洞窟探索
村へと到着した調査団。
ギルドの調べによって、魔神教が拠点に使っていたであろう洞窟の場所は確認されていた。
あとは内部の調査をするだけだ。
村の空き家を拠点とし、早速洞窟の調査を開始する調査団。
洞窟の内部は整備されており、所々に魔神教のシンボルが描かれた旗が掲げられていた。
先頭に金剛鉄人とティア。
金剛鉄人は特殊な魔法装備による探知、戦闘が可能。
ティアは獣人の特徴である聴覚、嗅覚による索敵を得意とし、更に牙や爪を使った戦闘も行える。
フードを脱いだ彼女の頭部からは、大きな獣の耳が生えていた。
その後ろにササキと王国兵士。
そして、最後尾にクレアとテイルを置いた陣形で先へと進む。
クレアがテイルに突っかかる。
「洞窟で弓って、どういうセンスだよ。」
テイルは今回も魔法の弓を持っていた。
だが、使うつもりはなく、あくまで何かあった時用だ。
今回の探索での戦闘スタイルは、不得意だが短剣と魔法を主軸としている。
「使うつもりはない、あくまでお守りだよ。」
「お守りって、そんなに怖いならお家に帰るか?」
テイルは正直ビビっていた。
魔神教という異質な団体を相手取り、戦える自信がなかった。
だが、このままで良いわけないとも思っていた。
自分は弱い。
だからこそ、成長しなければならないのだ。
きっとササキも自分を成長させる為にこの任務を推薦してくれたに違いない。
そう思いながら、テイルは歩みを進める。
改めてクレアの顔を見て、この前の事を思い出す。
言うべき言葉が喉の奥に突っかかる。
「そういえば…なんだ…?この前の件なんだがな…」
ウジウジとしたテイルを見て、クレアは若干の苛立ちを覚える。
「この件?なんだ?言いたいことがあるならハッキリ言いやがれ。」
テイルはクレアの目を見ずに言う。
「怪我した俺を神殿まで運んでくれて…ありがとう…助かった…」
この前の件と言われ、自分がギルドでササキ達に突っかかった件の文句を言われると思ったクレアは、不意の礼に驚く。
そして、若干照れる。
「バカ!礼なんていらねぇよ!あれは…成り行きってヤツだ!」
頬を赤らめ目を逸らすクレア。
そんな会話を聞きながら歩くササキ。
二人のコミュニケーションが予想以上に上手くいってそうで内心ほくそ笑む。
「テイルー?イチャイチャするのもいいけど、ちゃんと警戒しろよー?」
「イチャイチャなんてしてねぇよ!」
「ならいいけどさ…」
ササキは話を続ける。
「俺は最強のパーティを育成するのを目的としてる、だから今回の冒険を通して、テイルには強くなって欲しいんだよね。」
ササキの話を聞いて、クレアが疑問を口にする。
「最強のパーティ作りたきゃ最初から強いヤツを仲間に引き入れりゃいいだろ、聞くところアンタも相当強いみたいだしよ。」
「強いだけじゃダメだ。」
ササキはその理論を真っ向から否定した。
「俺はね、背中を預けられる仲間が欲しいんだよ、強いだけの人間は信用できない。」
「それに…」
ササキは何かを言いかけ、黙る。
テイルがそれに気が付き、続きを引き出そうとする。
「なんだよ、言えよ。」
ササキが笑う。
「弱いヤツを強くするのって、育成ゲームみたいで楽しいじゃん?」
その言葉を聞き、キレるテイル。
「なんだとテメー!俺をバカにしてんのか!」
その時、先頭を歩いていたティアが足を止める。
金剛鉄人も足を止め、止まれのジェスチャーで列を停止させる。
ティアが怪訝な顔をする。
「なにか来る、おかしな足音…人数は…不明…たくさん…匂いは多分人間です…」
続けて金剛鉄人が声を発する。
『生体反応が三つ、おかしな反応だ、錯乱しているのか…?』
全員が身構える。
岩陰から何者かがゆっくりと姿を現す。
それの正体は、歪な人間のような姿をした化け物だった。
合計三体の怪物が、一行を見て停止する。
異様に筋肉が発達した個体。
頭部のみが常人の五倍はあろうかという個体。
人の身体構造でありながら蟲のような頭部と複数の腕を持った個体。
あまりの醜悪な見た目に、テイルは本能的な恐怖を覚えた。
その時、化け物達が一行に襲いかかる。
「ォァァァァアアア!」
最初に飛び出したのは筋肉の化け物だった。
その巨体に見合わぬ俊敏さで、金剛鉄人に打撃を加える。
壁にめり込む金剛鉄人、頭を殴られ兜が凹む。
次に頭の大きな化け物がブツブツと何かを呟く。
その瞬間、複雑な魔法陣が展開される。
「上級魔法だと…!?」
クレアが叫ぶ。
そして、瞬時に風属性の攻撃魔法が放たれる。
射線上に居たティアは即座に防御魔法のシールドを展開する。
だが、それは砕かれてしまう。
風の刃がティアに直撃する。
シールドがクッションになってくれたお陰で致命傷は避けられた。
閉所での襲撃に、パニックになる王国兵士。
クレアは蟲の化け物が姿を消したことに気がつく。
「もう一体はどこだ…!?」
クレアの言葉を聞き、蟲の化け物を探すテイル。
だがどこを見てもいない。
その時、上から奇妙な音が聞こえた。
テイルが上に目をやると、そこには天井を這う蟲の化け物がいた。
「上だ!火球!」
魔法の構えを取るテイルだったが、蟲の化け物が口から射出した粘性の糸によって魔法の発動を妨害される。
王国兵士達は剣を抜き化け物達と戦う。
だが、筋肉の化け物により剣は折られてしまう。
絶対絶命かと思われたその時、ササキが固有能力を発動させる。
固有能力を発動させ超高速となったササキは、ティア、テイル、クレア、兵士達を瞬時に後方へと下がらせる。
「ちょっと下がってろ、前には出るなよ。」
三体の怪物を前に一歩も下がらないササキ。
壁にめり込んでいる金剛鉄人へと声をかける。
「そっちが一体、こっちが二体ね。」
壁から這い出てくる金剛鉄人。
頭を叩きながら魔導装甲の動作確認をしつつ構える。
『私が二体でもいいんだぞ?ルーキー。』
駆け出す二人。
ササキが超高速の筋肉の化け物に打撃を喰らわせる。
最初の一撃は耐える化け物だったが、続けざまに放たれた数十発の打撃には耐えられずに破裂する。
金剛鉄人は頭の大きな怪物と対峙する。
片腕を上げる金剛鉄人。
すると、魔法陣や詠唱を介する事なく、火球のような魔力の塊が腕から発射される。
これは魔法ではなく、魔力を凝縮させ、質量を持つ魔力弾として放つ高等技術である。
咄嗟に身を躱そうとする化け物だったが、その頭の巨大さ故にバランスを崩し、転倒する。
奇跡的に魔力弾を避けることに成功する。
壁に衝突した魔力弾は、その場所を綺麗に抉りとる。
第二弾の準備をする金剛鉄人。
照準を定める。
それに気がついた化け物は、起き上がり魔法を発動させようとするが、その動きはあまりにも鈍すぎた。
発射される魔力弾。
化け物の頭部へヒットし、着弾箇所は見事に爆散する。
蟲の化け物は再び天井に登りテイル達に奇襲を仕掛けようとしていた。
ササキは天井に向けて超高速の打撃による衝撃波を放とうとしたが、洞窟の崩壊を計算し打つことを躊躇う。
金剛鉄人もまた、魔力弾による洞窟の崩壊を恐れて数秒迷う。
その数秒が命取りとなる。
天井から勢いよく飛び降りる化け物。
狙いは負傷したティアだった。
「オラァ!」
テイルが矢を放つ。
矢には水属性の元素が付与されていた。
矢は化け物に当たるが、倒しきれてはいない。
「雷撃ッ!」
クレアが魔法を放つ。
その魔法は見事化け物に命中する。
身体に付着した水元素の影響で、雷撃の通りが良くなる。
結果、大ダメージを受けた化け物は黒焦げになって地面に落ちる。
脅威が去ったことを確認して、兵士達がティアの手当を始める。
幸い命に別状はないようだ。
顔を見合わせるクレアとテイル。
テイルは拳を突き出す。
「やったな!クレア!」
それを見たクレアは、照れくさそうに目を逸らし、拳を合わせる。
「ま、まぁな…まだ気を抜くなよ…」
その後、一同は使用されていない古びた部屋を発見した。
金剛鉄人がトラップの有無や生命反応を確認する。
危険がないことを確認した一同は、ティアの回復も含め、そこで休憩を取ることにした…




