クレアとテイル
力を貰っても
仲間を託されても
俺は弱いままだ…
ずっとこのままだなんて嫌だ。
俺に力さえあれば、みんなを守れた。
全部俺が弱いせいだ…
弱い俺なんて必要ない。
オレは、何があっても仲間の仇を取る。
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…
目が覚めると、神殿だった。
「あれ?オレ…寝てた?」
テイルが目を覚ましたことを悟り、女性神官が駆けつけてくる。
その神官は、以前魔力切れを起こした際に担当してくれた人物だった。
「お久しぶりですテイルさん…」
「オレってば、ここの常連?」
「はい…」
神官の瞳の中には明らかに怒りの炎が宿っていた。
神官はテイルの頭を掴む。
「神殿の常連になるなんて、どれだけ無茶をしてるんですか?私、前回注意しましたよね〜?」
「常連なら値引きも時間の問題だな…コホン、では神官ちゃん、今回の病名を教えてくれたまえ。」
その反省して無さそうな態度に、ため息をつく。
「重度の栄養失調ですよ、仮にも低燃費で有名なエルフなのに、何したらこんな事になるんですか…」
心当たりがあった。
ササキから譲渡された固有能力だ。
(確か、ササキは飢餓や老化は無視できるって言ってたよな…?)
(もしかして、正当な使用者じゃないオレは、固有能力を使用する度にそれらのリスクが付き纏うってことか…?)
そんなことを考えていると、頭を軽く叩かれる。
「とにかく、もうこんな無茶しないこと、約束ですよ?」
「善処します、シスター…ところでオレをここに運んできてくれたのって誰?」
「銅級の冒険者さん達ですよ、確かパーティ名は…確か、トラストと名乗ってました。」
ベッドから立ち上がり、神官に礼を言って部屋から出ていく。
「お礼しなくちゃね。」
神殿の出口に向かっていると、途中で見覚えのある女性を見つける。
車椅子に乗った銀髪の少女。
クレアだ。
彼女は訝しげな表情でテイルを見つめる。
「ようクレア、元気?最近お見舞い行けなくてゴメンね、友達とバーベキューしてた。」
目も合わせずにそのまま通り過ぎようとすると、彼女が行く手を塞ぐ。
クレアはテイルの目をじっと見つめる。
「俺は今から出かけるんだ、悪いけど子猫ちゃんと遊んでる暇はないの。」
クレアを無視して歩き出す。
すると、後ろから彼女も付いてくる。
スルーして階段を降りていくと、彼女はそこで止まる。
車椅子だから、階段を降りるのが難しいのだ。
野獣のような鋭い眼光でテイルの方を見つめる。
そして、車椅子から身を出そうとする。
その様子を見て、ついに折れる。
「分かった!一緒に行こう!ただ…後悔するなよ?」
階段を登り直し、車椅子を抱える。
そして、飛び降りる。
着地と同時に背中をクレアに叩かれる。
「なんなんだよ…」
クレアを連れて目的地へと向かう。
車椅子を押してギルドへと入ると、冒険者やギルド役員達がこちらを見てくる。
ギルドの中へ入り、軽快なステップで歩く。
「ようみんな、久しぶり、元気してた?」
そのまま受付へと向かう。
彼の変わりぶりに一同は驚きを隠せない。
「アイツあんな感じだったっけ…?」
「噂によると、仲間を全員失ったらしいぞ…」
「あぁ…それで…」
受付に置かれたベルを鳴らすと、受付嬢が現れる。
「テイルさん!お久しぶりですね!」
現れたのはクリスだった。
「久しぶり、ちょっと聞きたいことがあるんだけど時間ある?」
「大丈夫ですよ!どのようなご要件でしょうか?」
「ある冒険者チームに会いたいんだけど、名前は確か…トラストとか言ったかな。」
要件を聞き、カウンターの奥に行くクリス。
他の役員にトラストの所在を聞いている。
少しして、申し訳なさそうな顔をして戻ってくる。
「ごめんなさいテイルさん、たった今、トラストの皆さんは依頼を受けて現場に出発してしまいました…」
テイルは何かを考えるように天井を見上げる。
そして、受付嬢に向き直る。
「依頼って?」
受付嬢は手元にある資料に目を通す。
「地下水道に巣食う超大型害蟲の討伐です、それがどうかしましたか?」
テイルは苦虫を噛み潰したような顔をする。
「…蟲かぁ。」
そのまま出口に向かって歩き出す。
後ろを見るとクレアがついて来ていた。
足を止める。
「クレア、キミとのデートはここまでだ、なんでか分かる?」
クレアがとぼけたような顔をすると、テイルはその場で膝をつき、目線を合わす。
「オレは今から友達に会いに危険な場所に行く、分かるよな、子猫ちゃん…」
その言い方が癪に触ったのか、クレアはテイルの頬を殴る。
「脚がない身体障害者のキミを戦わせたら、周りの人達がオレをサディストだって勘違いするだろ!」
更にもう一発打撃が入る。
「そうだな、障害者の意思を尊重しないのも差別だ、でも尊重した結果もっと酷いことになったら皆はオレを批判する、もうどうしたらいいのか分かんないよ!」
今度は鼻に打撃が入る。
「…ホントのこと言うと、俺はクレアを守れる自信がない、頼む、ここで待っててくれ。」
テイルはそこで初めて、クレアの目を見た。
すると、彼女は手を差し伸べてくる。
その手を握ると、電流が走る。
突然の苦痛に悶える。
「腐っても上級魔法使いだな!ある程度なら無詠唱でも使えるってか?」
近くに居た商人から布を奪い取る。
そして、それをクレアに巻き付け、テイルが彼女を背負う形で固定する。
商人に金貨を投げつけて、クレアをおんぶして出口へと向かう。
「よし、身体障害者になってから初めての冒険だ!クレアの魔法が火を吹くぜ!」
「いや、雷か。」
そのまま地下水道へ行く二人。




