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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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危険な設計図

「S71029……1029……いーおにく……いーお肉……」


悠太はまるで呪文のようにその番号を呟きながら、静岡ダンジョンの受付へと向かった。


この番号は広大なダンジョン内に点在する転送装置の住所のようなものだ。

『S』は静岡、『7』は階層、そして『1029』が、そのフロアに無数に設置された装置の通し番号を指している。昨夜、何度も見返した有名ダンチューバーの動画によれば、この「S71029」の装置からしばらく歩いた場所に、キラービーの巣があるという。


転送装置を抜けると、そこは草原の中に左右に切り立った崖のある、いつもとは少し違ったエリアだった。動画の情報を頼りに崖沿いを進むと、やがて岩肌が剥き出しになった場所へと辿り着く。崖からくり抜かれたようにポッカリと口を開けた洞穴。


入口付近には先客らしき三人の探索者が集まっていた。重装の鎧に大剣を背負った剣士が二人、そして古めかしい杖を携えた魔法使いが一人。どうやら攻略を終えたのか、それともこれから入るのか、入口で何やら話し込んでいる。


悠太は思い切って彼らに声をかけてみた。


「あの、すみません。ちょっとお聞きしたいんですが……」


三人はソロで現れた軽装の悠太を訝しそうに見つめ、代表して大剣の男が口を開いた。


「なんだ? こんなところまで一人で来たのか?」


「はい。この奥にキラービーの巣があるって聞いたので、ちょっと興味が湧きまして…」


悠太がそう答えると、三人は顔を見合わせ溜息混じりに首を振る。


「ああ、あるよ。俺たちも『キラーハニー』目当てにここまで来たんだけどな……諦めて戻るところだ」


『キラーハニー』とはキラービーがたまに落とすドロップアイテムなのだが、その芳醇な香りと滑らかな舌触りは多くのファンを魅了している。

巣にいるキラービーはその『キラーハニー』

をドロップする確率が高いと動画でも噂になっていた。


「そうでしたか……中には他にも誰かいましたか?」


「いや、俺達以外にはいなかったな。はぁ…キラービーの苦手な風魔法をぶっ放せばいけると思ったんだけどなぁ……。一対一ならどうとでもなるが、あの奥は密度が違う。巣の周りは常に五、六匹が飛び回ってて、一匹に手を出せば一斉に襲ってくる。連携が少しでも崩れたら即全滅だ。中には隠れる場所もないし、リスクが高くて割に合わん。ここに立ってるだけでも危険だぞ!」


隣にいた魔法使いの女性も男性に賛同するように頷く。


「そうね。静岡ダンジョンはそもそも探索者が少ないし、こんなハイリスクな場所で無茶するより、もっと安全に稼げるところがいくらでもあるわ」


「……なるほど」


悠太は納得したように頷く。

彼らのようなバランスの取れたパーティーですら、閉鎖空間での物量戦は採算が合わないと判断する。高速で飛び回り、上空にある巣から次々と出てくるキラービー達を残り魔素量を気にしながら駆逐しなければならないのは、かなり骨の折れる作業なのだろう。


「ありがとうございます。せっかく来たんで、ちょっと様子だけ見てきます」


「まあ、手を出さなければまず襲われることはないから、刺激しないように気をつけろよ」


大剣の男性は肩をすくめ、仲間と共に草原の方へと去っていった。


悠太は一人、不気味に静まり返った洞穴の入り口を見上げる。


確かにリスクは高い。だが、彼らが言った「誰もいない」という言葉は悠太にとっては最大の好条件だった。


意を決して、悠太は洞穴の暗がりに足を踏み入れた。


中は冷んやりとした湿った空気が漂っている。少し進むと、羽音が反響して聞こえてきた。たまにキラービーとすれ違うが、数は一、二匹程度。通路の端をゆっくり通り抜ける悠太に襲いかかってくる気配はなかった。


悠太は息を殺し、刺激しないよう慎重に壁伝いに奥へと歩いてゆく。


進むにつれ、通路は徐々に広がり、地面には蜂の分泌物らしき粘着質な跡が見え始めた。


ブゥゥゥン……


重低音の羽音が壁に反響し、胃のあたりを揺さぶる。


そして、悠太はついにその場所へと辿り着いた。


「……これか」


洞穴の最深部、ひときわ開けた空間。

そこには、天井からぶら下がるようにして作られた直径五メートルほどはある巨大な巣が鎮座していた。規則的な六角形が組み合わさったその構造物は鈍い茶褐色をしており、どこか有機的なグロテスクさを放っている。


巣の周りには三、四匹のキラービーがゆっくりと旋回しているが、群れ全体としては警戒中といった様子で、動画のような狂乱状態ではない。


悠太は岩陰に身を潜め、荒くなる呼吸を整えた。


心臓がうるさいほどに脈打つ。ここで一歩間違えれば、一週間分の稼ぎを叩いて買った解毒薬を使う暇もなく、肉塊に変えられるだろう。


だが、悠太の脳内には昨日から何度も描き直した罠の設計図がある。


「……さて、やるか」


緊張を押し殺し、悠太は帰還石を握りしめ少し震える手を伸ばして魔素を練り始めた。


ここから先はスピードと精度、そして自分の仕掛けを信じきれるかどうかが全てだ。


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