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クレア・アステイル

ゴブリン退治の一件を終え、パーティでの戦闘経験や実績を認められたササキは、見事銀級冒険者へと昇格した。

村であった出来事や、何者かが関与している疑念をギルドへと報告し終えるササキとテイル。

後は報酬を受け取るだけだ。


ゴブリンの巣で回収した装備や物品は、ギルドが回収して後に報酬金額に加算される。

二人は椅子に腰掛け、報酬の査定を待つ。

テイルがササキに話しかける。


「なぁササキ。」


ササキが反応する。


「なんだ?」


「お前、何者なんだ?」


その言葉に、一瞬固まるササキ。

テイルは話を続ける。


「最近冒険者を始めたにしては強すぎる、それにその装備だってどれも一級品だ、ササキって名前もここら辺じゃ珍しい…」


「お前、どこかの国の貴族か何かなのか?」


沈黙が訪れる。

ササキが口を開く。


「俺が何者か、か。」


「一応仲間だしな…そこらへん、説明しとくか。」


ササキが己の正体について説明を始めようとしたその時、割り込んでくる者がいた。


「銀級昇格おめでとう、期待の新人さん?」


その人物は、銀髪のロングヘアの少女。

身に纏う装備から、魔法職であることが伺える


「誰だお前。」


ササキが無神経な質問をすると、少女は彼に詰め寄る。


「アタシの名前はクレア・アステイル、この街で冒険者をやってるなら聞いたことくらいあるだろ?」


自信満々に胸を張るクレア。

彼女は巨乳だった。

テイルは視線のやり場に困って目を伏せる。

ササキはテイルに聞く。


「聞いたことある?」


「い、いや、ない。」


そんな二人の態度に、クレアはイライラする。


「なら無知なお前らに教えてやるよ、アタシはこの国ではひと握りしかいない上級魔法使いであり、銀級ナンバーワンの冒険者だ!」


ドヤ顔で自身の経歴を説明する少女。

そのあまりの声の大きさに、周囲の冒険者達が反応する。

だが、ササキはイマイチその凄さが分からなかった。

テイルはと言うと、相変わらず目のやりどころに困っていた。

二人が反応に困っていると、クレアの後ろからもう一人の少女が現れる。

その少女は、黒いローブに身を包み、深々とフードを被っていた。


「も、もう辞めようよクレアちゃん…私恥ずかしいよ…」


「ちょっと黙ってろティア!今何も知らない新人共にアタシの凄さを教えてやってるんだよ!」


おどおどとする少女の名はティア。

身長が高く、テイルより少し大きいくらい。

ローブに身を包んでいるため正確な職業は不明。


クレアはササキを睨みつける。


「いいか新人、銀級になったなら、まずこのアタシに挨拶しに来るのが筋ってモンだ!ほら、挨拶!」


彼女の態度にイラつくササキ。


「あ?なんでだよ、ムカつく女だな。」


クレアの要求を一刀両断する。


「なッ!テメェ…二度と冒険者活動出来なくしてやろうか?」


一触即発の空気が周囲に満ちる。

先に動いたのはクレアだった。


「まぁ、本当だったら二人まとめて骨の一、二本折ってやっても良かったんだがな、今回は特別に不問だ。」


テイルは彼女の憎悪が自分にも向いていることに驚く。

クレアが二人を指さす。


「ただし、お前らにはアタシのパーティに入ってもらう、いいな?」


クレアが何を言ってるのか理解できず、固まる二人。


「はぁ!?意味わかんねーよ!」


テイルが叫ぶと、クレアは彼の方を見る。


「そうか、意味わかんないか、ならお前は要らねぇ、帰っていいよ?」


「アタシが欲しいのはそっちの鎧の方だ、名前は確か…ササキ、だったか?」


その言葉にショックを受けるテイル。

彼女らの狙いはハナからササキだったのだ。

納得はするが、こうも簡単に不要と判断されると流石に傷つく。


ササキはクレア達を馬鹿にするような笑顔を浮かべ、テイルと肩を組む。


「意味わかんねーよクソガキ、俺はもうテイルとパーティ組んでんだよ。」


その煽りに一々感情を昂らせるクレア。

彼女に煽り耐性が無いことを見抜いたササキは、更に煽りまくる。


「こっちはな、魔王も倒せる最強のパーティを作ろうとしてんの!」


「だからお前らみたいな雑魚とパーティを組むなんて死んでも御免だね!分かったらさっさと帰りな!」


クレアの周辺に即座に魔法陣が展開される。

彼女はブチ切れていた。


「そんなに死にたいなら死なせてやるよ!ササキィ!」


クレアの周囲に電気のオーラが溜まり始める。

焦るティア。

ササキはと言うと、魔法の発動を察知しながらも、それを止めようともせず、相殺する魔法を放とうともしなかった。


「お前何棒立ちしてんだよ!防御魔法でも何でもいいから使えよ!死ぬぞ!」


ササキはポカンとした顔で言う。


「え?無理、俺魔法使えないもん。」


その言葉に、テイルもまた唖然とする。


「マジ?」


「マジだよ。」


クレアの手から雷撃が放たれる。

その魔法の名は雷撃(ライトニング)

電気属性の魔力を一点に集中させ、指向性を持たせて解き放つ中級魔法である。


ササキは固有能力(スキル)を使用し、超高速となる。

そして凄まじい速度でテイルを魔法の範囲外へと投げる。


雷撃がササキを襲う。

数秒間、ササキの身体が明滅し、そして煙が発生する。


「ササキー!」


雷撃が止み、ササキがいた場所から黒い煙が立ちこめる。

誰もがササキの死を予想した、その時…


煙の中から、ササキが現れる。

しかも無傷。


「オイオイ、正当な理由なく魔法で他者を傷つけるのはご法度だぜ?ま、俺は傷ついてないけどな。」


その様子を見て周囲の冒険者達は驚愕する。

いくら強力な装備を着用しているとはいえ、至近距離から雷撃(ライトニング)を受けて無傷というのは、ありえない事だったからだ。


ササキがクレアに近づく。

自らの魔法が効かない、その異様な光景を目の当たりにして、クレアは固まっていた。


「結果的に無傷だけど、当たれば結構痛い。」


「本当だったら骨の一、二本折っても良かったけど、今回は特別に不問って事で。」


そう言って去っていくササキ。

その後をテイルも追いかける。


クレアは格下と思っていた相手に自らの魔法を防がれたという事実と、大勢の前で恥をかいたという屈辱で震えていた。


今回は怪我人が出なかったという事と、魔法を受けたササキ本人がそんなに気にしていないということもあり、騎士が動くまでの事態には至らなかった。

だが、大勢の前でいざこざを起こしたということで、クレアはひと月の冒険者活動謹慎処分を言い渡された。

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