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都市事変  作者: フカマル
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6/10

鉄の支配者



 エレベーターの中。


 シオンは事務所から監視カメラを通じて、僕たちの様子を確認していた。


 しかし、そのときだった。


 カメラの映像に突然ノイズが走った。


 次の瞬間、映像はプツンと途切れた。


「やっぱり、そういうことしてくるよねー」


 シオンは焦ることなく、すぐに無線機を手に取った。


「ミナト、ジン。映像が途切れたわ。おそらく、向こうは私たちのことに気づいてる。待ち構えている可能性が高いから、気をつけて!」


 その報告を聞き、僕たちは静かに武器を構えた。


「ほら、やっぱり罠だったじゃねーか」


「仕方ないよ。こうするしか会う方法がなかったんだから」


「それもそうか。まぁ、全員ぶっ飛ばせば関係ねぇしな!」


「それができたら苦労しないよ……」


 そんな会話をしているうちに、エレベーターがゆっくりと減速していった。


 そして――。


 チン、と音が鳴り、扉が開いた。


「おいおい……少し多すぎないか?」


 ジンが呆れたように声を漏らした。


 目の前に広がっていたのは、武器を手にした大勢の男たちだった。


 ざっと見ただけでも、八十人近くはいる。


 剣や槍を構えた男たちが、僕たちを取り囲むように立っていた。


 その中の一人が、一歩前に出てきた。


「お前ら、黒石様を倒しに来たらしいな?」


 なぜバレている?


 このことは、誰にも話していないはずだ。


「お前らの動きがどうも怪しいもんでな。少し前から監視してたんだよ」


 そう言って、男は不敵に笑った。


 シオンが黒石鉄について聞き込みをしていたときに、誰かに聞かれていたのかもしれない。


 あるいは、僕たちが椿タワーを訪れる前から、行動を監視されていたのか。


 どちらにしても、相手は僕たちのことを把握しているらしい。


「今ならまだ許してやるよ。武器を置いて降参するんだな」


 ……そんな言葉を信じるわけがない。


 黒石鉄の拠点を突き止め、本人を倒しに来た僕たちを、簡単に帰してくれるはずがないのだから。


「で、どうするよ? ミナト」


 ジンが剣を握り直しながら尋ねた。


「そんなの、一つだよ」


 僕も武器を構える。


「戦うに決まってる」


 その言葉を聞いたジンの口元が、楽しそうにつり上がった。


「だよなぁ!」


 待っていたと言わんばかりに、ジンは剣を構えた。


 それに合わせて、敵たちも一斉に武器を構える。


「後悔しても知らねぇぞ?」


 その言葉を合図に、戦いが始まった。


 敵の男たちが、剣や槍を手に一斉に襲いかかってくる。


 だが、僕たちは慌てなかった。


 ジンが一歩前に出る。


「おいおい、もっと手応えがあると思ったのによ!」


 ジンの剣が、目にも止まらない速さで振るわれた。


 一人、また一人と、男たちが武器を弾き飛ばされ、床に倒れていく。


 さすがの剣術だ。


 正面からジンに挑んで勝てる相手は、そう多くないだろう。


「くそっ! あいつは無理でも、お前なら!」


 ジンの剣術に恐れをなした男の一人が、標的を僕に変えた。


 男が剣を振り下ろしてくる。


 僕はわずかに体をずらし、その一撃を避けた。


 続けざまに繰り出される攻撃も、体をひねり、半歩下がることでかわしていく。


「なんで当たらないんだ!? おかしいだろ!」


 男が焦った声を上げた。


 その隙を見逃すジンではない。


「隙だらけだぜ!」


 ジンの剣が男の武器を弾き飛ばし、戦闘不能に追い込んだ。


 僕は相手の呼吸や筋肉の動きから、次の行動をある程度予測できる。


 だからこそ、攻撃を避けることだけなら得意だった。


 けれど、僕にはジンのような力も、剣術もない。


 自分から攻めることは難しい。


 だからこそ、攻撃はジンに任せ、僕は敵の動きを見極めながら立ち回っている。


 とはいえ、さすがにこの人数は厄介だった。


 敵は次々と襲いかかってくる。


 ジンも次々と相手を倒していくが、僕たちが無傷のまま進めるほど簡単な戦いではなかった。


「ミナト、右だ!」


「わかってる!」


 僕は迫ってきた槍を避け、その隙にジンが相手を倒す。


 二人で連携しながら、少しずつ道を切り開いていった。


 やがて、敵の動きに変化が現れた。


「こ、こいつら……強すぎる!」


「聞いてた話と違うぞ!」


 仲間が次々と倒され、残った男たちの表情に恐怖が浮かんでいく。


 そして、ついに何人かが武器を捨てて逃げ出した。


 それをきっかけに、残りの男たちも次々とその場から離れていった。


「なんだよ。もっと戦いたかったのによー」


 ジンは物足りなさそうに剣を肩に担いだ。


「まぁまぁ。先を急ごう」


「へいへい」


 僕たちは倒した敵の様子を確認しながら、その場を後にした。


 大勢の敵を相手にしたせいで、思った以上に時間を使ってしまった。


 早く黒石鉄のもとへ向かわなければ。


 そう思っていたとき、無線機からシオンの声が聞こえてきた。


「二人とも、聞こえる?」


「あ、シオン! 映像、直ったの?」


「うん、もうばっちり!」


「よかった。こっちは今、敵を突破したところだよ」


「監視映像は一部しか復旧してないけど、二人の位置は確認できてるわ。気をつけてね。ここから先は、何があるかわからないから」


「了解!」


 シオンのサポートも戻った。


 これなら、少しは安心できる。


 そうしてしばらく進むと、目の前に大きな鉄の扉が現れた。


「この先に、あいつがいるわ」


 無線機越しに、シオンが告げた。


「了解」


 僕は扉を見上げた。


 ここまで来るのに、ずいぶんと時間がかかった。


 でも、ようやく目的地にたどり着いたのだ。


「まぁ、負けないと思うけど、気をつけてね」


「わかってるよ。ありがとう、シオン」


 僕たちは無線を切り、扉の前に立った。


 ジンが僕に目配せする。


 僕は小さくうなずき、二人で重い鉄の扉を押し開けた。


 ギィィ……。


 鈍い音を立てながら、扉が開いていく。


 その先には、広々とした部屋があった。


 そして、部屋の奥。


 一人の男が、椅子に腰かけていた。


「お前が黒石鉄か?」


 僕が尋ねると、男はゆっくりと顔を上げた。


「そうだ。俺が黒石鉄。この椿タワーの支配者だ」


 男の周囲には、剣や鎧、盾など、金属でできたものがずらりと並べられていた。


 まるで、武器庫のようだ。


 いや、ただの武器庫ではない。


 その配置には、どこか違和感があった。


 僕たちが部屋に足を踏み入れた瞬間――。


 カタリ。


 壁に飾られていた剣が、小さな音を立てた。


 続いて、隣の剣も。


 そして、床に置かれた金属製の盾までもが、わずかに揺れ始めた。


 黒石鉄は椅子から立ち上がると、口元に笑みを浮かべた。


「ここまで来たことは褒めてやる」


 鉄が片手を軽く上げる。


 その動きに呼応するように、部屋中の金属が音を立て始めた。


「だが、ここから先は別だ」


 僕は思わず息をのんだ。


 ……こいつ、今までの連中とは何かが違う。


「せいぜい楽しませてくれよ?」


 黒石鉄の言葉と同時に、無数の金属が宙へと浮かび上がった。

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