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75.電設のヒデオさん、血中アルコール濃度0.3%。

酔っ払いどもが飲み会で駄弁るだけの話。(3/3)


さけ、うま。



「だからさぁ。俺ぁ思う訳よ。『旅の恥は搔き捨て』とか『据え膳食わぬは恥』とか、そういう恥知らずな事を言ったりヤったりする連中が多すぎる!そうじゃねえだろ!そう言うんじゃあねえだろ!なあ、つなしも、そう思うよな!?」


「お、おう。そうであるな」


「ヤるからには本気だ。本気だからヤるんだ。いずれはこの女と結婚して、一緒に生活して、子供産んでもらって、一緒に育てて、独り立ちさせて、老後を一緒に過ごして、最期には一緒の墓に入る。そんくらい本気だからヤるんだよ。そうじゃないならヤっちゃダメなんだよ。なあ、つなしも、そう思うよな?」


「お、おう。そうであるな」


「そりゃあね。相手が同じだけの熱量を持ってるとは限らねえし、心変わりして急に熱が失われたりするかもしれねえし、まあ、そういう事もあるよ。それは、まあ、しょうがない。うん。特に学生とか、若い内は熱しやすく冷めやすいしな。学生が本気で結婚したいとか言った所で、そんなもん、幼稚園児が結婚の約束するのと同じようなもんよ。明日には気が変わっててもおかしくない程度の本気よ。なあ、つなしも、そう思うよな?」


「お、おう。そうであるな」


「でも本気なんだよ!幼稚園児が結婚の約束をする時、そこに偽りはあるか?いや無い!本気だ!正真正銘、本気だ!確かにその瞬間こそは、嘘偽り無く、本気だ!なあ、つなしも、そう思うよな!?」


「お、おう。そうであるな」


「将来本当に結婚するかどうかは、わかんないけども!でも今まさにヤろうって言うその瞬間は、本気で結婚したいって思うくらい本気でなきゃあダメなのよ!将来結婚する気も無いのにヤるとかダメ絶対!なあ、つなしも、そう思うよな!?」


「お、おう。そうであるな」


「そうだよな!うんうん、やっぱりそうだよな!わかってくれるか!つなしは、わかってくれるのか!」


「お、おう。わかってるわかってる」


「さすが、つなし!へこへこ腰振ってる男どもとは違うなぁ!よっ、男の中の男!やっぱり男はそうでなくっちゃなぁ!」


「お、おう。……いや、あの、だからね?我の現身の性別は、男では無――」


「あははははっ!男の中の男!つなしに乾杯!かんぱぁ~い!ほらほら、かんぱぁ~い!」


「お、おう。かんぱい」


「あははははっ!」



さけ、うま。



「本当に、どうにかして欲しいのである。こやつ、同じ話を繰り返して、内容がドンドン濃くなってくのである。しんどいのである」


「つがい~、なんとかして~」


「……結婚、か……私には縁遠い……母娘揃って結婚とは無縁……これが血の系譜というものか……ふっ、ふふっ、ふふふふふふふふっ……」


「あ、これ本格的にマズい気がするのである」


「……どうすれば結婚する気にさせられるのだろうなぁ……もうこうなったら、いっそ無理矢理にでも組み伏せて、強制的に……いや、さすがにそれやっちゃったら終わりか……正攻法で行きたいが……」


「お、おぉう?……どちらも結婚にこだわりがあるようであるな……」


「にたもの~」



さけ、うま。



「我は結婚と言うものに詳しくないのであるが……。そなたら、結婚しているのではないのか?」


「嫌味かよぉっ!?……見りゃわかんだろ。してねえよ」


「見てもわからぬ。番と結ばれ、子を設けていれば、結婚ではないのか?」


「いや何言ってんだ。子は子でも連れ子だし、見るからに種族違うんだから、血が繋がってないってわかんだろ」


「ふぅむ?同種ではないのか?毛色は少々違うが、体躯は似たような大きさであるし、目鼻や手足は似たような配置であるし、見た目は父と娘に見えるのである」


「ええっ……。親子の判定基準ガバガバすぎじゃね?」


「無礼であるな。見た目だけで父と娘だと思う訳無かろう」


「ぷんすか~」


「我は、同種が近くにいただけで、番と子と思った訳では無い。我がそう判断した一番の理由は、そなたの行動である」


「ん?俺の行動?何かしたっけ、俺?」


「……まさか、そなた、我に何を仕出かしたのか、忘れた訳ではあるまいな?」


「あー……、うん。バイクぶつけたりスクーターぶつけたりしたなぁ……。その節は、大変失礼いたしました。大変遅くなってしまいましたが、謝罪させていただきます。色々酷い事をして、すみませんでした」


「ゆるす~」


「我は寛大である。この酒に免じて、水に流そう」


「本当に申し訳ございませんでした。……あの、本当に悪い事をしたとは思ってるけど、それと結婚は別に関係無くね?」


「そなたが不遜にも我に挑んだのは、守るためであろう?」


「……まあ、そうだな。家を守ろうとしたな、家を。あの時は、直前にコンビニ壊されてたからな。同じようなノリで家壊されたら困るし、家を守ろうとしたけど、それが何か?」


「守ろうとしたのは、家ではあるまい」


「……家を守ろうとしたのは本当だよ」


「本当に守りたかったものは、家ではあるまい」


「……………………」


「己が身を挺してまで、守ろうとしたであろう?」


「……………………」


「我が威武も屈する能わず。その勇姿を見れば、その背に負うているものを、番と子と思うのは当然ではないか」


「……メタノール飲んでもねえのに、目ぇ腐ってんのかよ。あんな無様を晒して、どこが勇姿だ」


「勇は姿を持たぬ。見るは目に非ず。我は確かに、そなたの勇姿を見た」


「……ああいうのは、贔屓目に言っても蛮勇ってんだよ」


「蛮なれど勇である。勇有りし者の振る舞いには相違無い」


「……その場のノリと勢いで馬鹿やっただけだ。ろくすっぽ考えて動いてねえよ」


「考えるより先に体が動いたか。それほどまでに守りたいと思ったか」


「ええい、いちいち変な合いの手入れんな!……俺はただ、テメェのケツをテメェで拭こうとしただけだよ。守りたいとか何とか、そういうのは関係無いのよ」


「ふぅむ……。そなたがそう言うのであれば、そう言う事にしておくのである」


「がんこ~」



さけ、うま。



「子と血が繋がっていないのは、わかったのである。だが、番というものは、そも血が繋がっていないものであろう。結婚せぬのか?」


「しない。って言うか、できないな。俺、故郷に帰る予定だし」


「ふぅむ?帰る?よくわからぬ」


「俺の故郷、人間しか住んでないんだよ。種族違うし、故郷に連れて帰るのは無理だな」


「ふぅむ?益々わからぬ」


「いや、だから、種族が違うから連れて帰れない――」


「何故、古巣に戻るのであるか?」


「……えっ?」


「故郷に帰ると言うのは、古巣に戻る事であろう?何故、戻るのであるか?」


「いや、何故って……。そんなの当たり前だろ」


「当たり前?巣立ちした成体は、古巣に戻らぬ方が当たり前ではないか?」


「……えっ?」


「そなた、成体であろう?すでに古巣から巣立ち、この地に新たな巣を作り、暮らしているではないか。それなのに何故、古巣に戻るのであるか?番と子がいなかったとしても、普通は戻らぬであろう?」


「そ、それは……。い、いや、ち、違う。俺は、ここに来ようと思って来たんじゃないんだよ。ここに来る事を望んでなかったって言うか、しょうがなく来ただけって言うか、そう言う感じなんだよ」


「巣立ちと言うものは往々にして、そんなものであろう。望むと望まざるとに関わらず、新たな地に新たな巣を作るものではないか。巣を作り損ねたならまだしも、すでに新たな巣があるのに、何故、古巣に戻るのであるか?」


「そ、それは……。そ、そうだよ!快適な生活をするためだよ!」


「ふぅむ?快適な生活のため?よくわからぬ」


「俺は、俺の生活が何より一番大事なんだよ。だから帰るんだよ。故郷に帰って、明るい灯りの下で、うまい飯が食いたいんだよ。そのために帰るんだよ」


「それ、できているではないか」


「……えっ?」


「明るい灯りと言うのは、そなたらの巣を照らす光の事であろう?日が沈んでも、そなたらの巣の中は昼日向のようである。それとも、あの光は違うのであるか?」


「い、いや、違わない……明るい灯り、普通にあるな、言われてみれば……」


「うまい飯も、うまい酒も、ここには存分にある。そなたにとっては、これでも不足なのであるか?古巣であれば、これより凄いものが飲み食いできるのであるか?」


「い、いや、こっちでも十分、うまい飯、食えてる……食えてるなぁ……フェアのお米、超おいしいし……」


「えへへー」


「ふぅむ?では何故、古巣に戻るのであるか?」


「……あ、あれ?な、なんでって、なんでだっけ……俺は、こっちでも普通に生活できてる……それなのに、なんで帰るんだっけ……?」



さけ、うま。



「か、家族だ!故郷には家族いるし!」


「古巣にいる家族と言うと、そなたの親であるか。わざわざ古巣に戻るほど、親子仲が良かったのであるか」


「……ま、まあ、一応?」


「なんか微妙な返答であるな」


「ええっと……。家族だけじゃねえ!他にも友達とか!」


「友であるか。新たな巣を捨ててでも会いに行くほどの友と言う事は、親友と言うものであるか」


「……ま、まあ、一応?」


「なんか微妙な返答であるな」


「ええい、とにかく色々あるんだよ!故郷には色々置いてきてんの!仕事とか!知り合いとか!色々入ったパソコンとか!色々あんの!だから帰んの!帰るったら帰んの!帰るって決めてんの!」


「そなた、なんか自棄になってないか?」


「うるせいやい!とにかく帰るんだよ!俺は帰るって決めてんだよ!だから帰るんだよ!理由とか知った事か!」


「無茶苦茶であるな」


「……俺は、本当に帰るんだ。何を置いてでも、だ」



さけ、うま。



「……んにゃぁ……ふにゃぁ……そこイジっちゃダメにゃぁ……耳……」


「……くふふっ……そんなにコスっちゃダメなの……だぁめ……角……」


「ありゃ、いつの間にか寝落ちしてやがる。酒の気に当てられたか……。つなし、悪いけど俺、一足先に抜けさせてもらうわ。チビども寝かせてやらねえと」


「好きにするが良い」


「ムチムチさん、私はこれで上がりますけど、カバン置いてきますんで、後は好きに飲んでください」


「あ、ああ、そうか。ミユキとクロオを頼む」


「ったく、勝手に来て、勝手に寝ちまいやがって。あー、めんどくせえなぁ……。よっこらせっと」


「「……うぅんっ……?」」


「あー、寝てろ寝てろ。半端に起きられた方がめんどくせえんだよ。運んでやっから、そのまま寝ろ」


「「……うん……」」


「じゃあな、つなし。失礼します、ムチムチさん。行くよ、フェア」


「はい。ますたー」



おさきにー。



「……あやつ、本当に古巣に戻る気あるのか?」


「……ヒデオ殿は、常々そう言っている」


飲み会、終了。

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