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泣き虫な俺たちは  作者: 陽花紫


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4/5

二人で泣き合う

 それは、些細なきっかけだった。


 リツが、俺のスマホを勝手に見ていた。

 画面に映っていたのは、サークルの連絡。

 ただそれだけ。

 たったそれだけのことなのに、リツの顔がこわばった。


「……誰?」


 その一言で、嫌な予感がした。


「サークルの人」

「名前は?」

「さあ……、全員知ってるわけないだろう?」


 声が、少しだけ強くなる。

 その瞬間、律の目が揺れた。


「ほら、また……そうやって……」


 律は唇を噛みしめて、黙り込む。

 泣く前の、あの沈黙。

 どうにも居心地の悪くなった俺は、先にその言葉を言ってしまったんだ。


「別に、そんなんじゃないから……。疑うなよ」


 それが、引き金だった。


「疑うなって……」


 リツの声が、裏返る。


「シュンスケが疑わせるようなこと、するからじゃん……!」

「はあ?何もしてないだろう?」

「してるよ!」

「してないって、言ってるだろう!」


 言葉が、ぶつかる。

 この声も、次第に大きくなっていく。


 気づいたら、俺もリツも泣いていた。


「なんで……、なんで信じてくれないんだよ……」

「だって……!怖いんだ、僕……。シュンスケに捨てられたら、どうしたらいいの……!」


 二人分の嗚咽が、部屋の中でわんわんと響いていた。


「俺だって怖い!」

「じゃあ、なんでそんな余裕があるような顔するの……」

「余裕なんてない!」


 膝から力が抜けて、俺は床に座り込んだ。

 リツもまた、同じように崩れ落ちる。


「やだ……やだよ……」

「俺を、一人にしないでくれ……」


 それはリツの声なのか、はたまた俺の声なのか。


 気づけば俺は、頭を抱えていた。

 涙が床に落ちる音が、やけに大きく感じられた。


「もう、無理だ……」


 そのような言葉が、思わず口をつく。

 リツが、泣きはらした顔を上げていた。


「……別れる、の?」


 その一言で、胸がひどく張り裂けそうになっていく。


「違う!……違う……けど……。苦しいんだ……」


 リツは、しばらく黙っていた。

 そして、ゆっくり俺に近づいた。


「僕も。……ずっと、苦しい」


 俺たちは、またしても同時に泣き出した。

 声を抑えることも、形を保つこともできずに。

 リツが、俺のシャツを強く掴む。俺もまた、リツの背中に強く腕を回していた。

 縋るみたいに、溺れるみたいに。


「離れないで」

「離れない……」

「嘘ついたら、許さないから……」

「つかない……」


 その約束は、震えていた。

 それでも、今はそうすることしかできなかった。


 顔を上げた瞬間に、視線が絡む。

 涙で、ぐちゃぐちゃで。それでも、この目はお互いのことしか見ていなかった。


「……キス、して」


 そう、リツが言った。

 拒む理由は、なかった。

 唇が触れたその瞬間に、嗚咽が混じる。

 多くの涙が頬を伝って、やがて唇に落ちていく。

 しょっぱい、あたたかい。


 そのキスは、決して上手いものではなかった。

 噛み合わなくて、息も乱れて。

 それでも、俺たちは離れることができなかった。


「……好き」


 そう俺が言えば、リツの喉が鳴っていた。


「……好き……」


 泣きながら、またキスをする。

 確認するように、その愛を奪うように。


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