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闇で蠢く者

この世には、稀に特別な能力を持って生まれる者達がいる。

ある者は人間であるにも関わらず、炎に対して完全耐性を有していたり、またある者は、動物の声を聴く事が可能であったり──────

世界には様々な特殊能力の持ち主がいる。

これらの特殊能力は、固有能力(スキル)と呼ばれている。


テイルは呟く。


「ここまで強力な固有能力(スキル)見た事ねぇよ…」


固有能力(スキル)は生まれた時に授かる。

これは完全にランダムなものであり、強力な固有能力(スキル)が欲しいからと言って外から干渉、操作できる代物ではない。

戦闘の役に立たない固有能力(スキル)や、地味な固有能力(スキル)も存在し、ケースによっては固有能力(スキル)の保持者自身も自らの能力に気が付かずに使用していることがある。


これらを考慮すると、戦闘において役に立つ固有能力(スキル)を持って生まれることすら超低確率である。


にも関わらず、目の前の青年ササキは超強力な固有能力(スキル)を保有し、それを自由自在に扱っている。

素人のテイルですら理解した。

この男は、人間の到達点と言われる金級すら逸脱した、白金級の存在であると。


ゴブリンの亡骸を眺め、ただ呆気にとられているテイルに、ササキが声をかける。


「これにて依頼完了だな、村長に報告だ。」


ゴブリンの巣に囚われていた人々を救出し、村へと戻る二人。

村に戻ると、囚われていた人々は家族と涙の再会を果たしていた。


村長の家へと向かう二人。

家に着くなり、早速村長が出迎えてくれた。


「冒険者様、この度は村人達を救っていただきありがとうございます…一体なんとお礼をしたらいいのやら…」


「あぁ、いいのいいの、とりあえず座ってよ。」


村長の家であるにも関わらず、なぜかササキが取り仕切る。

依頼を解決したにも関わらず、ササキはどこか不機嫌そうだ。

テイルは初めてササキの笑顔以外の表情を見た。

村長が口を開く。


「依頼達成の報酬につきましては、冒険者ギルドの方に…」


村長の話を遮るように、ササキが声を上げる。


「ゴブリン退治の依頼は達成したが、誘拐騒動はまだ終わってない。」


「え?」


村長とテイルが、同時に間の抜けた声を上げる。

テイルが話し出す。


「オイオイ、終わってないってどういう事だよ、ゴブリンを統率してるボスも倒したし、村人も戻ってきた、これにて一件落着じゃないのか?」


ササキはあえてテイルの方を向かず、村長を見て言う。


「まだ帰ってきてない村人がいるだろ。」


その言葉に、村長が反応する。


「…確かにおります、七人ほど…しかし彼らは恐らく…ゴブリンに…殺されたのでは?」


「現場を入念に調べたが、人間の死体はなかった。人を喰った痕跡もな。」


村長は話が見えてこないとばかりに怪訝な表情をする。


「つまり…どういうことですか?」


ササキが初めて真剣な表情になる。


「残りの七人はゴブリンじゃない、別の何かに攫われた。」


村長が驚いた表情をする。

沈黙が訪れる。

そして、ササキが魔法のバックの中から何かを取り出し、机に置く。

それはゴブリンが着用していた鎧だった。


「俺が調べた所、この鎧には魔法が付与されていた、それも上級魔法だ。」


驚愕するテイル。


「上級魔法…!?」


驚くテイルを他所に、ササキは話を続ける。


「ゴブリンがこんな高等な魔法を鎧に付与できるとは考えられない、上位種のゴブリンですらせいぜい中級がいい所だ。」


「つまり、ゴブリンに意図的に力を与え、誘拐騒動を起こさせ、そのどさくさに紛れて村人を攫って行った何者かがいるって話。」


村長が椅子から立ち上がり、声を荒らげる。


「そ、そんな馬鹿な!一体誰が、なんの得があってそんな事を!」


「それは正直わからん、クズ野郎が売り飛ばす為に誘拐したのかもしれないし、変態野郎が趣味に使うのに攫ったのかもしれない。」


ササキも机から立ち上がる。


「とにかく、一連の騒動に思ったよりドス黒い何かが関与してるってのは確実だ。」


「そ、そんな、では私たちは一体どうしたら…」


「俺達は一旦ギルドへ帰る、一連の流れを報告しなきゃいけないんでね。」


「また改めてギルドに依頼を出せよ、今度は危険度ランクと報酬金額を上げて、少なくとも銀級冒険者に来てもらうことだな。」


そう言って、ササキはその場を去る。

テイルもそれについていく。

二人は馬車に乗り、ギルドへと戻る。

道中、テイルがササキに質問する。


「あそこまで分かってて、なんであの村放ったらかしにしたんだ?お前ほど強いなら、解決出来ただろうに。」


「嫌だね、俺はゴブリン退治だと思って軽い気持ちで行ったんだ。」


「なんでだよ、例えドラゴンが出てこようともササキなら倒せるだろ?」


「…倒せる、だけど、お前を守れる保証が無い。」


自分が足手まといであることを思い出すテイル。

ゴブリンの巣での一件でも、自分は無力だった。

ササキが来なければ恐らく死んでいただろう。

未知の脅威を前に、パーティメンバーであるテイルを危険に晒さない為に、ササキは撤退を選んだのだ。

それに気がついたテイルは、少し気持ち悪いような、嬉しいような気分になる。


「そうか、俺が死んだらお前銀級に上がれないんだっけ、パーティじゃなくなるから。」


ササキは外を眺めている。

テイルは少し笑って言う。


「…だけどな、心配するな、ササキ!」


「今回の一件で、俺は自分が無力な存在だって痛いほど思い知らされた…悔しかった、だからこそ、俺だってこのままじゃねーぞ!」


「いつか、お前にだって追いつく!ていうか追い抜かしてやるからな!」


その言葉を聞いて、ササキは笑う。


「面白いこと言うなお前、たかがゴブリン相手に死にかけてた癖に。」


「それはまだ冒険者始めたばっかだからだ!ていうか、始めて一日目で魔物退治なんて普通ありえねぇから!」


二人は共に笑い合う。

散々な目に遭ったテイルだったが、今日は人生で一番楽しい日であるような気がした。

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