自己紹介
エピソード87が下書きのままになっておりました。申し訳ありません!
前にも一度やらかしてまして、またやってしまいました。第六階層ボスがあっという間にやられているという惨事に。
もしよろしければ是非戻ってご拝読ください!
(2026.6.10時点)
マウンテンタートルを攻略した翌日。
本来であれば、未知の領域である第七階層へいざ出陣!――と気負うところだが、悠太は朝から慣れ親しんだ第六階層の草原にいた。
昨夜、眠りにつく直前まで眺めていたコメント欄の質問が、どうしても気になっていたからだ。
「よし、今日の午前の攻略はお休みだ。まずはちゃんと自己紹介動画を撮ろう」
悠太は愛機のドローンを起動し、空中の一点に固定する。今回は余計な緊張で噛んでしまわないよう、ライブ配信ではなく動画撮影のみの設定に切り替えた。
「えー、こんにちは。KYです。昨日のマウンテンタートル戦、たくさんの視聴とコメントありがとうございました」
まずは簡単なプロフィールから話し始める。名前はチャンネル名でもある「KY」。探索者歴はまだ一年ほどであること、そして質問の多かったステータス――最大魔素量が三千弱であることを伝えた。
(静岡ダンジョンで活動してるのはバレてるけど、ここも広大だし転送装置やボスの出現場所は無数にある。どこにいるかまで特定されることはないだろうし、他の探索者とバッティングすることもまずないはずだ)
そんなことを内心で考えつつ、プロフィール紹介を終えると本題のスキル紹介へと移る。
昨日のマウンテンタートル戦で公開済みとなっている『バネ床』『キューブ』『アンダーマイン』については軽く触れ、『ウッルの目』が音の出ない狙撃罠であることを補足説明した。
「今日は、まだ見せていなかった基本の罠を紹介します。まずは拘束罠の『スネア』、そして即死罠の『落とし穴』です」
悠太は手際よく地面に魔法陣を展開するようなジェスチャーを織り交ぜ、スネアを設置した。ターゲットは、のんびりと草を食んでいる一匹のロンリータートル。悠太は小石を拾って甲羅に当て、注意を引いてから設置ポイントへと誘導する。
「通常の出力だと、このクラスの魔物には引きちぎられてしまいます。なので、今回は出力を三倍にして固定します」
最近の悠太は『落とし穴』だけで事足りていたため、わざわざスネアで拘束するのは余計なコストではあったが、これはあくまで紹介用だ。
カチッ、と小気味よい音が響き、魔素のワイヤーがロンリータートルの甲羅をがんじがらめに絡め取る。巨体が空中に吊るし上げられ、バタバタとあがく様子がドローンに映し出された。
「で、動けなくなったところに『落とし穴』を重ねます」
悠太が指を鳴らすジェスチャーをすると、拘束された巨亀の直下の地面が消失し、そのまま奈落へと吸い込まれていった。
「ん〜、やっぱりちょっと地味かなぁ」
一通り紹介を終えて映像を確認した悠太は、思わず漏らした。
罠スキルの性質上、どうしても絵面が静止画に近い。これではせっかく増え始めた視聴者が離れてしまうかもしれない。そう危惧した悠太は、サービス精神を出して『バネ床』を使った討伐も追加することにした。
「最後に、ちょっと派手めなやつを撮ります」
ターゲットを別の個体に変更し、その移動経路上に『バネ床』を設置。今回の出力は、通常時の六倍――かなり強めの魔素を注ぎ込んだ。さらに、バネが発動した際に飛ぶ斜め方向の軌道を計算し、その着地点となる十メートル先に、あらかじめ『落とし穴』を広げて待ち構える。
「準備完了」
悠太が岩陰から見守る中、何も知らないロンリータートルが設置ポイントを踏み抜いた。
ドォォォォン!!
凄まじい衝撃音と共に、一トン近い質量を持つ巨亀が、まるでゴムボールのように斜め上方へと跳ね飛ばされた。
宙を舞い、手足を高速でバタつかせながら回転する巨亀。その放物線は悠太の予測通り、寸分の狂いもなく十メートル先の穴へと向かう。
スポッと、空中で回転しながら落ちてきたロンリータートルが、吸い込まれるように落とし穴へと消えていく。
まるで一流のバスケットボール選手がコートの真ん中で放ったスリーポイントシュートが決まったかのような絶妙な爽快感があった。
「いやぁ……今の、めちゃくちゃ良い映像だったんじゃないか?」
ドローンのモニターを見返すと、青空を背景に巨亀が美しく舞い、奈落へと消える一連の流れが臨場感のあるアングルで収まっていた。
これなら罠使いの戦いは地味だなんて思わないはずだ。
悠太は満足げに録画を停止すると、家へ帰る準備をするために、安全装置へと歩き出した。今回の動画がどれだけの反響を呼ぶのか、期待に胸を膨らませながら。




