ゴブリン退治
テイルとササキは、依頼を達成する為に馬車に乗っていた。
今回受けた依頼はゴブリンの討伐。
なんでも、王国の外れにある村でゴブリンによる誘拐被害が立て続けに起きているらしい。
その総数は23人、老若男女問わずにバラバラの時間帯に消えている。
テイルが喋り出す。
「初任務が魔物の討伐って、ちょっと荷が重くないか?」
馬車の中から外を見ていたササキ。
そのまま体勢を変えずに返答する。
「そう?ゴブリン討伐っていえばRPGの鉄板でしょ。」
テイルは言ってることがよく分からず混乱する。
「なんだよそれ…そんなので本当に大丈夫か?」
すると、ササキはテイルの方に向き直り、いつも通り適当な笑顔で答える。
「大丈夫大丈夫、もしなんかあっても俺が守るから。」
「あのなぁ、命の危険があるかもしれないんだぞ?」
そうこうしている間に、目的の村まで到着する。
馬車から降りる二人。
そして村人達に話を聞くことにした。
ササキが若い村人に話しかける。
「すんません、ゴブリン退治の依頼を受けて来た冒険者なんですけど、偉い人どこっすか?」
「おぉ!冒険者様ですか!お待ちしておりました、今村長を呼んで参りますので、少々お待ちください。」
その場で少し待機していると、数人の村人がやってくる。
先頭に立つ老人こそが、この村の村長だった。
「冒険者様、よくぞお越しくださいました、立ち話もなんですし、私の家でお茶でもいかがですかな?」
村長の家へと移動する一行。
テイルとササキが席に着くと、村長は話を始める。
「さて…お二人とも、まずは冒険者等級の方をお聞きしてもよろしですかな?」
予想外の質問に少し驚く二人。
「いいけど、なんで?」
ササキが質問すると、村長は語り出す。
「恐らくこの事件、裏に強力なゴブリン種がおると我々は予想しております。」
ゴブリンにも色々な種類がいる。
レッサーゴブリン、ゴブリン、ゴブリンウィザード…etc
「根拠は?」
「本能のままに動くゴブリン共が、コソコソと人間を攫うとは考えにくい、普通なら即刻村に攻め入ってくるはずです。」
「恐らく知能の高い高レベルのゴブリンが、指揮を取って計画的に人間を攫っていると考えられます。」
通常ゴブリンとは、知能が低い獣のような魔物である。
個人個人が好き勝手に動き、統率などは取れない。
だが、稀に群れの中で突出して強いゴブリンが現れ、弱いゴブリンを支配することがある。
そういったゴブリンは大概他より知能が高く、統率された群れは厄介極まりない。
少し考えるササキ。
「なるほどね。」
そして、自らの銅のプレートを見せる。
それを見た村長は、数秒間沈黙する。
「悪いことは言わない、冒険者様、今回はお帰りになられたほうが…」
村長の言葉に被せるようにササキが話し出す。
「大丈夫だって、俺超強いから、ゴブリンなんて五秒もかからないぜ?」
「しかし…」
「それに、今俺たちが退けばまた被害は拡大する。」
「今なおゴブリンの巣の中で助けを待っているかもしれない人々の為にも、俺たち冒険者は動くべきだ、な、テイル?」
急に話を振られたテイル。
先程の話を聞き、正直帰りたいと思っていたが、何だかそういう流れじゃなくなってきたことを察知する。
「え?あぁ、そうだな、人を助けるのも俺たちの仕事だもんなー?」
村長は少し考える。
そして、ササキの目を見て言う。
「そこまで仰ってくれるのなら、今回の件、冒険者様達にお任せしましょう。」
こうして二人のゴブリン退治が始まる。
ゴブリンの巣の位置を村人に教えてもらい、装備を整える。
そして二人は、ゴブリンの巣に向けて歩き出す。
テイルはもうビビっていた。
逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
…ゴブリンの巣である洞窟の入口にたどり着く二人。
洞窟からは、酷い悪臭が漂っていた。
ササキは軽い足取りで入口まで歩く。
それとは反対に、テイルの足取りは重かった。
「見張りナーシ!突入開始!」
「オイ!待てバカ!罠とかあるかもしれないぞ!」
ゴブリンの巣の中は狭く、明かりが一切存在しなかった。
テイルはエルフの特徴として多少夜目が効くが、ササキはそうではない。
途中何度も壁にぶつかっている。
ササキの目が洞窟の暗さに慣れた頃、遂にゴブリンが姿を現す。
小さな緑色の身体、不潔に伸びた爪と歯。
そして、暴力と快感に飢えた醜悪な笑みと狂気的な眼。
人の形をした化け物と対峙したことで、テイルは恐怖を覚える。
ササキはと言うと、恐怖することも無くむしろ興味津々でゴブリンに近づいていく。
「出た出た、レベルは三ってとこか?俺の剣で一発だぜ。」
剣を抜くササキ。
それをゴブリンに向けて振り回す。
その斬撃は、テイルにすら当たりそうになる。
「こんな狭いところでそんなもん振り回すな!」
「大丈夫!フレンドリーファイアはオフだから!」
テイルは意味不明な事を言う狂人ササキと距離を取るために、数歩後ろへ下がる。
すると、妙な音と共に足元に違和感を感じる。
数秒後、地面が崩れ落ちる。
ゴブリンによる罠にまんまとハマったテイル。
そのまま地下へと落下する。
真っ暗闇の空間の中、浮遊する感覚だけが全身に伝わる。
そして、走馬灯のようなものが脳裏に浮かぶ。
幼少期に虐められた記憶。
父親に訓練と称して地獄のトレーニングをさせられた苦痛。
人より魔法が使えないと知ったあの日の絶望。
ろくな記憶がなかった。




