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弱さと自責

ゴブリン討伐の依頼からひと月後。

テイルとササキは順当に依頼を達成して行き、ササキは銀級ナンバーワンに、テイルは銅級上位クラスになっていた。


今日も二人は依頼を受けて、村の作物を荒らす巨大ウサギの魔物の群れを討伐中だった。


ササキが固有能力(スキル)を発動させ、剣を振り回し高速でウサギを屠っていく。

その内の何体かがテイルの元へと向かっていく。

弓を放つテイル。

魔法の矢がウサギに当たり、四元素に因んだ様々な追加効果を発動させる。


その時、ボス個体のウサギが現れる。

叫び声を上げるボス個体。

ササキは突然、何も無い所を超高速で殴打する。

すると、空気が弾け、はるか遠方にいたボス個体の身体が弾け飛ぶ。


それを見た他のウサギたちは逃げ出す。

だが、それをテイルが許さない。

火と風の元素を宿した矢を同時に放ち、大爆発を起こす。

爆発によりウサギ達は一網打尽にされる。

これにて一件落着。

ササキとテイルはハイタッチする。


「やるようになったじゃん、テイル。」


ニヤッと笑うテイル。


「まぁな。」


「それにしてもササキ、お前の固有能力(スキル)はとんでもないな。」


「俺の固有能力(スキル)《超加速》はやりたいこと大体できるからな、いいだろ。」


「羨ましいよ、全く──────?」


テイルの視界がボヤける。

違和感を覚える暇もなく、力が入らなくなり、倒れる…


目が覚めると、神殿のベッドの上だった。

起き上がると、女性神官が歩み寄ってくる。


「目が覚めましたか。」


「あれ…俺は確か…いてて…」


頭が痛む。

神官はテイルを寝かせる。


「魔力切れと疲労です、命に危険はありませんが、それでも重症だったんですよ?」


「ま、魔力切れ?」


神官はテイルに荷物を渡す。


「そうです、あなたの使用している武器を拝見させて頂きました、あれは使用者の魔力を矢に変換するものです。」


「つまり、魔力量が多くない人が使えばたちまち魔力切れに陥ってしまう危険な武器なんですからね!以後注意するように!」


テイルは渡された弓を握る。


「え?で、でも、この弓がなかったら俺は…」


「魔力量は鍛えてどうにかなるものではありません!今後はその弓の使用には注意するように!」


「は、はぁ…」


それから数時間後、テイルは神殿を後にする。

どうも身体が重い、魔力切れの後遺症だろう。

ササキに会うためにギルドへと向かう。

すると、道中で黒いローブに身を包んだ怪しい集団に囲まれる。


「よォ、久しぶり。」


ローブの下の顔には見覚えがあった。

その男達は、以前テイルに絡んできた魔神教の教徒達だった。


「ずーっとこの前のお礼をしたいと思ってたんだ、今日はお前の為にボスを連れてきてやったからな?」


男が言い終えると、奥から屈強な人物が現れる。

その人物は、顔以外の全ての部位に漆黒の鎧を纏っていた。


「初めましてクソガキ、俺は魔神教幹部デレス・ガーディ、よくも俺の部下をやってくれたな…」


「お陰様で俺は、組織の中でマヌケ扱いされてんのよ…どうしてくれんだゴラァ!」


突っ込んでくるデレス。

テイルは身を躱そうとするが、魔力切れの後遺症もあってか上手く動けない。

その隙を突かれ、顔面を殴られる。

凄まじい激痛に倒れる。

そして、倒れた所を他の教徒に殴る蹴るなどされる。

テイルはあの日の事を思い出す。


通行人が悲鳴を上げる。

魔神教のシンボルを見て逃げ出す人々。

辺りはパニックだった。


そこに一人の少女が現れる。

少女はデレスの腕を掴み、軽い電気魔法を流す。

金属製の鎧を着用しているデレスは、通常以上に感電してその場に倒れる。

それを見た教徒達は後ずさる。


「な、何者だ!」


「まーたアタシのことを知らない輩が現れたか。」


「アタシの名はクレア・アステイル!銀級…ナンバーツーの冒険者だ!覚えとけ!コラ!」


それを聞いた教徒たちは後ずさる。


「ぎ、銀級ナンバーツーだと!?」


「怯むな!全員でやっちまえ!」


五人の教徒がクレアに襲いかかる。

クレアは派手な魔法を使わず、低級魔法で応戦する。

そして、体術と少しの魔法で教徒達を圧倒する。

勝てないと判断するや否や、教徒達は逃げ出す。


「ふぅ、一昨日来やがれ!」


通行人から拍手を送られるクレア。

そして騎士が訪れる。

騎士はデレスの身柄を拘束し、クレアに礼を言って去っていく。

クレアはうつ伏せに倒れているテイルに近づく。


「大丈夫か?」


手を差し伸べるクレアだったが、テイルから反応がない。


「お、おい!まさか死んでんじゃないだろうな!?」


慌ててテイルの身体を仰向けにする。

すると、その顔面は酷いもので、血と涙でぐちゃぐちゃ、それに加えて打撃によって腫れていた。

それに故に、クレアはまだ彼がテイルだと気がついていない。

というか、一ヶ月も前に会ったっきりの男の顔など、もう覚えていないのかもしれない。

テイルもまた、視界がボヤけて彼女がクレアだと気がついていない。


自分が救助した人間が、まだ生きていることに安堵するクレア。

肩を貸し、ゆっくり彼を起き上がらせる。


「立てるか?」


返事はない。

返ってくるのは嗚咽のみだった。

仕方ないので、彼をおんぶしてそのまま神殿へと向かう。


「アタシが来たからにはもう安心だ、すぐ神殿で治療を受けさせてやるからな。」


暫く歩いていると、テイルの意識がハッキリしてくる。

そして、自分が誰かに背負ってもらっていることに気がつく。


「俺、歩ける…」


怪我人が目覚めたことに気がつくクレア。


「何言ってんだ馬鹿野郎、そんな傷で歩けるワケないだろ!」


すると、テイルは涙を流しながら言う。


「俺は歩かなきゃダメなんだ、弱いままじゃダメなんだ…」


その言葉を聞き、クレアは沈黙する。


「この前も、俺が弱かったせいで仲間に迷惑をかけた、さっきだって、俺が強ければこんな事にならなかった…」


「俺は…何一つ成長してない、だから強くならなきゃ…」


クレアは笑いながら言う。


「確かに、お前が強ければアタシの服に汚れが着くことも無かったな。」


少し黙るクレア。

そして、今度は優しい口調で諭すように話し出す。


「強くなりたいって気持ちは分かる、でも、焦りすぎるとロクなことがないぞ?」


「アタシもつい最近、強くなろうと焦ってやらかしちまってな、一ヶ月も謹慎処分喰らっちまった。」


テイルはどこかで聞いたことのある話だと思うが、朦朧とした状態では彼女がクレアだと気が付かなかった。


「き、謹慎処分って…」


少し笑うテイル。

ちょっとキレるクレア。


「笑ってんじゃねぇよ!降ろすぞ!」


テイルは謝罪する。


「す、すみません…ところであんたは何で強くなりたいんだ?」


クレアは空を見上げる。


「アタシはな、冒険者やっててさ。」


助けてくれた女性が自分と同業であることに驚くテイル。

そして、同じ冒険者に助けられたことを少し恥ずかしく思う。

クレアは話を続ける。


「田舎の実家に仕送りしてんのよ、アタシんちは貧乏でさ、父親は小さい頃に魔物に殺されて、そのうえ下に二人も妹がいるときたもんだ。」


「だから、アタシが強くなって家族を支えなきゃいけないんだ。」


黙って聞くテイル。

やがて、神殿へ着く。


「到着だ。」


「あ、ありがとう、ここからは一人でいけるから…」


「何言ってんだよ、アタシが中まで連れて行ってやるからじっとしてろ!」


そんな問答をしていると、神殿の中から見覚えのある人物が現れる。

ササキだった。

ササキは間抜けな声を上げる。


「あれ?」


久々のササキとの再開に、身構えるクレア。


「よォ、新人さんじゃねぇか、神殿で会うなんて奇遇だな、ケガでもしたか?」


そんな煽りを無視するササキ。

クレアに背負われてるテイルを指さす。


「迎えに来たらいないもんだから探したよ、何やってんの?テイル。」


その言葉に、クレアは驚く。

ササキの視線が完全に自分が背負っている怪我人に向けられたモノだったからだ。

怪我人をゆっくりと立たせ、顔をマジマジと見つめる。


そして、彼がテイル・フロンティアだと気がつく。

つまり、赤の他人だと思って今までした身の上話は、同業者、それもササキのパーティメンバーという最悪の人物に聞かれていたのだ。

こんなのササキにバカにされるに決まってるし、知り合いの男性に弱みを見せてしまったという羞恥心で、クレアは絶叫する。


「ぎゃああああああああ!騙したなァ!」


そして、猛ダッシュで神殿の階段を駆け下り、姿をくらます。

その様子を見たササキは、状況が理解出来ずに固まる。

そして、テイルは再び倒れる。


その日、テイルは二度も神殿のお世話になったという…

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