金属をも切り裂く一閃
鉄は、身にまとった金属ごと巨大な電磁石に強く引き寄せられていた。
「くそっ……こんなもの、俺には!」
鉄は能力を使い、周囲の金属を操ろうとする。しかし、操ろうとした金属までもが電磁石に引き寄せられてしまう。
「無駄だよ。その電磁石の磁力を、お前の能力で打ち消すことはできない」
僕は鉄を見上げながら言った。
「なるほど。確かにいい作戦だ。最初からこれが狙いだったんだろ?」
「まあ、そういうことでもあるかな」
鉄は困惑した表情を浮かべた。
「僕たちの作戦を説明すれば、きっとわかるよ」
僕は鉄に向かって、ゆっくりと話し始めた。
「僕たちの最終的な目的は、確かにお前をここへ誘い込むことだった。でも、それには三つの懸念点があったんだ」
「懸念点だと?」
「一つ目は、お前の能力が何なのかわからなかったことだ。事前に情報を調べて、ある程度の予想はついていた。でも、確証はなかった。もし金属ではなく、あらゆる物体を操る能力だったら、この作戦は使えなかった」
「だから、わざわざ俺のところに攻め込んできたってわけか」
「そうだ。ジンがお前に能力について尋ねただろ? あのときの会話は、無線機を通して僕にも届いていたんだ。それで確証が持てた」
「俺はお前らのために、ペラペラと喋っていたようなものか……」
鉄は悔しそうに顔を歪めた。
「そして二つ目は、能力の効果範囲がわからなかったことだ。もし金属を一定の距離までしか操れないなら、この作戦は成功しなかった。だから、実際に戦って確かめる必要があったんだ」
「能力の強さが、仇になったというわけか……」
「そういうことだね」
僕は一度、鉄の様子を確認した。
「そして三つ目。鉄、お前が僕たちの想像以上に強かったことだ」
「……何?」
「正直に言うと、僕たちはタワーでジンがお前を倒してくれると思っていた。ジンの剣術なら勝てると、本気で信じていたんだ。でも、お前の能力も、その使い方も、僕たちの予想を超えていた」
「だからジンは、お前にゴミ処理場へ向かうよう指示したのか」
「ああ。ジンは勝つつもりだった。でも、万が一のことも考えていたんだ。だから第二の作戦に切り替えられるよう、僕に先に向かうよう伝えた」
僕は隣にいるジンを見た。
ジンは小さく頷いた。
「能力の範囲を確かめるために、ジンが至近距離まで切り込んだときも、お前は反撃してきた。その結果、ジンは大きなダメージを負った」
「だが、そのおかげでお前の能力と効果範囲を知ることができた。そういうことか」
「そうだ。ジンが時間を稼いでくれたからこそ、この作戦は成功したんだ」
僕は鉄を見上げ、声を張り上げた。
「もうお前に勝ち目はない! 降参しろ!」
「……そうだな。ここまでかもしれないな」
鉄は静かに答えた。
僕は、ようやく決着がついたのだと思った。
しかし、その直後だった。
バチッ――!
突然、電磁石から火花が散った。
次の瞬間、電磁石の電源が落ちた。
「なっ……!」
それまで引き寄せられていた金属が、一つ、また一つと落ち始める。
「くそっ……発電機の電力が尽きたのか!」
強力な磁力を維持するために、大量の電力を消費していたのだろう。ついに限界を迎えてしまったらしい。
「なんで今のタイミングで……!」
僕は思わず声を漏らした。
磁力が弱まったことで、鉄の身体も少しずつ落ちていく。
「最後の最後でしくじったな……。やはり、金属こそ絶対だ」
鉄は能力を使い、周囲の金属をかき集めようとした。
しかし、その瞬間だった。
横からジンが飛び出した。
「もう負けねぇ。今度こそ、絶対に!」
空中にいる鉄に向かって、ジンは剣を振りかぶった。
「させるか!」
鉄はどうにか身を守ろうと、能力を使って目の前に巨大な金属の塊を作り出した。
「どうだ! これなら斬れまい!」
ジンは剣を強く握り直した。
タワーで敗北したとき、自分の剣が鉄の鎧に通用しなかったことを思い出す。
あのときは、どれだけ剣を振るっても金属を斬ることはできなかった。
だが、もうあのときとは違う。
これまでの戦いで、ジンは何度も強敵と刃を交えてきた。
力任せに剣を振るうだけでは、越えられない壁があることも知った。
(……待てよ)
ジンは目の前の巨大な金属の塊を見つめた。
(鉄だって物体だ。だったら、力の使い方を変えれば……斬れるはずだ!)
これまでの戦いで得た経験が、ジンの中で一つにつながっていく。
ただ力を込めるだけではない。
今まで身につけてきた剣術を信じ、自分の力を最大限に引き出す。
そのすべてを、この一撃に込める。
「今やらなくて、いつやるんだよ……!」
ジンは腰を深く落とし、剣を両手で強く握りしめた。
これまでとは違う構えだった。
(もうミナトに支えられてばかりの俺じゃねぇ……)
(今までの戦いで得たもの、全部この一撃にぶつけてお前を倒す!)
ジンの表情には、迷いなど一切なかった。
「お前の金属なんて関係ねぇ!」
ジンは地面を強く蹴った。
その一瞬、ジンの動きが変わった。
これまで積み重ねてきた経験と剣術。そのすべてを込めた一撃が、巨大な金属の塊へと振り下ろされる。
「うおおおおおおおおっ!!」
ガァァァンッ!!
凄まじい衝撃音が、ゴミ処理場に響き渡った。
僕は思わず目を見開いた。
そして――
巨大な金属の塊は、真っ二つに切り裂かれていた。
「なっ……!?」
鉄の表情が驚愕に染まる。
ジンは剣を振り抜いた姿勢のまま、ゆっくりと顔を上げた。
「……これで終わりだ、鉄」
いつも読んでくださってありがとうございます!
今回のお話で、ひとつの戦いが終わりましたね。
少し長くなってしまったかな? とも思っています(笑)。
シオン、ジン、そしてミナト。
この3人のキャラクターはどうでしたか?
1人でも「好きだな」「かっこいいな」と思ってもらえていたら、とても嬉しいです!
次回からのお話も頑張って書いていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします!
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