老人の依頼
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とりあえず老人を席に案内し、座ってもらった。
「お茶でいいですかー?」
「あぁ、すまない」
シオンはお茶を淹れに向かった。
「それで、少し難しいかもしれない依頼ってなんだ?」
僕が言おうと思っていたことを、ジンに先に言われてしまった。
「そうじゃな。少し話が長くなるかもしれないのだが……」
そう言うと、老人はゆっくりと話し始めた。
「お前さんたちは、特異者を知っているかの?」
特異者。
数年前に突如として現れた、人ならざる特殊な能力を持つ者たちを、そう呼ぶ。
能力は人によって異なり、身体能力を強化するものや、精神に関するものなど、さまざまな種類があるらしい。
「知っているが、それがどうしたんだ?」
ジンが少しだるそうに答えた。
「では、その特異者の中でも裏社会の四天王……裏四天王を知っているかね?」
「裏四天王って、社会を裏で操っているっていう……」
シオンがお茶を淹れる手を止めて言った。
「そうじゃ」
老人は静かにうなずいた。
「で、その裏四天王と依頼に何の関係があるんだ?」
やっぱり、ジンと僕は考えることが一緒だ。
老人は少しの間、黙り込んだ。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「妻が……さくらが、奴らに殺されたんだ」
「……嘘」
シオンの手が止まった。
湯呑みに注がれるはずだったお茶は、まだ半分も入っていない。
誰も言葉を発しなかった。
さっきまで聞こえていた時計の音が、やけに大きく感じられた。
「数年前に起きた、あの戦争で……妻は奴らに殺された」
数年前の戦争。
小さい頃のことということもあって、僕はあまり覚えていない。
「妻は……殺される必要があったのか?」
老人の声が震えた。
「なぜ殺されなければならなかった……。彼女はなぜ……なぜ……」
怒りとも悲しみともとれる表情を浮かべ、老人はうつむいた。
「妻が死んでからというもの、私はどうすればよかったのか、奴らをどうすれば殺せるのか……そんなことばかりを考えていた」
その言葉から、老人がどれほどの怒りを抱えているのかは、誰の目にも明らかだった。
しばらくして、老人は顔を上げた。
「すまない。少し話がずれてしまったな」
老人は僕たちの方を向き直り、こう言った。
「この依頼を受けてくれるかの?」
僕は少し考えた。
正直に言えば、危険だろうし、何より怖い。
裏四天王なんて、普通に生きていたら関わることすらない存在だ。
それでも……答えは一つだった。
「受けます。妻の仇は、僕たちがとります」
気づけば、そう答えていた。
老人は一瞬驚いたような顔をしたあと、ほっとしたように表情を緩めた。
「そうか……それはよかった。どうか、妻の仇をよろしく頼む」
老人の言葉を聞きながら、僕は心の中でつぶやいた。
……カッコつけたはいいが、これからどうしたものか。
こうして、僕たちの何でも屋の物語が動き出した。
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