鉄の猛攻
飛び上がった無数の金属が、僕たちの方を向いた。
「おいおい、マジかよ……」
ジンが震えた声で呟く。
こいつは、そこらの敵とは格が違う。
いや、違いすぎる。
僕たちで、本当に勝てるのか……?
「おいおい、怖気づいて一歩も動けないのか?」
鉄が挑発するように笑った。
「うるせぇーー!」
怒りに任せ、鉄に向かって走り出すジン。
「ダメだ! ジン!」
僕の制止も届かない。
鉄は空中に浮かぶ剣や槍を、次々とジンに向かって放った。
「それじゃあ、これまでの奴らと一緒だ」
鉄の声が響く。
ジンの進行方向に、一本の剣が現れた。
「まだ、俺は……」
剣は勢いを増しながら、ジンの目の前へと迫っていく。
「死ねないのによ……」
ジンは迫り来る剣を見つめたまま、動けずにいた。
「何してんだ!」
その瞬間、僕はジンの身体を横から突き飛ばした。
直後、剣が僕の顔をかすめる。
頬に鋭い痛みが走った。
「……っ!」
僕は思わず顔をしかめたが、傷は浅い。
ジンはハッと我に返り、すぐに僕の方を振り返った。
「ミ、ミナト……すまねぇ」
「いいんだ。このくらいの傷」
僕は頬を拭い、ジンの目を見つめた。
「ジン、あいつの思う壺になっちゃダメだ」
「でも、あいつ……」
「さっきから見てたんだ。あいつはお前の剣を警戒してる。だからこそ、あんなに大量の武器を使って、お前の動きを封じようとしてるんだ」
鉄の表情を思い返す。
あいつは余裕そうに見える。
けれど、ジンの剣を完全に無視しているわけじゃない。
「君はあいつと同じくらい……いや、それ以上の力を持ってる。僕はそう確信してる」
ジンは驚いたように、僕の顔を見つめていた。
「だから、冷静になって。そして、あいつを倒してほしい」
しばらくの沈黙。
やがて、ジンの表情が変わった。
先ほどまでの焦りは消え、その目には自信と覚悟が宿っていた。
「……話は終わったか?」
鉄が退屈そうに尋ねる。
「あぁ。待たせちまったな」
ジンが刀を構え直した。
それに応じるように、鉄も両手を広げる。
次の瞬間、無数の剣や槍が再びジンに向かって飛び出した。
だが、先ほどまでとは違う。
ジンは迫り来る武器を紙一重でかわし、時には刀で弾きながら、少しずつ鉄との距離を詰めていく。
その動きは、まるで獲物を狙う虎のようだった。
「やっと様になってきたか」
ジンの動きを見て、鉄が嬉しそうに呟いた。
「ミナト! 作戦通り、ゴミ処理場に向かってくれ!」
「うん、わかった!」
僕は出口へと走り出そうとした。
「それと、ミナト……」
呼び止められ、振り返る。
ジンは少し照れくさそうに、顔を背けた。
「あんがとな……」
「……!」
あいつが、そんなことを言うなんて珍しい。
もしかして、戦いが楽しくなってきたんだろうか。
そんなことを考えながら、僕は出口へと駆け出した。
――その瞬間だった。
背後で、金属が擦れ合う甲高い音が響いた。
「まずい、ミナトが!」
ジンの叫び声が聞こえた。
振り返る暇もなかった。
僕は反射的に身をかがめた。
直後、鉄の槍が頭上を通過し、壁に深々と突き刺さった。
「……っ!」
僕は思わず足を止めた。
今の攻撃、いつ来るとわかったんだ?
人間相手なら、呼吸や筋肉の動きを見れば、ある程度は攻撃を予測できる。
でも、今のは違う。
ただの鉄の槍だ。
動きを読むための呼吸も、筋肉もない。
それなのに、僕の身体は攻撃が来る前から動いていたような気がする。
まるで、槍が飛んでくる未来を見ていたかのように。
「ミナト! ぼーっとすんな!」
ジンの声に、僕は我に返った。
今は考えている場合じゃない。
僕は再び走り出した。
あの作戦を成功させるために。
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