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ハズレと笑われた『罠』スキルの俺、実は超激レアな最強スキルでした  作者: シマリス


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第七階層の悪魔

自己紹介動画の撮影を終え、ステータス画面を確認すると魔素はまだ半分ほど残っていた。

しかし、一度集中を切らしてリフレッシュするのも安全に探索をするうえでは重要だ。悠太は一旦ダンジョンを後にし、アパートに戻って昼食を取ることにした。


引っ越して自炊を始めた当初は、お世辞にも料理と呼べるようなものではなかった。パスタを茹でて市販のレトルトソースをかけるだけ、炊飯器のスイッチを入れてレトルトカレーを温めるだけの日々。

母や、特に妹の結衣に知られたら、こっぴどく叱責されるような粗末な食事だったが、人間というのは環境に慣れる生き物らしい。

最近ではスーパーで買ってきた生麺のラーメンに、自分で作ったゆで卵、厚切りチャーシュー(市販)、さっと茹でたシャキシャキもやしをトッピングするくらいにはマシなレパートリーになっていた。


「食った、食った」


手早く片付けを済ませると、ドローンを充電スポットに置き、同時に自動編集の指示を出す。空いた時間、悠太はベッドに腰掛け、スマートフォンで第七階層の攻略情報を調べ始めた。午前中に撮影した動画が気にならないわけではなかったが、それより今は目の前の攻略が最優先だ。


「第七階層の魔物は『キラービー』か」


攻略サイトで関連動画を検索すると、不穏なタイトルの動画が次々とヒットする。

『【閲覧注意】キラービーに刺されて死にかけた』

『ソロ探索者絶対禁止、第七階層の悪夢』


再生した動画には、巨大な毒針を剥き出しにし、羽音さえ聞こえないほどの超高速で空間を切り裂く、文字通り『殺人蜂』の姿が映し出されていた。


キラービーは恐ろしく獰猛だ。

一度獲物と定めたら、相手が息絶えるまで執拗に追尾し、防具の隙間を的確に狙って麻酔毒と壊死毒の混合液を流し込んでくる。


ある動画では、重戦士のような重装甲を誇る探索者が、甲羅の継ぎ目を刺されて数秒で崩れ落ちる衝撃的なシーンが収められていた。

また、別の『最強攻略法』と銘打たれた動画では、風魔法による広域制圧以外に安全な突破口はないと断言されており、ソロ、それも物理的な設置罠を主軸にする悠太にとっては、絶望的な相性の悪さが浮き彫りになっていた。


「地上を這う亀とはリスクの桁が違うな」


空を飛ばれるとなると、悠太が取れる行動は極端に制限される。


主力である『落とし穴』や『バネ床』、そして『スネア』といった地面設置型の罠は、敵が接地していない限り、ただの魔素の無駄遣いに終わってしまう。空中を制し、死角から音もなく肉薄してくる敵に対して、これらは実質的に無力だった。


「残り三つのスキルでどう戦うか……か」


スキルの内訳を脳内で整理する。


一つは『キューブ』

これは空中を含めた一定範囲を強制的に閉鎖空間に閉じ込めるため、キラービーの機動力を殺すには最適だ。


「地上だけじゃなくて、空中の行動パターンも予測しなきゃダメか。難易度たけー」


もう一つは『ピクトグラム』

強力なスキルではあるが、これを発動させるにはフィールドに配置された九枚の死神カード全てを起動させなければならない。敵が高速で飛び回る中、しかも遮蔽物のない草原で九箇所ものポイントへと誘導するのは至難の業、あまりにハードルが高く、実戦で使うのは現実的ではなかった。


(ガルーダ戦ではなんとかなったけどなぁ。キラービー1匹ごとにあの苦労を毎回するのは絶対無理だよなぁ)


そして最後の一つが、狙撃罠『ウッルの目』だ。


一見、最も期待できる罠スキルだと思われたが、攻略動画を見る限り、第七階層も第六階層と同じく、遮蔽物のないのどかな草原が広がっていた。

東京ダンジョン第五階層のような林もほとんど見当たらないため、キラービーの鋭い複眼から逃れつつ、数少ない狙撃の体勢を整えるのは至難の業に思えた。

ウッルの目の難点は角度調節ができないこと。垂直にそびえる壁や木が多い場所でないと、小さな岩などに目を配置しても狙撃チャンスが大幅に減ってしまうのだ。


「結局、キューブで捕まえてからどうにかするしかないか」


一通り下調べを終えると、時刻は16時を回っていた。


新しい階層への挑戦。午後の探索は撮影を行わず、まずは一匹確実に仕留めてその感覚を掴むことに集中する予定だ。


(蜂相手に罠がどこまで通用するか……一歩間違えれば、さっきの動画みたいにこっちがやられる)


一抹の不安を抱えつつ、悠太は準備の整ったドローンを回収し、アパートを後にした。西日に照らされた静岡の街を歩きながら、頭の中ではすでに、高速で空を舞うキラービーをどうやって立方体の檻へと誘い込むか、そのシミュレーションが始まっていた。


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