」
「ち、違うのである!こやつが一方的に言い寄ってきているだけである!」
「いや逆だろ、この状況。いい加減、離せよ、つなし」
あっさり解放された。
十本首が、心なしか、いつもより赤い気がする。
まさか、照れてるのか。
まさかな。無い無い。あり得ない。あり得るはずが無い。断じて、無い。
酔っ払いのオッサンが照れるような場面、どこにも無かった。絶対に無かった。
きっと隠し持っていた酒でも飲んで赤くなったのだろう。そうに違いない。酒呑みは、隙あらば酒を飲む生き物である。
「まったく、我に変な言いがかりを付けるでないわ」
「言いがかりかのぅ?」
「何でもかんでも変な方向に結び付けるのは、年寄の悪い癖であるな」
いつもより赤い顔のまま、十本首が言った。
「……なんじゃと?もう一遍、言うてみい、小童」
ゾワリッ。
強烈な悪寒。全身に鳥肌が立った。
あらマズいわ、これ。どうやら一角鯨の地雷を踏んだらしい。
踏んだのは十本首であって、自分ではない。自分には怒りを向けられていないはずなのに、肌がピリピリする。心臓に悪い。
「じ、冗談である!『鼻水吹き』はピッチピチである!永遠の17歳である!」
十本首、平身低頭。全首ベタッと地べたに着けてた。魔物版の土下座か。
怒りの気配が緩んだ。
一角鯨は、ちょっと呆れたように溜息を吐いていた。
「おぬしなぁ……。本当に悪いと思っとるなら、まずはその『鼻水吹き』と呼ぶのをやめんか」
「そうは言うが、他にどう呼べば良いのであるか?」
「適当に呼べば良いじゃろう」
「ふぅむ。適当と言うなら、やはり『鼻水吹き』が――……、怖っ!?そんなに怖い顔せんでも良かろうが!?」
「まったく……。他に、こう、もう少し適当な呼び方あるじゃろう。なんでよりにもよって『鼻水吹き』なんて呼び方するんじゃ」
「なんでって、鼻水吹いてるではないか。たまに起きたかと思えば、海面で鼻水吹いて、すぐにまた寝床に戻っていくのである。そのまんまである」
「儂を何だと思っとるんじゃ、おぬしは……」
「我の事を『頭割れ』などと呼んでたのに、よくそんな事を言えたものであるな」
「わかったわかった。もう呼ばん。『つなし』と呼べば良いのじゃろう?」
「然り!」
「なんじゃい、そのドヤ顔は。ムカつくのぅ」
この世界の頂点に座す超生物同士の会話が、これ。
この世界、これでいいのか。
帰りたい。
「ドヤ顔?ノンノン。我はいつもこんな顔である」
「いつもは、もっと締まりのある顔しとるじゃろうが。まったく、たかが名を一つもらったくらいで浮かれよってからに。……そんなに、気に入っとるのか?」
「いいや?そんなでも無いのである。……だが、まあ、悪くも無いのである。毎日毎日、我に美酒を欠かさず献上するようなマメな奴であるし?名を考えてた時も、我のために超必死に考えてたみたいであるし?当初は名を10個も考えようとしていたようであるが、そんなにたくさん考えてもらっても、我、受け止めるの大変であるし?そんなにいらないって言ったら、泣く泣くふるいにかけて、最上の名を厳選して差し出してきたのである。それが、つなしと言う名である。まあそういう感じの事もあったりして、まあそこそこ気に入ってない事も無いのである」
「然り」
「……儂、そこまで聞いとらんのじゃが……自慢話長っ……。つか、これもうほとんどノロケ話じゃのぅ」
「えぇ~?こんなのぜんぜんだよぉ~?」
「うっわ。本気でムカつくのぅ」
もう帰っていいかな。
一応、顔見せしたし、もう挨拶は済んだって事にして帰ろうかな。
一角鯨は、こっちの事は完全に眼中に無いようなので、気にしないだろう、多分。
ケンカが本格的に悪化する前に、ずらかろう。
「まあ良いがのぅ。儂はこれから、おぬしの事を『つなし』と呼ぶのじゃ。おぬしも、儂を『鼻水吹き』などと呼ぶのはやめよ」
「では、何と呼べば良いのであるか?」
「それくらい、その無駄に増えた頭で考えれば良いじゃろう。こういう時に使わずして、いつ使うんじゃ、その頭」
魔物の注意を引かないよう、静かに後ずさり。
さり気無さを装い、距離を取る。
「ふぅむ……。何も思い浮かばぬ」
「なんでじゃ。なんかあるじゃろう、適当なのが」
「『鼻水吹き』と呼ぶのが癖になってるのである。他の呼び方が思い浮かばぬ」
足音を消すのが癖になってないので、ゆっくり動いても少しだけ足音が鳴る。
「おぬしから見て、儂のイメージ、何かあるじゃろう?それをそのまま言葉にすれば良いだけじゃ」
「イメージ……。無いのである。鼻水だけである」
「儂のイメージ、鼻水だけ!?他のイメージ無いの!?」
「無い」
「嘘じゃろう!?ほれ、ほれほれほれ!これが見えんかのぅ!」
「……もしかして、そのみみっちい角の事を言っているのであるか?」
「み、みみっちい、じゃと!?」
「鼻水の方が遥かにダイナミックなのである。やはり、我にとって『鼻水吹き』のイメージは鼻水なのである。他のイメージは鼻水一つで消し飛ばされて、いまいちパッとせぬ」
「そ、そんな馬鹿な!?儂のイメージ、そんなに鼻水強いの!?他のイメージ消えるほど!?」
会話にかき消される程度の音量に足音を抑えつつ、ゆっくり後ずさり。
「では逆に問うが、我のイメージ、何かあるか?」
「おぬしのイメージと言えば……、頭が割れとる事かのぅ?」
「その体たらくで、よく我に文句を言えたものであるな」
「しかしのぅ。おぬし、他にこれと言ったイメージ無いじゃろう」
「随分な言い草であるな。我と言えば、この鮮烈なまでの赤こそがイメージカラーであろう?」
「……言われてみれば、確かに赤いかのぅ?」
「言うまでも無く、初めから赤いのである!」
「そりゃそうなんじゃがのぅ。おぬしと言えば、頭が割れとるイメージが強すぎてのぅ。しかも、久しぶりに見たら、なんか増えとるし。それに比べたら、色とか別に気にならんのじゃ」
「本当に、よく我に文句を言えたものであるな、その体たらくで」
焦りは禁物。一歩一歩、慎重に、堅実に、少しずつフェードアウト。
「むむぅっ……。思いのほか、イメージと言うのは思い浮かばんものじゃのぅ。昔馴染みともなると、お互いよく知っておるはずなのに、かえって新しいイメージを言葉にし難いものじゃな」
「そうであろう?今までとは異なるイメージを無理に当て嵌めてみても、いまいちパッとせぬし、どうにも呼びづらいのである。ここはやはり、これからも今まで通り『鼻水吹き』と呼ぶのが良いのではないか?」
「なんでじゃ。それとこれとは話が別じゃろうが。儂、もう嫌じゃ。そう呼ばれとうない」
後少し。もう少し。もうちょっと。
「ふぅむ。致し方無い。こうなれば、昔馴染みではない者の手を借りるとするか」
ギロリッッッッッッッッッッ。
十本首が、一斉にこちらを向いた。
「という訳で、汝、白木英雄よ。大任を任せるのである」
「よろ~」
「無茶ぶりすぎませんかねぇ!?」
イッカクの角は、オスのトレードマーク。立派な角を持つオスほどモテます。
参考:イッカク(Wikipedia)
<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%83%E3%82%AB%E3%82%AF>
……ですが、まれにメスが角を持つ事もあるようです。
他にも、イッカクなのに角が2本ある奴がいたりとか。生物系は例外が多種多様。




