友達になってくれてありがとう
金剛鉄人はティアと兵士二人を抱え、魔法を発動させ高速で洞窟から離脱する。
これが今の装備で運べる最高人数であり、重傷者から外へ運ぶ最良の手だと考えていた。
一方、洞窟に取り残されたクレアは、火傷の痛みに耐えながら、テイルを引きずり出口を目指す。
その時、テイルが気絶から目覚める。
「はぁ…はぁ…クレア…一体何が起きて…」
「ササキがバカみたいに強いヤツと戦ってんだよ…喉が灼けてるんだ…あんまり喋らせんな…」
「そうか……」
テイルは目を閉じる。
そして、気絶する間際に見た激しい戦いを思い出す。
あの時、ササキの顔には汗が浮かんでいた。
今度ばかりはササキでも負けるかもしれない。
テイルはいつもササキに助けられていた。
いつもササキの背中を追うしかなかった。
だからこそ、ササキがピンチな時は、仲間として…
「俺が…助けるんだ…!」
クレアを振りほどき、無理やり身体を奮い立たせ、走り出す。
後方からの制止も聞かず、一心不乱に走る。
一方その頃、ササキは謎の男と戦っていた。
激しい攻防の末、互いの体力が削られる。
次の一撃で決着する…
謎の男が腕を突き出す。
「殺す前に、名を聞いておこう。」
ニヤリと笑うササキ。
「ササキ・アキラ…」
謎の男も名乗る。
「冥土の土産に教えてやろう…」
「私の名は、サイトウ・コジロウ…魔神教の教祖だ。」
構える二人。
ササキは固有能力を全開にし、コジロウは大量の焔を放つ。
無数の焔と衝撃波が衝突する。
「ハハハハ!埒が明かんな…!」
コジロウは両手を前に突き出し、一点集中の巨大な焔の弾を創り出す。
「ククク…これならどうだ!」
ササキは冷や汗をかく。
「これはちょっと…ヤバいかもね。」
今まさに放たれようとする焔。
ササキはこの世界に生まれ落ち、初めて本気を出そうとしていた。
その時、コジロウの肩に魔力の矢が突き刺さる。
水の元素が付与された弓がコジロウの肉を抉る。
二人が矢が放たれた地点に目を向けると、そこにはテイルがいた。
「今だ…やれ…ササキ…!」
倒れるテイル。
ササキが初めて焦った顔を見せる。
「テイルッ!」
最高の勝負の邪魔をされ、コジロウは怒り狂った。
「このクズが…!文字通り勝負に水を差したと言う訳か…!」
テイルの方に手をかざすコジロウ。
ササキが叫ぶ。
「やめろ!」
怒りに支配されたコジロウにその声は聞こえない。
「最大出力だ!ここら一帯諸共消えてなくなれ!」
コジロウが焔を放つ。
辺りは真っ赤に染まり、地面や岩肌が溶け始める。
ササキはテイルを庇うように立つ。
ササキの脳内を無数の思考が駆け巡る。
固有能力を最大出力にして俺が壁となりテイルを守る…
いやダメだ、俺が助かってもテイルが死ぬ!
テイルに固有能力を適用する…
ダメだ!他人に固有能力を適用してる時は俺が無防備になる…!
高速で逃げるか…!?
この炎から逃げ切る速度を出すと、テイルの肉体が持たない…!
全く、世話が焼ける相棒だな──────
辺りが光と熱気に包まれる──────
──────
─────
────
─…
気がつくと、曇り空が見えた。
雨が降っていた。
洞窟は崩壊し、辺りは瓦礫の山だった。
「生きてる…」
テイルは横を見る。
すると、そこにはササキがいた。
「…よう…テイル…」
テイルは驚愕する。
あの無敵のササキが、地面に倒れていた。
全身が焼け焦げ、顔の一部は焼けただれ、皮膚が剥がれている。
その手はテイルの胸に置かれていた。
「ササキ…!」
「俺の固有能力…は…限定的にだが…他人に付与することもできる…」
「もういいササキ!喋るな!俺が今助けを呼んでくるから…!」
身体を無理やり起こすテイル。
助けを呼びに行こうとするが、ササキが手を離さない。
「もういい…俺は助からない…致命傷の回復は…予め固有能力をオートで発動させておかなきゃ再生出来ないんだ…」
ササキはこの状況でテイルに固有能力の説明を始める。
「わ、ワケ分かんねーこと言うなよ…」
「覚えておけ…お前に…必要になることだ…」
テイルはササキを振りほどくのをやめる。
「ど、どういうことだ…?」
「俺は幸せ者だ…面白い仲間ができて…冒険もできた…お前らと過ごせたこの時間…楽しかったぜ…」
その言葉を聞き、テイルはササキが本当に死ぬことを悟る。
そして戦闘に割って入ったことを深く懺悔する。
テイルの目から大粒の涙がとめどなく溢れる。
「ごめん…俺が割って入ったせいで…結局お前に手間かけさせて…」
「俺はあの日から…何も変わってない…力もない癖にいきがって…他人に頼ってばかりのクズだ…」
ササキは力なく微笑む。
「そんなこと言うな…相棒…お前もきっと、俺みたいに…変われるさ…」
ササキはテイルの手を強く握る。
「今からお前に、限定的だが俺の固有能力を譲渡する…」
「…!」
固有能力の譲渡などという離れ業、試された前例も、成功した前例もない。
だが、ササキならやってのけるというある種の信頼があった。
「大丈夫、成功するさ…俺は昔、あるバカに固有能力を与えられたんだ…その時コツを掴んだ…」
「…この力を使って…俺の…俺たちの…大切な仲間を…頼むぜ…」
テイルはササキを抱きしめる。
「俺に…任せておけ…もう逃げない…絶対、俺の仲間は死なせねぇ…!」
ササキはテイルの額に指を当てる。
「…合格だ。」
そのまま力無くテイルに寄りかかるササキ。
「俺と友達になってくれて…ありがとう。」
ササキはそのまま目を閉じる。
テイルは空に向けて叫ぶ。
頬を伝う水が雨水か、自分の涙かも分からない…
だが、いつまでもこうしている事はできない。
ササキの亡骸をそっと地面に置き、立ち上がる。
ササキの遺言通り、仲間を助けに向かうテイルだった。
雨は止み、天気は嘘のように快晴となった。
テイルは頬に伝う水が、自らの涙だったことを知る。




