鋼鉄を誘い込む罠
僕はひたすら走り続けていた。
背後からは、金属同士が激しくぶつかり合う音が聞こえてくる。
ジンは大丈夫だろうか。
そんな不安が頭をよぎる。
けれど、今は振り返っている場合じゃない。
僕がやるべきことは、あの作戦を成功させることだ。
「シオン、聞こえる?」
僕は通信機に向かって声をかけた。
『聞こえてるよ。そっちはどう?』
「今、ゴミ処理場に向かってるよ。ジンが鉄を引きつけてくれてる」
『そっか……。こっちも準備はできてるよ』
シオンの声を聞いて、少しだけ安心した。
だが、もう一つ伝えておかなければならないことがあった。
「あ、そうだ。シオン、一つお願いがあるんだけど」
『お願い?』
「タワーの下で待機していてほしいんだ。もしジンに何かあったら、車でゴミ処理場まで連れてきてほしい」
『……分かった。任せて』
「ありがとう。頼んだよ」
通信を終えると、僕は再び走り出した。
あとは、鉄をあの場所まで誘い込むだけだ。
やがて、目の前に巨大な施設が見えてきた。
僕はその建物を見上げる。
――ここからが本番だ。
「よし、これなら……」
僕は目的のものを探すため、施設の奥へと向かった。
⸻
その頃、ジンは鉄と互角ともいえる戦いを繰り広げていた。
鉄が次々と放ってくる剣や槍。
ジンはそれらを弾き、時には身をひるがえしてかわしていく。
しかし、いくら攻撃をしのいでも、鉄との距離を縮めることができない。
「くそっ、これじゃらちがあかねぇ!」
ジンは何とか鉄の懐に潜り込もうと、相手の動きを注意深く観察していた。
「てか、なんだよその能力! ずりぃだろ!」
攻撃をかわしながら、ジンが叫ぶ。
「教えてやろうか? この能力を」
鉄は余裕のある表情で答えた。
「俺の能力は金属を操ることだ。浮かせたり、投げたり……金属であれば何でもできる」
鉄の周囲に浮かぶ剣や槍が、ゆっくりと動き始める。
「この力で俺は今の地位まで登り詰めたんだ」
そして、鉄はジンを見下ろすように言った。
「人は裏切っても、金属の硬さや強さは俺を裏切らねぇ」
その言葉を聞いた瞬間、ジンは鉄に向かって斬り込んだ。
「だったら、その金属ごとぶっ壊してやるよ!」
しかし、その一撃が届くことはなかった。
鉄の目の前に、突如として巨大な鎧が現れたのだ。
ガキィン!!
ジンの剣は鎧に阻まれ、激しい金属音が響き渡る。
「なっ……!」
「お前に俺は倒せねぇよ」
鉄がそう言い放つ。
次の瞬間、鉄の操る刀がジンに向かって飛んできた。
「うっ……!」
ジンは避けきることができず、腹部に攻撃を受けた。
「少しはやると思ったのに、そこまでか?」
ジンの呼吸が乱れる。
「はぁ……はぁ……。ミナト、すまねぇ……」
ジンは苦しそうに息を吐いた。
「俺一人の力じゃ、こいつに勝てねぇ……」
その場に立つのもやっとの状態だった。
「何人で向かってきても一緒だ。俺と金属の強さには勝てない」
鉄はゆっくりとジンに近づいてくる。
「最後に言い残すことは?」
「……まだ終わってねぇ」
そう言うと、ジンは残った力を振り絞り、勢いよく走り出した。
「往生際の悪いやつだ」
鉄はジンを追いかけ始めた。
(ミナトのところに……あいつを連れていかねぇと……)
ジンの体力は、すでに限界に近づいていた。
それでも、ミナトとの約束が彼を突き動かしていた。
背後からは、鉄の足音が迫ってくる。
「約束……守らねぇと……」
足を引きずりながら、ジンは何とかタワーの入口までたどり着いた。
だが、もう鉄はすぐ後ろまで迫っていた。
「ここまでか……」
ジンが諦めかけた、その時だった。
「ジン! 何やってんの、あんた! って、その傷、大丈夫なの!?」
そこにはシオンが立っていた。
「お前……なんでここに?」
「ミナトに頼まれたのよ。詳しい話は後! 早く乗って!」
シオンは急いで車のドアを開けた。
ジンは彼女に支えられながら、なんとか車に乗り込む。
シオンはすぐに車を走らせた。
⸻
「で、なんであそこにいたんだよ……」
応急処置を受けながら、ジンが尋ねた。
「ミナトがね。『ジンは負けないと思う。でも、何かあった時のためにタワーの下で待っていてほしい』って」
「そうか……ミナトが」
ジンはそっと微笑んだ。
「まったく、心配性なやつだな」
「ふふっ。あんたのことを信頼してるんでしょ」
シオンは前を向いたまま答えた。
「さぁ、もう着くよ。作戦通り、あいつを倒してきてよ?」
「ああ。ミナトにも色々言うことがあるしな。必ず倒すさ」
そう言い残し、ジンは車を降りた。
そして、ゴミ処理場の中へと消えていった。
⸻
その頃、鉄もゴミ処理場へとたどり着いていた。
周囲を警戒しながら、施設の中へと足を踏み入れる。
すると、奥に二人の姿が見えた。
そこには、ジンとミナトが待ち構えていた。
「逃げなくてよかったのか?」
鉄が不敵に笑う。
「逃げるわけないだろ。ここでお前を倒すんでね」
ジンが剣を構える。
「お前と、そこの俺に負けた剣士で、どうやって勝つって言うんだ?」
鉄は二人を見比べながら、余裕の表情を浮かべた。
その言葉を聞いたミナトは、静かに機械のレバーへと手を伸ばした。
そして、一気にレバーを動かす。
ガコンッ!!
施設の奥に設置された巨大なクレーンが動き出した。
「……なんだ?」
鉄は警戒し、すぐさま自分の身体を鉄の鎧で覆った。
その瞬間だった。
ゴォォォン!!
巨大なクレーンに取り付けられた電磁石が作動し、凄まじい磁力が発生した。
「なっ……!?」
鉄の身体が大きく揺れる。
次の瞬間、身にまとった鉄の鎧が磁力に引き寄せられ、鉄の身体ごと宙へと持ち上げられ始めた。
「ぐっ……! なんだこれは!?」
鉄は必死に能力を使い、鎧を動かそうとする。
しかし、巨大な電磁石の力はあまりにも強かった。
「この電磁石はあまり持たない代わりに
とても強いんだ」
「くそっ……! 俺の能力が……!」
その様子を見て、ミナトは静かに口を開いた。
「それが狙いなんだよ」
鉄を引き寄せる巨大な磁力。
それこそが、僕たちの作戦だった。
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