転生者
ササキから、パーティに勧誘されるクレアとティア。
その提案に、驚く二人。
「はぁ!?お前、今それ言うか!?」
パーティとは、命を預ける仲間であり、そう簡単に即決できるものではない。
少し考えるクレア。
そして答えを出す。
「嫌だね。」
「アタシとティアはお前らを負かすくらいの冒険者パーティになるんだ。」
「…そうか。」
ササキは少し寂しそうな顔をする。
その静寂をぶち壊すように、クレアが豪快な笑みを浮かべ声を張り上げる。
「だがな!今回の敵は強大だ!魔神教をぶっ飛ばすまでなら…同盟を組んでやってもいいんだぜ!?」
その言葉を聞き、ササキは素直に喜ぶ。
「同盟か!いいなそれ!じゃあ俺たちは今から同盟だ!チームの名前とか決めるか!?」
「そりゃお前決めるだろ!そうだなー…」
二人が盛り上がっているのを他所に、ティアとテイルは集まっていた。
「ごめんなさい、クレアちゃん、素直じゃなくって…」
「いいって事よ、うちのササキも無神経だからな。」
静かに笑い合う二人。
同盟結成でお祭り騒ぎになっている部屋に、兵士と金剛鉄人が入ってくる。
『楽しそうなムードのところ悪いが、そろそろ出発してもいいかな?』
その言葉を聞き、全員が頷き、出発する。
ササキが一番前に出る陣形で進む一同。
後方支援役として最後尾にいるクレアとテイル。
「そういえばクレアはなんでこの任務に参加したんだ?」
「アタシは…別に、金だよ金、報酬が高いからな。」
それを聞いて振り返るティア。
「それ嘘ですよ、クレアちゃん、この周辺に故郷の村があるから心配できちゃったんですよ。」
クレアはティアの背中を軽く小突く。
「余計なこというなお前は。」
クレアの家族想いな一面に、ほっこりするテイル。
それと同時に、自分は家族に対して迷惑をかけ、喧嘩をして飛び出してきた事を思い出す。
「これが終わったら、家に帰るかな…」
暫く歩いていると、洞窟の最奥部に辿り着く。
そこには大きな鋼鉄製の扉が張られていた。
押しても引いても開く気配はない。
『ノックといこう。』
金剛鉄人が腕から魔力弾を放つ。
魔力弾が扉に衝突する。
だが扉には傷一つ付かなかった。
扉を調べる金剛鉄人。
『これは…扉に魔力を無効化する結界が貼られている…』
兵士が呟く。
「別のルートを模索するか。」
ササキが一歩前に出る。
「それには及ばない、魔力を無効化するってんなら、物理的に破壊すればいい。」
固有能力を発動させ、速さと重さを掛け合わせた打撃を放つササキ。
数発の打撃の末に、扉が破られる。
そして、不気味な内装の部屋が姿を現す。
部屋の中央には魔神教のシンボル。
所々に、人間が磔にされている。
兵士達は周囲を警戒しながら、磔にされた人達を救出しようとする。
だが、その全員が既に息絶えていた。
「死んでる…!」
その光景に震えるクレア。
無理もない事だった。
彼女は気丈に振る舞ってはいるが、まだ十六歳の少女だ。
怖くて入口から部屋の内部に踏み込めないクレアの手を、テイルが引く。
「大丈夫だ、俺達ならきっとどんな化け物が出てきても倒せる。」
「…う、うるせー!別にビビってねーよ!」
テイルの手を振り払い、クレアは奥へと進む。
そして、机の上にある放置された資料に目を通す。
「…!」
クレアはその場で固まる。
「何か見つけたかー?」
ササキが近づく。
クレアが資料の内容を話せずにいると、ササキの後方から聞き覚えのない声が響く。
「彼らは実験台だ、ただの人間をどこまで強化できるかのな。」
ササキの後方に、奇妙な衣装を着た男が立つ。
金剛鉄人の生命感知にもかからず、ティアの嗅覚をも掻い潜って現れたその男、立っているだけで全身から凄まじい圧を放つ。
男が片手を構える。
ササキは即座にクレアを守るように覆い被さる。
男の片手から焔が放たれる。
火球よりも小さい焔だが、それとは比にならないほどの魔力が秘められている。
例えるなら、小さな太陽。
ササキの身体にそれが接触する。
瞬間、凄まじい爆炎が辺りを包む。
数メートル離れていたはずのティアと王国兵士達は熱気だけで全身が焼け焦げ、内臓にまで熱が達し倒れる。
金剛鉄人も防御の姿勢を取るが、熱波のみで魔導装甲が半壊する。
入口付近に居たテイルは吹っ飛ばされる。
かなりの距離があったにも関わらず、火傷で瀕死の重症を負う。
一瞬にして調査団の殆どが倒れた。
クレアはササキによって庇われたことにより、他よりダメージは少ない。
が、無傷とはいかず膝をつく。
立っていたのは、ササキのみ。
流石のササキでも数秒の再生時間を要する大ダメージを負う。
再生していく肉体。
その様子を見た謎の男は、ササキに向けて話し始める。
「あえて痕跡を残し獲物が釣れるのを待っていたが…大物が釣れたな。」
ササキは固有能力を発動させ、クレア達を部屋の出口まで退避させる。
そして、比較的傷が軽いクレアと金剛鉄人に言う。
「逃げろ、思ったよりヤバいヤツがいる。」
「お前は…どうするんだよ…」
「足止めをする、大丈夫、必ず戻る。」
クレアは頷き、テイルとティアを連れて、重い体を無理やり動かし逃げる。
金剛鉄人は王国兵士達を抱えている。
謎の男に向き直るササキ。
「スーツ姿でお出ましとはな、お前が魔神教のボスか?」
「スーツ…私のこの服がスーツに見えるか、やはり貴様、転生者だな?」
ササキが拳を鳴らす。
「…こりゃ骨が折れそうだ。」
ササキの放つ衝撃波と謎の男が放つ焔が衝突する。
互いにそれなりのダメージを与えるが、決定打にはなり得ない。
謎の男が呟く。
「与えたダメージが無効化されている…相当強力な固有能力だな。」
男はササキの固有能力を分析する。
「再生能力を極限まで高める固有能力…?それとも身体能力を向上させる固有能力か…?いや…どちらも違うか…」
高速で移動するササキに攻撃を加えつつ、注意深く観察する男。
「…その動きを見るに、己を超高速にする固有能力…と言った所か、細胞の働きを高速化させて爆発的な回復力を得ているな?」
謎の男は攻撃を更に激しくする。
「この理論が正しければ貴様の回復も無限ではない、一撃で回復が間に合わない程の致命傷を負わせれば死ぬ。」
ササキが少し笑みを崩す。
「ご名答、それが出来ればの話だがな!」
男の理論は当たっていた。
ササキの回復はあくまで自然治癒を高速化させたモノ。
例えば刃物で斬られた場合、ササキからすると何年もかけてゆっくりと刃を通されているように感じる。
つまり、刃が身体を切り裂くより先に、斬られた傷が完治しているという形になる。
故に、高速化した自然治癒力に勝る速度、範囲で致命傷を負わされれば、ササキでも死ぬ。
ササキが謎の男に近づけない理由がこれだ。
焔という性質上、その攻撃範囲は自然治癒力を上回る。
不用意に近づいた結果、男がまだ火力を上昇させられる場合…
ササキは死ぬ。
激化する戦闘。
ササキの放った衝撃波が、ついに男の腹にクリーンヒットする。
血反吐を吐く男。
それと同時に、凄まじい量の焔をササキへと放つ。
全弾命中。
咄嗟に防御の姿勢を取ったササキだったが、先程より再生に時間を要する。
「ダメージを与える度に火力が上昇している…?」
ササキが敵の能力を考察していると、突然男が笑い出す。
「ハッハッハッ!いい!いいぞ!これが戦いか…破壊神により力を与えられ転生してから、対等な敵が存在せず退屈だったんだ!」
その言葉を聞き、ササキは嗤う。
「そりゃ退屈なセカンドライフ送ってきたな、俺は女神に言われてこっちに来てから、アンタらを倒すために仲間を集めてた、結構退屈しなかったぜ?」
謎の男も嗤う。
「仲間…?あぁ、さっきのゴミ共の事か…フフ…無駄な事をしたな、いくらゴミをかき集めてハリボテを作ろうと、私から見たらそれはクズにすぎない。」
「…ゴミ…?俺の仲間の事を言ってんのか…?殺すぞ、テメェ…」
この世界に来てから、初めてササキはキレた──────




